1月28日に発表されたGalaxy M20に搭載されるSamsung Exynos 7 Series 7904のベンチマークスコアが判明しました。Exynos 7904はインド市場向けに開発したとSamsungが発表しているので、グローバル市場にExynos 7904搭載機が発表されるのは少し時間がかかると考えています。
今回、インド人YouTuberのC4ETech氏がExynos 7904を搭載したGalaxy M20のレビューを発表に先立って公開し、それによって判明しました。
AnTuTuベンチマークスコアはCPU性能が47,242点、GPU性能が21,089点、UX性能が31,089点、MEM性能が8,813点で計108,263点という結果になりました。ミドルレンジの中でも下位に部類するスコアとなっており、インド市場では10,990インドルピー(約17,000円)で販売されるので安い方にメチャクチャな値段設定です。
今回、このスコアを他のSoCと比較してみます。今回の比較はベンチマークスコアのみを基準としているので、実使用感やバッテリーの持ちを考慮していないことをご了承ください。
Exynos 7904の比較に、Exynos 7885、Qualcomm Snapdragon 632、HiSilicon Kirin 710を用います。製造プロセスはKirin 710のみ12nm FinFETで一番小さく、CPUはExynos 7904とExynos 7885がA73コアを2コアしか採用せず、Exynos 7904は更にクロックが下がっています。CPUは全てのSoCでオクタコア(8コア)ですが、Exynos 7904とExynos 7885が2+6のオクタコア構成となっています。GPUのクロック数が判明していませんが、後述するグラフを見るとExynos 7885から下がっている可能性があります。
CPUのクロック数が高くないのでバッテリーの持ちは非常に期待できます。しかし、バッテリーの消費量はハードウェアだけでなくソフトウェアも大きく関係するので、何とも言えないのが現状です。
Exynos 7904はExynos 7885から数字が上がっているので実質的な後継機ではないかと考えていましたが、どちらかと言うと廉価モデルになりそうです。CPU性能はbig側のクロック数が大きく下がっていますので、その分がスコアに表れています。Exynos 7904のGPUのクロック数は今の所発表されていませんが、Exynos 7885からスコアが下がっているところを見るとCPUと同じくGPUもクロック数が下がっている可能性があります。
総合性能を見るとExynos 7904とSnapdragon 632は近しい数字を出していますが、細かいところを見てみるとCPU性能はSnapdragon 632が、GPU性能はExynos 7904が優位に立っています。SNSやブラウジングなどのゲームを使用しない利用であればSnapdragon 632搭載機の方が望ましいですが、ゲームをするのであればExynos 7904の方が快適でしょう。フラッグシップモデルでの8,000点の差と、ミドルレンジモデルでの8,000点の差は全く数値の意味合いが異なり、今回のExynos 7904とSnapdragon 632は大いに関係する差です。
Kirin 710はHUAWEIやHonorの2019年度のミドルレンジモデル向けSoCなので比較対象にしてみましたが全く分類が違います。Exynos 7904はミドルレンジの下位モデル、Kirin 710はミドルレンジの中位モデルの位置づけで、ミドルレンジの上位モデルはSnapdragon 710やMediaTek Helio P60が該当します。
Geekbenchではシングルコア性能は1.310点、マルチコア性能は4,078点というスコアになっています。C4ETechが公開した動画によるとExynos 7904はExynos 7885として計測されており、これはデータベースに無いから同じものを探して当てはめているものではなく、Samsungが意図的にExynos 7885の廉価モデルとしてExynos 7904を開発したことを意味しています。少し前にはSnapdragon 636がSnapdragon 660として計測されていたこともあり、この2つのSoCもベースモデルと廉価モデルという関係性を持っています。
Exynos 7904の性能はExynos 7885と比較してシングルコア性能は15%減、マルチコア性能は9%減となっています。Exynos 7885搭載機と同じ事は出来ませんが、ブラウジングやSNSや音楽を聞くといった簡単な操作では不便に感じることはないでしょう。
Exynos 7904とExynos 7885を並べたときに多くの人はExynos 7904が優れていると感じるでしょうがこれは誤りです。一般的に数字が上がれば性能は高くなるというのが世界的な常識となっているので、今回のSamsungの開発は“人を騙している”と受け取られてもおかしくはないです。
ただSamsungを擁護すると、Exynos 7885にはExynos 7904以外にもマイナーチェンジモデルが存在し、Exynos 7884やExynos 7884Aがあります。今回のExynos 7904はExynos 7885とExynos 7884の間に位置するSoCとなっているので適切な名前がなく、名称を変えざるを得なかった可能性があります。Samsungに騙されないためには、Exynos 7904とExynos 7885の関係を正しく理解する必要があり、この記事を読んで少しでも理解していただければと思います。