HuaweiはSMICの力を借りてKirin 9000Sの製造を成功させましたが、SMICの製造能力が競合他社に及ばないのか同じ名称のKirin 9000Sの中でも複数のモデルが存在していることがわかりました。
ただ、同じ名称で違う性能を発揮する製品を展開しているのはHuaweiだけでなく「Gen X」に命名規則を変更したQualcommも行っているため、Huaweiだけが特別というわけではありません。
Kirin 9000Sは突如発表されたHUAWEI Mate 60シリーズが搭載している製品ですが、不思議なことにHuaweiはKirin 9000Sを搭載したと公式に発表していません。そのため、Kirin 9000Sは不明な部分が多い製品となっています。
しかし、GeekbenchやDevice Info HWによってMate 60シリーズが搭載したKirin 9000Sの仕様がいくつか判明し、CPUは自社開発したTaiShan v120を採用し、GPUも自社開発したMaleoon 910を採用していることがわかりました。
発表直後のKirin 9000SのCPUの主な仕様は1+3+4構成でしたが、中国の技術者によってワンコアツースレッドを実装していることが判明するとアップデートで2+6+4構成に進化しました。
CPU性能を計測するGeekbenchによると、Kirin 9000Sが採用したCPUのそれぞれのクロック周波数は最大2.62GHz、最大2.15GHz、最大1.53GHzとなっており、この数値はMate 60シリーズで共通しています。
そんなKirin 9000Sを搭載した製品はMate 60シリーズだけでなく、HUAWEI MatePad 13.2"も搭載しています。この画像は発売直後に近いHarmonyOS 4.0.0.116で計測されており、CPUはワンコアツースレッドが開放されていない1+3+4構成となっています。
そのため、HUAWEI MatePad 13.2"は正しくアップデートが行われると2+6+4構成に進化すると思いますが、発売後に行われたHarmonyOS 4.0.0.123の状態で計測されたものを見るとおかしなアップデートが行われていることがわかると思います。
CPUは確かにワンコアツースレッドが開放されて2+4+6構成になりましたが、高性能コアが最大2.62GHzから最大2.49GHzに0.13GHzも低くなってしまいました。しかもこれはHuaweiから成長を調整するとの報告もなくサイレントに行われました。
こういった不思議なアップデートが行われた結果、Kirin 9000Sに複数のモデルが存在することになりました。発揮された性能について見てみると、4.0.0.123後はその前と比較してシングルコア性能は横ばい、マルチコア性能は高くなりました。
しかし、更に私は不思議なことに気づき、GPUのMaleoon 910にも違いがあることがわかりました。Mate 60シリーズのKirin 9000Sはコンピュートユニット数 (実質的にコア数)は4CUですが、MatePad 13.2"のKirin 9000Sは3CUになっています。つまり、ひとつ無効化されていることになります。
CPUはアップデートによって0.13GHzも下がりましたが、GPUは最初から4CUではなく3CUとなっているため、MatePad Pro 13.2"に行われた件のアップデートによって複数のKirin 9000Sが存在するようになったのではなく、最初から複数のKirin 9000Sが存在していることがわかりました。
ちなみにMaleoon 910のクロック周波数は最大750MHzで共通なので、最大2.49GHz版のKirin 9000SのGPU性能は最大2.62GHz版のKirin 9000Sを上回ることはありません。ということを踏まえると最大2.49GHz版のKirin 9000Sは選別落ちの製品と言えそうです。
この記事をまとめると以下のようになります。
- HUAWEI MatePad Pro 13.2"もKirin 9000Sを搭載
- アップデートで2+6+4構成に進化
- その際に高性能コアが最大2.49GHzに下降
- GPUは最初からひとつ無効化され3CU
- Kirin 9000Sには複数のモデルが存在