Qualcommが2021年1月に発表したSnapdragon 870 5GのAnTuTu Benchmark v8スコアが判明したので、後継製品のSnapdragon 888 5G、上方向下方向のマイナーチェンジモデルのSnapdragon 865 Plus 5GとSnapdragon 865 5Gと比較します。
Snapdragon 870 5Gのスペックは、TSMC製7nm(N7P)製造プロセス、CPUはKryo 585アーキテクチャの1xARM Cortex-A77 3.2GHz+3xARM Cortex-A77 2.42GHz+4xARM Cortex-A55 1.80GHzのオクタコア構成、GPUはAdreno 650 @670MHz、LPDDR5@2750MHz、UFS 3.1、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2対応となっています。
Snapdragon 865 Plus 5Gをオーバークロック(OC)したモデルがSnapdragon 870 5Gと解釈している媒体もありますがそれは誤りです。Snapdragon 865 Plus 5GはサブシステムとしてFastConnect 6900を搭載することでWi-Fi 6Eに対応していますが、他の2製品はFastConnect 6800なのでWi-Fi 6EではなくWi-Fi 6に対応しています。
そのため、Snapdragon 865 5Gを基準とするとSnapdragon 865 Plus 5Gはマイナーチェンジモデル、Snapdragon 870 5Gはオーバークロックモデルとなり、Snapdragon 865 Plus 5GとSnapdragon 870 5Gは近くて遠い存在です。
Snapdragon 870 5Gを搭載したXiaomi Mi 10SのAnTuTu Benchmark v8スコアは、CPU性能が191,508点、GPU性能が244,115点、MEM性能が106,116点、UX性能が90,758点で総合性能は632,497点となりました。
CPU性能に着目すると、Snapdragon 865 5Gは2.84GHz、Snapdragon 865 Plus 5Gは3.1GHz、Snapdragon 870 5Gは3.2GHzなので、わずかな差ですがSnapdragon 870 5Gが優位に立っています。ただ、AnTuTu BenchmarkのCPU性能はマルチコア性能が強く出る傾向にあるため、プライムコアの周波数が異なる3製品の比較にはあまり適していないかもしれません。
GPU性能はSnapdragon 865 5Gが587MHz、Snapdragon 865 Plus 5Gが670MHz、Snapdragon 870 5Gが670MHzなので、Snapdragon 865 Plus 5GとSnapdragon 870 5Gは同じ性能を算出しました。
Snapdragon 870 5Gを初搭載した製品としてmotorola edge sが有名ですが、この機種のGPU周波数は最大905MHzにオーバークロックしており、“普通の”Snapdragon 870 5Gではないので比較に使用していません。
Snapdragon 870 5Gが登場した時は「こんなもの必要ない」の声が大きかったと思いますが、採用企業のSnapdragon 870 5G+Snapdragon 888 5G搭載機を同時に販売する上手なマーケティングによって価値が高まったと感じます。
Snapdragon 870 5Gの基本的な性能はSnapdragon 865 5Gと変化ありませんので、Snapdragon 855やSnapdragon 845を搭載した製品からの移行の際に、Snapdragon 888 5Gの最高性能は必要ないが、最上位の性能は欲しいという人にはこれ以上ない製品となるでしょう。
しかし、そんな良い製品のSnapdragon 870 5Gですが“SoCの立場”で考えると中途半端な製品ですので、日本市場で販売される可能性は低いでしょう。そのため、Snapdragon 855やSnapdragon 845を搭載した製品を利用している人は、Snapdragon 888 5GやSnapdragon 865 5G搭載製品を考慮したほうがいいでしょう。
