HiSilicon Kirin 980とKirin 970、Kirin 960を比較

HiSilicon Kirin 980とKirin 970、Kirin 960を比較

2018年12月20日
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HUAWEIとHonorに提供されているHiSilicon製プロセッサーのKirin 980搭載機が複数台発表、販売されています。日本市場にもKirin 980を搭載したHUAWEI Mate 20 Proが投入されており、従来機となるHUAWEI Mate 10 Proや別シリーズのHUAWEI P20/P20 Proからの買い替えを検討している人がいると思います。そういった方のために今回はKirin 980を旧世代のKirin 970、Kirin 960をAnTuTuベンチマークとGeekbenchを用いて比較を行います。ベンチマークのスコアを利用して比較を行いますので、アニメーションによる実使用感やバッテリーの持ち時間を考えていないことをご了承ください。

比較に使用するスマートフォンはKirin 980がHUAWEI Mate 20 Pro、Kirin 970がHUAWEI P20 Pro、Kirin 960がHUAWEI nova 2sとなっています。AnTuTuベンチマークのスコアは1000回以上計測されたものの平均点ですので比較に使用するのに妥当だと判断しています。

 

スペックは上図のようになります。Kirin 960からKirin 970は製造プロセスの微細化、GPUの性能向上、RAM規格の進化、LTEカテゴリーの上昇が変更点になります。GPUはクロック数が下がっているものの、Mali-G71からMali-G72へグレードアップしているのに加えてコア数が8コアから12コアに増加しているので、大きな性能向上となっています。

Kirin 970からKirin 980は製造プロセスの微細化、CPUのグレードアップ、CPUの編成、GPUの性能向上、RAM速度の向上、LTEカテゴリーの上昇が変更点になります。製造プロセスは現在最小プロセスとなる7nm FinFETを初採用(販売はAppleが先)、CPUは4+4のオクタコア構成から2+2+4のオクタコア構成へ変更しています。HUAWEIによるとこの構成は使用アプリに応じてCPUの動作を最適化し、フレキシブルな対応ができると発表しています。

 

AnTuTuベンチマークでの比較です。総合性能ではKirin 960からKirin 970は約3万点、Kirin 970からKirin 980は約10万点の性能向上となっています。

CPU性能はKirin 960とKirin 970は同じ構成になっていますが、製造プロセスが微細化されたことによって性能向上が図られています。更にトランジスタ数も40億から55億に増えたので電力効率が改善、つまり性能が向上しているので同じ構成でも大きな差が生まれます。Kirin 970からKirin 980は高性能なA76とA55を採用し、更に製造プロセスの微細化に加えてトランジスタ数が69億に上昇しているため大きな成長に成功しています。CPU性能が10万点の大台に乗り、この数値では相当複雑な操作をしても困ることはないでしょう。

GPU性能はKirin 960からKirin 970はクロック数が下がっていますがGPUそのものがグレードアップしているので確かな成長が行われています。Kirin 970からKirin 980はクロック数とコア数が減少していますが、こちらもGPUそのものがグレードアップしているので成長を見せています。ARMによるとMali-G76はMali-G72と比較して性能は30%、電力効率も30%アップしているとのことで大きく性能向上しており、その性能が数値に表れています。

UX性能はデータ処理や画像処理を計測しており、この数値が実使用感に関わってきます。しかし、アニメーションは考慮していないので少し独特なカスタムUIのColorOSを搭載しているOPPO Find Xでも約6万点というスコアを持っています。この数値が優れていれば一概に快適だというものではありませんが基準値となるスコアがあり、4万点で不満の出ない動きとなっているので、7万点に近いKirin 980はそうそう不満の出るときはないと考えてもいいでしょう。

MEM性能はRAMやストレージの読み書きの速さを計測しており、特に比重が大きいのは内蔵ストレージの読み書きです。Kirin 960からKirin 970は規格の向上に加えてクロック数が上昇しているのでスコアが大きく伸びていますが、Kirin 970からKirin 980は規格は同一でクロック数が上昇しているのみなのでスコアは伸びてはいますが大きくは伸びていません。

 

Geekbenchでは製造プロセスによる差異は生まれにくく、CPUそのものの性能を計測するのに適しています。なので、Kirin 960とKirin 970はCPUが同一なため差が生まれていません。Kirin 970からKirin 980はCPUの構成が大きく変わっているためスコアが大幅に上昇しています。Kirin 970からシングルコア性能は74%、マルチコア性能は48%の性能向上に成功しています。

 

7nm製造プロセス、ARM Cortex-A76、ARM Mali-G76を初採用・初搭載したKirin 980は完璧なSoCと評しても良いのではないでしょうか。AnTuTuベンチマークやGeekbenchでもその性能を余すこと無く発揮されており、実際に手にとって使用した時に差を感じると思います。当然、現時点での完璧なSoCとなりますので、HiSiliconは後継機でさらに完璧なSoCを仕上げないといけません。後継機ではなくマイナーチェンジモデルとしてSoC単体での5G通信に対応したKirin 990の開発が噂されていますが、この噂のSoCは発表されるでしょうか。

 

完璧なSoCに仕上がっているKirin 980ですが、競合他社のQualcommによるSnapdragon 855、SamsungによるExynos 9820とどこまで戦えるかが問題です。QualcommはCPUにマイクロアーキテクチャKryoを、Samsungは自社開発したExynos M4を搭載しており、ARMの設計通りに開発しているKirin 980は少々分が悪いですが、Cortex-A75が主流な時にCortex-A73を採用していた以前のHiSiliconとは異り最新のCPUを採用しているので、そこまで大きな差は生まれないと考えています。

なので、スマートフォンを購入する時にSnapdragonやExynosが搭載されているからという理由でKirin 980搭載機に目もくれないのはもったいなく、しっかりとSoC以外のスペックを吟味する必要があります。特にHUAWEIはカメラに関しては群を抜いていると思うので、スマートフォンの決め手としてカメラ性能を考えているのであれば、Kirin 980搭載機を比較対象に加えるべきでしょう。

 

 

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