中国のLenovoが自社開発SoC「SS1101」を密かに市場に投入しました。LenovoはSS1101についてまったく言及していないため、現時点では謎多きSoCとなっています。
名称 | SS1101 | Dimensity 9300 | Dimensity 8400 |
CPU | 2x Cortex-X3
3x Cortex-A715 2x Cortex-A715 3x Cortex-A510 |
1x Cortex-X4
3x Cortex-X4 4x Cortex-A720 (L3 Cache: 8MB) |
1x Cortex-A725
3x Cortex-A725 4x Cortex-A725 (L3 Cache: 6MB) |
動作周波数 | 3.29GHz
2.83GHz 1.90GHz 1.71GHz |
3.25GHz
2.85GHz 2.00GHz |
3.25GHz
3.00GHz 2.10GHz |
GPU | Immortalis-G720 MP12 r0p0 | Immortalis-G720 MC12 r0p0 | Mali-G720 MC7 r0p1 |
動作周波数 | 800MHz | 1300MHz | 1300MHz |
NPU/DSP | ? | NPU 790 | NPU 880 |
カメラ | ? | Triple 18-bit Imagiq 990 ISP
3億2000万画素 |
Imagiq 1080 ISP
3億2000万画素 or 3x3200万画素 |
リフレッシュレート | ? | 120Hz (4K)
180Hz (WQHD) |
144Hz (WQHD+) |
エンコード/デコード | ? | Encode: 8K@30fps H.265, H.264
Decode: 8K@30fps H.265, H.264, VP9, AV1 |
Encode: 4K@60fps H.265, H.264
Decode: 4K@60fps H.265, H.264, VP9, AV1 |
RAM | ? | LPDDR5T (9600Mbps)
(System Level Cache: 10MB) |
LPDDR5X (8533Mbps)
(System Level Cache: 5MB) |
ストレージ | ? | UFS 4 + MCQ | UFS 4 + MCQ |
Wi-Fi | ? | Wi-Fi 7 (11be)
6.5Gbps |
Wi-Fi 6E (11ax) |
Bluetooth | ? | Bluetooth 5.4 | Bluetooth 5.4 |
位置情報 | ? | GPS, BeiDou, GLONASS, Galileo, QZSS, NavIC | GPS, BeiDou, GLONASS, Galileo, QZSS, NavIC |
通信 | - | 統合: 5G Modem
Sub-6GHz / mmWave (DL: 7Gbps) |
統合: 5G Modem
Sub-6GHz (DL: 5.17Gbps) |
充電規格 | ? | - | - |
製造プロセス | TSMC 5nm N5 | TSMC 4nm N4P+ | TSMC 4nm N4P |
型番 | ? | MT6989 | MT6899 |
公式サイト | - | MediaTek | MediaTek |
LenovoのSS1101の主な仕様は、製造プロセスがTSMC 5nm N5、CPUが最大3.29GHzで動作するCortex-X3と最大2.83GHzで動作するCortex-A715と最大1.90GHzで動作するCortex-A715と最大1.71GHzで動作するCortex-A510を2+3+2+3構成で採用、GPUは最大800MHzで動作するImmortalis-G720 MP12、モバイルデータ通信は非対応です。
Lenovoは製造プロセスについて言及していませんが、さまざまな情報からTSMCの5nmプロセスを採用していることが判明しています。現時点では3nmプロセスや4nmプロセスが最先端のため、やや古いプロセスを採用しています。この古いプロセスを採用した理由として、現在の5nmプロセスは歩留まりが高く、最新のものと比べて製造にかかるコストもいくらか軽減できるため、自社開発SoCの試金石として最適だからだと考えています。
CPUはCortex-X3とCortex-A715、Cortex-A510を組み合わせています。組み合わせそのものは普通ですが、SS1101は超高性能なCortex-X3を2基も採用しており、これによってユニークなものに仕上がっています。また、高性能なCortex-A715を計5基も採用しており、こちらの点でもユニークです。
現時点でCortex-X3を採用した競合他社のSoCは並んで4nmプロセスを採用していますが、ArmによるとCortex-X3を含むTCS22は5nmプロセスにも最適化されているので採用することそのものは問題ありません。ただ、プロセスに微細化による性能向上は無視できないので、SS1101のCortex-X3はDimensity 9300と比べて0.04GHz高いですが、性能は後者のほうが高くなるでしょう。
GPUはImmortalis-G720 MP12を採用し、最大800MHzで動作します。同じArm G720 GPUを採用しているものとしてDimensity 9300と8400がありますが、それと比較するとクロック周波数は低めに設定されています。GPUは積載数が正義なので、性能はDimensity 8400以上9300未満となるでしょう (電力効率は考慮しない)。
CPUに採用したCortex-X3は5nmプロセスにも最適化されていましたが、GPUのImmortalis-G720は3nmプロセスと4nmプロセスに最適化されているので、これをどうやって5nmプロセスに導入したのか気になります。5nmプロセスでの製造を選択したのは守りですが、GPUにImmortalis-G720を選択したのは挑戦的で、強気な攻めと弱気の守りが共存しています。
AndroPlusによるとSS1101を開発したのはSmarter Silicon (鼎道智芯)で、この企業はLenovoの完全子会社です。難しく聞こえるかもしれませんが、Huaweiの完全子会社HiSiliconがKirinを開発しているのと同じで、難しく考える必要はありません。完全子会社の名称がSmarter Siliconであることを考えるとSS1101の「SS」は企業名で、「1101」は製品名と考えるのが適切でしょう。
SS1101を初搭載したのはLenovo YOGA Pad Pro 14.5 AI Yuanqiで、16GB+512GBモデルのみで4999元 (約101,000円)に設定されています。同社の公式サイトではこの製品のSoCについて「敬請期待 (乞うご期待)」と記載しているのみで、SS1101を搭載しているとは明言していません。
現在は中国市場のみで購入可能ですが、おそらく中国市場から外に出ることはないと思います。このSS1101の力が気になる人はさまざまな方法を駆使して入手してみてはいかがでしょうか。