Pixel 5はSnapdragon 765G 5Gを搭載したのでミドルレンジ製品でしたが、自社開発のGoogle Tensor(S5P9845)によってPixel 6とPixel 6 Proがハイエンド製品に復帰しました。今回、このGoogle Tensorを競合他社が採用している旗艦SoCを、AnTuTu BenchmarkとGeekbenchと3DMarkで比較してみます。
Google Tensorの主な仕様は、Samsung製5nmプロセス技術、CPUは2xCortex-X1 2.8GHz+2xCortex-A76 2.25GHz+4xCortex-A55 1.8GHzのオクタコア構成、GPUはMali-G78 MP20@848MHz/996MHz、RAM規格はLPDDR5(3200MHz)となっています。
CPUはSnapdragon 888 Plus 5GやExynos 2100採用のCortex-X1を2つ採用。ミドルコアはCortex-A78ではなくCortex-A76を採用しており、これはX1の2コア採用によって領域が専有され、PPAを考慮した結果Cortex-A76を採用したと考えられています。
GPUはMali-G78 MP20を採用。周波数が2つ存在し、タイル処理時は996MHz、シェーダー(陰影処理)時は848MHzで動作します。Mali-G78から採用された機能ですが、Exynos 2100やKirin 9000は採用していません。
通常は省略していますが、今回は旗艦SoCを比較するのでガバナーを記載しました。Google Tensorはshed_pixelを、Exynos 2100はenergy_stepの独自ガバナーを採用し、Dimensity 1200とKirin 9000は判明していませんが、Snapdragon 888 Plus 5Gと同じくschedutilだと思います。(ちなみにshedutilはLinux Kernel 4.6から追加された比較的新しいガバナーです。)
5G通信はPixel 6とPixel 6 ProはExynos Modem 5123を外部採用することでSub-6GHz帯とmmWave(ミリ波)に対応します。QualcommはSnapdragon 865 5Gで外部モデムを採用していましたが、Snapdragon 888 5Gでは統合するようになったので、Google Tensorの後継製品があれば統合する可能性もあります。
AnTuTu Benchmark v9ではCPU性能が183,108点、GPU性能は298,146点、MEM性能が106,425点、UX性能が149,942点で総合性能は737,621点となりました。
CPU性能はSnapdragon 888 Plus 5GとKirin 9000に及びませんでしたが、Exynso 2100とDimensity 1200と同じ性能が発揮されており、旗艦級の性能を持っていると言って良いでしょう。AnTuTu Benchmarkはマルチコア性能に重きが置かれているため、Cortex-A76を採用したGoogle TensorはA78やA77を主として採用している他の製品と同等に落ち着きます。
GPU性能はSnapdragon 888 Plus 5Gに及びませんでしたが、Mali-G78 MP24 @759MHzのKirin 9000を上回りました。これは886MHz/996MHzといった高周波数の採用や、2種類の周波数によって様々な状況で処理を最適化が出来ることが要因と考えています。
CPU性能の計測に長けているGeekbench 5では、シングルコア性能が1,021点、マルチコア性能が2,840点となりました。
シングルコア性能では2.8GHz Cortex-X1なので、3.1GHzのSnapdragon 888 Plus 5Gや2.9GHzのExynos 2100に及ばない性能に。3.0GHz Cortex-A78と3.13GHz Cortex-A77を比較した際に後者が優れているのは、周波数の差はもちろんですが、プロセス技術の差(N6 vs N5)が要因でしょう。
マルチコア性能ではAnTuTu Benchmarkと同じく低く算出され、Dimensity 1200よりも低い数値となりました。Kirin 9000が他社製品と比較して高く算出されているのは、TSMC N5を採用したことと周波数の高さが要因ですが、Snapdragon 888 Plus 5Gよりも優れているという点についてはわかりません。
Vulkan APIを利用して計測する3DMarkのWild Life Stress TestではBestが6,439点、Lowestが3,316点で競合他社製品と比較して最も優れていると判明しました。
当然スコアが高いほうがいいですが、Stress Testにおいては安定度が重要なので計算すると、Google Tensorは51.5%、Snapdragon 888 Plus 5Gは65.2%、Exynos 2100は69.2%、Dimensity 1200は62.1%、Kirin 9000は47.9%となりました。
Snapdragon 888 Plus 5GとExynos 2100、Dimensity 1200は60%を維持している一方で、Google Tensorは50%、Kirin 9000は40%なのでPixel 6とPixel 6 Proは高負荷なゲームを遊び続けることに向いていない可能性があります。ただ、これは最高設定を維持した場合に限るので、いくつか性能を落とすと快適なプレイを続けることが出来ます。