Xiaomiが自社開発したXRING O1を発表、3nmプロセス採用の高性能な製品

Xiaomiが自社開発したXRING O1を発表、3nmプロセス採用の高性能な製品

2025年5月23日
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中国のXiaomiは2025年5月22日に新製品発表会を開催し、自社開発SoCの「XRING O1 (玄戒 O1)」を発表しました。2017年に発表したSurge S1 (澎湃 S1)から間が空くこと8年、強力な製品を開発し業界を騒がせています。

 

名称はO1 (オーワン)で、01 (ゼロワン)ではありません。主に英語圏でO1ではなく01と記載している例があり、感度の高い人は日本語ではなく英語で情報を得ると思いますが、この間違いには注意が必要です。

 

名称 XRING O1 (3.90GHz) XRING O1 (3.70GHz)
CPU 2x Cortex-X925

4x Cortex-A725

2x Cortex-A725

2x Cortex-A520 Refreshed

(L3 Cache: 16MB)

2x Cortex-X925

4x Cortex-A725

2x Cortex-A725

2x Cortex-A520 Refreshed

(L3 Cache: 16MB)

動作周波数 3.90GHz

3.40GHz

1.89GHz

1.80GHz

3.70GHz

3.04GHz

1.89GHz

1.80GHz

GPU Immortalis-G925 MP16 r0p1 Immortalis-G925 MP16 r0p1
動作周波数 1392MHz 1200MHz
NPU/DSP 6-Cores NPU

(44 TOPS)

カメラ ISP v4

(8.7 Gigapixels per Second)

リフレッシュレート ?
エンコード/デコード Encode: 8K@24fps H.265, H.264
RAM LPDDR5T (9600Mbps)

(System Level Cache: 0MB)

ストレージ UFS 4.1
Wi-Fi Wi-Fi 7 (11be)
Bluetooth Bluetooth 5.4
位置情報 BeiDou, GPS, Galileo, GLONASS, QZSS
通信 外部: MediaTek T800

Sub-6GHz

充電規格 -
製造プロセス TSMC 3nm N3E
型番 O1
公式サイト -

新たに発表されたXRING O1は2種類あり、今回は便宜上、上位版と下位版と表現します。実際には標準版と下位版が正しいと考えています。

 

上位版の主な仕様は、製造プロセスがTSMC 3nm N3E、CPUは最大3.90GHzで動作するCortex-X925と最大3.40GHzで動作するCortex-A725と最大1.89GHzで動作するCortex-A725と最大1.80GHzで動作するCortex-A520 Refreshedを2+4+2+2構成で採用、GPUは最大1392MHzで動作するImmortalis-G925 MP16、RAM規格はLPDDR5T、内蔵ストレージ規格はUFS 4.1、モバイルデータ通信は単体では非対応です。

 

上位版と下位版の違いはCPUにあり、Cortex-X925が最大3.90GHzではなく最大3.70GHzに、Cortex-A725が最大3.40GHzではなく最大3.04GHzに下がっています。他の点については差がないとされ、下位版は目標に満たなかったものをスマートに利用したものと表現できそうです。

 

Xiaomiによると、上位版のXRING O1はAnTuTu v10において3,004,137点を算出できる力を持っているとしています。この数値はラボスコアと呼ばれるもので、極限まで高い性能を発揮できるように環境を整えた場所で計測したものとなります。最近はこの数値の乖離がひどく、Dimensity 9400+を搭載した中国市場向けのrealme GT7は300万点を発揮できるとしていますが、実際には260万点から270万点の間で推移しており、信用する必要のない数値となっています。

 

そのため、この300万点を超えられるという数値も気にする必要はありません。「ふーん」くらいでいいと思います。

 

トランジスタ数は190億と発表しました。TSMCの3nm N3Eで製造したものとしてAppleのA18 ProとA18、MediaTekのDimensity 9400+と9400、QualcommのSnapdragon 8 Eliteがありますが、いずれの製品もトランジスタ数が公表されていないので直接的な比較はできません。

 

ただ、公表されているものを挙げると4nm N4P+のDimensity 9300は227億、3nm N3BのA17 Proが190億のため、XRING O1の190億は特別多いわけではありません。もちろん、特別少ないわけでもありません。

 

製造プロセスはTSMCの3nm N3Eです。発表直前まで4nmプロセスを採用するのではないかと情報が流れていましたので、3nmプロセスの採用は驚きを隠せない人を多く見かけました。

 

