UNISOCの「UNISOC T740(旧: Tiger T7510)」は2021年の5G対応SoCとして最低性能を有していると知られていますが、競合他社製品と比較してどの程度“劣っているのか”はあまり語られていません。そのため、競合他社における命名上の最低製品となるSnapdragon 480 5G、Dimensity 700、Kirin 820、Exynos 880と比較します。
UNISOC T740の主な仕様はTSMC製12nm FinFETプロセス技術、CPUは4xArm Cortex-A75 1.82GHz+4xArm Cortex-A55 1.82GHzのオクタコア構成、GPUはIMG PowerVR GM 9446 @800MHz、RAM規格はLPDDR4X(1866MHz)、5GはSub-6GHz帯に対応となっています。
競合他社製品と比較するとプロセス技術は古く、12nm FinFETは2017年に製造を開始しています。また、CPUは競合他社製品がCortex-A76やCortex-A77が採用されている一方で、UNISOC T740はCortex-A75を採用しています。
GPUはArm MaliではなくIMG製PowerVRを採用。この他、RAM規格の周波数も競合他社が2133MHzですが1866MHzを採用しています。
UNISOC T740のAnTuTu Benchmark v9スコアは、CPU性能が57,346点、GPU性能が31,370点、MEM性能が61,139点、UX性能が66,557点で総合性能は216,412点となりました。
CPU性能は57,346点で、競合他社製品の最下位はDimensity 700の88,740点なので全く太刀打ち出来ていない状態です。Cortex-A75を採用しているので、Cortex-A76やCortex-A77採用製品よりも低く算出されるのは当然ですが、やはり評判通り5G対応SoCとしての最下位のCPU性能を有しています。
GPU性能は31,370点で、競合他社製品の最下位はExynos 880の67,178点のため、これも全く太刀打ち出来ていません。さらに、4G対応SoCのHelio G88が55,357点なのでUNISOC T740はそれよりも低く、5Gの言葉に騙されない知識を持っていると、より性能の良い4G対応製品が購入できます。
Geekbench 5でのCPU性能は、シングルコア性能が374点、マルチコア性能が1,774点となりました。
シングルコア性能は1.82GHzのCortex-A75を採用しているので、2.0GHz以上のCortex-A76やCortex-A77採用製品と比較して圧倒的な性能の低さとなっています。具体的な製品名を出すとSnapdragon 710よりも低く、日本市場においてはOPPO Reno Aの方が快適でしょう。
マルチコア性能は4xCortex-A75 1.82GHz+4xCortex-A55 1.82GHzのオクタコア構成を採用しているため、2+6のオクタコア構成を採用している競合他社製品とあまり変わらない性能が発揮されました。
UNISOC T740はUNISOC T710とUNISOC V510を組み合わせた製品で、発表当初はUNISOC Tiger T7510と呼称されていました。その後、TigerとIvyを廃止したのでUNISOC T7510になりましたが、5G対応製品向けの「Tanggula」が立ち上げに伴ってUNISOC T740へ変更されていますので、2回の名称変更が起きた珍しい製品です。
その名称変更に加えて5G対応製品としては最低性能を有しているので、珍しいが重なった製品となっています。日本市場への正式な投入の可能性が低い製品ですが、Snapdragon 480 5Gよりも、Dimensity 700よりも、Kirin 820よりも性能の低い5G対応SoCが存在していると覚えていてください。