AnTuTu Benchmarkを開発提供しているAnTuTuが新バージョンとなるAnTuTu Benchmark v8をリリースして数日が経過しました。様々なプロセッサーに関する様々な情報が集まってきたので簡単に比較を行いたいと思います。以前の記事はAnTuTu Benchmark v7で行っていますので、そちらのほうが良いという方はこちらの記事をご覧ください。
今回はQualcomm Snapdragon 855、Snapdragon 855 Plus、Samsung Exynos 9820、Exynos 9825、Huawei(HiSilicon) Kirin 980を用いて比較を行います。Apple A12 BionicやApple A12X Bionicを比較対象に加えていないのは8月15日現在iOS向けにはリリースされていないためです。
注意
AnTuTu Benchmark v8は過去のバージョンと比べて様々な点が変更されており、特にRAMや内蔵ストレージの容量、高リフレッシュレート環境によってスコアが変動するように調整されています。容量の件は6GB+128GBモデルよりも12GB+512GBモデルの方がMEM性能が高くなり、更に内蔵ストレージではUFS 2.1とUFS 3.0に差が出るようになっています。高リフレッシュレート環境については60Hzよりも90Hz、90Hzよりも120Hzの方がUX性能が高くなるように調整されています。
そのため総合性能を用いた比較は一定のランクを決める上では必要になりますが、SoCの性能を比較するのには適していないため、CPU性能とGPU性能に着目した比較を行います。
スペック表はこの様になります。
Exynos 9825はExynos 9820からCPUとGPUがクロックアップし製造プロセスが8nm FinFETから7nm EUVへ微細化、Snapdragon 855 PlusはSnapdragon 855 PlusからCPUとGPUがクロックアップした製品になっています。
Kirin 980はARM Cortex-A76を初採用、ARM Mali-G76を初採用、7nm FinFET製造プロセスを初採用などの様々な初採用が行われたプロセッサーで、過去の製品のKirin 970やKirin 960とは一線を画するものに仕上がっています。
先程総合性能で判断することが出来ないと言いましたが、今回抽出したものは非常にわかりやすく、Snapdragon 855 PlusとSnapdragon 855が同じスコアを出していることに気がついていただけると思います。細かく見ていくとSnapdragon 855 Plus搭載機はCPU性能とGPU性能が優れていますが、一方でSnapdragon 855搭載機の方がUX性能とMEM性能が優れており、結果的にSnapdragon 855とSnapdragon 855 Plusの差がなくなっています。これは計測に使用したスマートフォンに搭載されているRAMや内蔵ストレージの容量が大きく関係しています。そのため、総合性能だけで優劣を判定するのは適していないです。
UX性能とMEM性能を除外してCPU性能とGPU性能のみにし、総合性能はCPU性能+GPU性能で算出するように変更しました。AnTuTu Benchmark v8ではCPU性能とGPU性能の計測方法にも調整が行われていますが、特定のCPUのみスコアが高くなったりGPUのみスコアが低くなるような調整は行っていないため、この方式が1番比較に優れていると思います。
総合性能ではSnapdragon 855 Plus、Snapdragon 855、Exynos 9825、Exynos 9820、Kirin 980の順番ですが、CPU性能はSnapdragon 855 Plus、Snapdragon 855、Kirin 980、Exynos 9825、Exynos 9820の順番になっています。Exynos 9825とExynos 9820のCPUには高性能な自社開発したExynos M4コアが採用されていますがARM Cortex-A76コアを非採用している点が要因となってAnTuTuベンチマークではKirin 980の方が優れている結果になりました。
GPU性能はSnapdragon 855 Plus、Exynos 9825、Snapdragon 855、Exynos 9820、Kirin 980の順番になりました。Exynos 9825の性能はSnapdragon 855を超えており、GPU性能といえばSnapdragonとなっていますが少しだけその状況が変わりつつあります。Exynos 9825はExynos 9820から使用しているGPUとコア数は変わらないものの、クロック数を上昇させておりその恩恵が数字になって表れています。
8月15日現在のGoogle PlayストアではAnTuTu Benchmark v7がリリースされているので、多くの人がAnTuTu Benchmark v8に触れることは出来ません。ただ主戦場となっている中国市場では正式リリースされているので、中国市場向け新製品発表会ではAnTuTu Benchmark v8を用いたスコアを発表するため驚かないようにしてください。最近でもAnTuTuの公開したMeizu 16s Proのスコアが46万点を超えている事が正しく理解されずに広がってとてつもなく性能が高いと評しているメディアもありますので、その様なメディアを鵜呑みにするのではなく自分の頭で考えて「何故こんなにもスコアが高いのか」という疑問を持ち、調べていってほしいと思います。