CPUはユニークな構成で、2+4+2+2構成を採用しています。これがユニークだと感じるのが超高性能なCortex-X925を複数採用している点で、採用数を考えるとGoogle Tensorをほうふつさせます。

 

またユニークな点としてCortex-X925が最大3.90GHzで動作するところも注目です。Cortex-X925を開発したArmは3.6GHzから3.8GHzでの動作を想定しており、今回のXRING O1はそれを超える3.90GHzで動作します。これにより、Xiaomiの開発は並大抵ではなく、XRING O1を試金石で市場に投入するのではなく本気で投入し、競合他社と戦おうとしていることがわかります。

 

この構成によってiPhone 16 Pro Maxと16 Proが搭載しているA18 Proに引けを取らない性能を発揮し、トップ層に入ることができたとしています。

 

Geekbench 6.2における性能は、シングルコア性能ではA18 Proに敗北を期しましたが、マルチコア性能では上回ることに成功しています。Cortex-X925をArmの想定よりも高い数値に設定しても勝てないので、これはXiaomiの限界ではなくArmの限界です。Appleを上回るには次世代のCortex-Xの性能向上に期待するしかありません。

 

GPUは超高性能なArm製のImmortalis-G925を採用しています。採用数は16で、同じGPUを採用しているDimensity 9400+と9400が12なのでXiaomiはさらに多く採用しています。頂点を取ろうとしている様子がうかがい知れます。

 

気になる性能はGFXBench 5.0で、Manhattan 3.1とAztec Ruins双方でA18 Proを上回ることに成功しています。最近はAppleのGPUの優位性がなくなっており、Android陣営が追いつき、追い越すことに成功しています。このXRING O1でも抜き去っており、完全にトップ層に入っています。

 

上位版のXRING O1を初搭載する製品はXiaomi 15S Proで、容量と価格は16GB+512GBモデルが5499元 (約110,000円)、16GB+1TBモデルが5999元 (約120,000円)に設定されています。

 

一方、下位版のXRING O1を初搭載する製品はXiaomi Pad 7 Ultraで、上記の通り主な違いはCPUが最大3.90GHzから最大3.70GHzへ、最大3.40GHzから最大3.04GHzへ減少しています。

 

超高性能なCortex-X925が最大3.70GHzに下がったのはあまり気にする必要はありません。というのも、Dimensity 9400+のCortex-X925が最大3.72GHzで動作するためで、数値としては下がっていますがフラッグシップ向けの数値であることは間違いありません。この状態でも素晴らしい性能を発揮するでしょう。

 

容量と価格は、12GB+256GBモデルが5699元 (約114,000円)、12GB+512GBモデルが5999元 (約120,000円)、16GB+1TBモデルが6799元 (約135,000円)に設定されています。

 

また、ナノテクスチャー版も用意しており、12GB+512GBモデルが6599元 (約130,000円)、16GB+1TBモデルが7399元 (約150,000円)で、通常版より600元 (約12,000円)高く設定されています。

 

詳しくは取り上げませんが、XiaomiはXRING O1だけでなくスマートウォッチ向けにXRING T1 (玄戒 T1)の開発に成功したと発表しています。

 

このXRING T1には4G LTE通信が可能なモデムを統合していることを明らかにしており、Xiaomiがモデムの開発にも取り組んでいることがわかります。

 

しかし、XRING O1はモデムを統合しておらず、Xiaomi 15S ProではMediaTek T800を採用しました (Wi-FiとBluetoothもMediaTek製)。

 

モデムの開発は難度が高いとされており、GoogleはSamsung製を、AppleはQualcomm製を採用しています。AppleはiPhone 16eで自社開発したモデムを採用しましたが、モデム自体の開発は2018年から開始されていたと報じられているため、あの巨大な企業でもこれほどの年月が必要なこと考えると難度は容易に想像できると思います。

 

Xiaomiが5G NR通信が可能なモデムを開発しているのか、開発していないのか、開発する予定がないのかわかりませんが、XRINGの開発は2021年ごろに開始させたと発表しているので、もしXiaomi製5G NR対応モデムが出てくるのはまだまだ先になりそうです。

 

ちなみに、XRING O1とXRING T1の開発に投入した金額は135億元 (約2687億1800万円)と発表しています。開発したいと思っても巨大な金額が必要で、さらにそれを開発する人材の確保、人材を成長させる環境づくり、それを採用する勇気などさまざまな要素が必要で、並大抵の企業ではできないです。

 

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