Armは2023年5月29日、TCS23 (Arm Toral Compute Solution 2023)を発表し、新CPU IPとなるCortex-X4とCortex-A720、Cortex-A520の仕様を明らかにしました。
今回の新しいCPU IPは昨年の2022年6月に発表したCortex-X3やCortex-A715、設計を見直してAArch32をサポートし直したCortex-A510 Refreshedの後継製品です。
また、今回のCPU IPはすべてArmv9.2アーキテクチャに基づいて設計されており、昨年とおととしに発表されたCPU IPは共通してArmv9.0で設計されていたため、2年ぶりに新しい設計を採用したCPU IPとなります。
Cortex-X4は4世代目のCortex-X Custom CPUで、従来のCortex-X3から15%の性能向上に成功し、超高性能コアとしての役目を果たせそうです。
性能向上を達成したCortex-X4が属する「Cortex-X」は消費電力をやや犠牲にして発揮する性能を向上させるCPUですが、今回は同じ製造プロセスの場合にCortex-X3と比較して40%も軽減されるとしています。
Cortex-X4は性能向上と消費電力の削減が同時に達成されたため、Armの開発能力がうかがえる素晴らしいCPU IPとなりました。
高性能CPU IPのCortex-A720もArmv9.2に基づいて設計され、昨年のCortex-A715と比較して電力効率が20%も向上しました。
そして、多くのミドルレンジ製品向けSoCが採用しているCortex-A78と比較して、同じエリア (面積)に調整した場合10%も性能が高いです。これにより、Cortex-A78を採用した製品が今も製造されていますが、Armの発表によってCortex-A720に変更しやすくなりました。
高効率CPU IPのCortex-A520は、Cortex-X4やCortex-A720とCPU IPと同じくArmv9.2に基づいて設計されており、従来品の設計を見直したCortex-A510 Refreshedから22%も電力効率が向上しています。
さらに、ArmはCortex-A520は効率を最優先した設計ですが、従来品と比較して性能が最大8%も高くなったとしています。
そして、大きな変更点としてすべてのCPU IPでAArch64のみをサポートするため、32bit版のアプリが導入できなくなります。わかりやすく言うと、一斉を風靡したFlappy Birdが手持ちのデバイスで遊べなくなります。
Cortex-A510 Refreshedでは、2021年5月に発表したCortex-A510がAArch64のみをサポートしていましたが、設計を見直してAArch32をサポートするようにした過去がありますが、今回の発表によって完全に64bit-Onlyとなりました。
DSU (DynamIQ Shared Unit)は新たにDSU-120が発表され、Windows on Arm (WoA)向けに超高性能なCortex-X4を10基と高性能なCortex-A720を4基の10+4構成に新たに対応します。
この他、高効率なCortex-A520を1基のみを採用したり、従来と同じく超高性能なCortex-X4を1基と高性能なCortex-A720を3基、Cortex-A520を4基の1+3+4構成を採用したり、Cortex-X4を採用せずCortex-A720を2基とCortex-A520を6基の2+6構成を採用したり出来ます。
そして、従来のDSU-110によるCortex-X3を1基とCortex-A715を3基、Cortex-A510 Refreshedを4基の1+3+4構成と、今年のDSU-120によるCortex-X4を1基とCortex-A720を5基とCortex-A520を2基の1+5+2構成のGeekbench 6におけるマルチスレッド性能は後者が27%も向上するとしています。
TCS23の新CPU IPを採用したSoCを搭載した商用製品は、2023年Q4 (10月-12月)から2024年Q1 (1月-3月)の間にさまざまな企業から発表される見込みです。
今回の発表に関して、Google (Android部門)やTencent Games、Unityがコメントを寄せています。この他、TSMCやIntel Foundry Services (IFS)などのファウンドリ企業、MediaTekやサムスン電子などの半導体開発企業、AsusTeKやHonor、OPPO、vivo、Xiaomiなどの最終製品を開発する企業もコメントを寄せています。