Unisocの5G対応製品に付与される「Tangula」を冠したTangula T770、Tangula T760のAnTuTu Benchmark v9とGeekbench 5の性能が判明したので、同じく「Tangula」を冠したTangula T740と比較します。
Tangula T770とTangula T760の関係は、Tangula T770の選別品がTangula T760です。選別品を採用する例としてKirin 9000とKirin 9000Eがありますが、こちらの2製品はGPUの動作周波数が共通なので、Tangula T770とTangula T760とは少し異なる可能性があります。
Tangula T770の主な仕様は、プロセス技術はTSMCの6nmに基づくN6、CPUは2.55GHzのCortex-A78を1基、2.21GHzのCortex-A78を3基、2.00GHzのCortex-A55を4基、GPUはMali-G57 MP4で動作周波数は700MHz、RAM規格はLPDDR4Xで2133MHz、5G通信はSub-6GHzに対応し、下りは3.25Gbps、上りは1.25Gbpsです。(通信速度はともに理論値)
Tangula T760の主な仕様は、プロセス技術はTSMCの6nmに基づくN6、CPUは2.21GHzのCortex-A78を4基、2.00GHzのCortex-A55を4基、GPUはMali-G57 MP4で動作周波数は650MHz、RAM規格はLPDDR4Xで2133MHz、5G通信はSub-6GHzに対応し、下りは3.25Gbps、上りは1.25Gbpsです。(通信速度はともに理論値)
Tangula T740と比較すると、CPUの世代が向上し、動作周波数も向上。GPUはPowerVR GM 9446からMali-G57 MP4へ変更され、良い表現ではないですが「よく知られた」ものを採用しています。そして、大きな違いとしてプロセス技術がTSMCの12nmからTSMC 6nmへ刷新し、高性能化と省電力性の向上に期待ができます。
Tangula T770のAnTuTu Benchmark v9の性能は、CPU性能が128,462点、GPU性能が110,343点、MEM性能が86,484点、UX性能が101,790点で、総合性能は427,079点です。
Tangula T760のAnTuTu Benchmark v9の性能は、CPU性能が126,640点、GPU性能が97,662点、MEM性能が80,121点、UX性能が92,943点で、総合性能は397,366点です。Tangula T770の総合性能と約30,000点の差です。
CPU性能は128,462点と126,640点で、Cortex-A78の1基の動作周波数が2.55GHzに向上したのでわずかな差ですがTangula T770が優位に立ちました。Tangula T740と比較すると2倍以上の差が発生し、5Gに対応した製品として最低性能を「誇った」Tangula T740とはまったくの別物に仕上がっています。
GPU性能は110,343点と97,662点で、750MHzと600MHzの差がきれいに算出されています。Tangula T740と比較するとCPU性能よりも高い3倍以上の差が発生し、競合他社製品のSnapdragon 695 5GやDimensity 930と並ぶ性能を発揮しました。
Geekbench 5での性能は、Tangula T770が621点と2237点、Tangula T760が556点と2,191点となりました。Geekbench 5は基準点が存在し、Intel Core i3-8100が算出するシングルコア性能が1,000点に設定されており、例えば2,000点を発揮すると同製品の2倍の性能を有していると解釈できます。
シングルコア性能は621点、556点、370点で、当然ですが2.21GHzのCortex-A78よりも2.55GHzのCortex-A78の性能が上回りました。ただ、理論的にはTangula T770は800点程度を算出する力を持っているはずなので、何故ここまで性能が低く算出されたのか不明です。
マルチコア性能は2,237点、2,191点、1,725点で、1基のCortex-A78が2.55GHzに向上しただけなので、大きな差は発生しませんでした。Tangula T770、Tangula T760の数値はDimensity 920並の性能なので、非常に高い性能を有しています。
現在、Tangula T770は天翼1号 2022の1製品、Tangula T760はHisense F70 5Gの1製品が搭載しているだけですが、ZTEがTangula T760の採用を表明しているので、徐々に搭載製品が増えていくと思います。
ただ、日本市場においてはTangula T740を搭載した製品は市場に投入されていないので、今回のTangula T770とTangula T760を搭載した製品が投入される可能性は低いでしょう。そのため、注視する必要のない製品となりますが、従来製品のTangula T740よりも遥かに高い性能を有し、上手に開発ができている様子が見えるUnisocについては注意深く見守る必要があるでしょう。