Snapdragon 8 Gen 2 Leading Versionのベンチマークスコアが判明

Snapdragon 8 Gen 2 Leading Versionのベンチマークスコアが判明

2023年8月4日
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NubiaのREDMAGIC 8S Proシリーズが初搭載したSnapdragon 8 Gen 2 Leading Versionのベンチマークスコアが判明したので、他のSnapdragon 8 Gen 2と従来製品のSnapdragon 8+ Gen 1、Snapdragon 8 Gen 1と比較します。

 

Snapdragon 8+ Gen 1には最大3.00GHzで動作する低クロック版がありますが、今回の比較に使用したのは最大3.19GHzで動作する通常版です。この両製品は当然スペックが異なっていますが、発揮する性能に顕著な違いはないので安心してこの記事を見てください。

 

Snapdragon 8 Gen 2 Leading Versionの主なスペックは、製造プロセスはTSMC 4nm N4、CPUは最大3.36GHzで動作するCortex-X3を1基、最大2.80GHzのCortex-A715を2基、最大2.80GHzのCortex-A710を2基、最大2.02GHzのCortex-A510 Refreshedを3基の1+2+2+3 (1+4+3)構成、GPUは最大719MHzのAdreno 740、RAM規格はLPDDR5X、内蔵ストレージ規格はUFS 4.0、5G通信に対応しSub-6GHz帯とmmWave (ミリ波)をサポート、この他の通信としてWi-Fi 7とBluetooth 5.3をサポートします。

 

AQUOS R8シリーズやXiaomi 13シリーズが搭載した通常版のSnapdragon 8 Gen 2と比較すると、CPUが最大3.19GHzから最大3.36GHzへ、GPUが最大680MHzから最大719MHzに上昇しました。この上昇により、CPU性能とGPU性能は確実に成長するでしょう。

 

Galaxy S23シリーズやフォルダブル製品のZ Fold5、Z Flip5、タブレット製品のTab S9シリーズなどが搭載した特別版のSnapdragon 8 Gen 2 for Galaxyと比較すると、CPUの数値は同じで、GPUの数値も同じなので変更点はありません。そのため、理論上はLeading Versionとfor Galaxyは同じ性能を発揮するはずです。

 

AnTuTu Benchmark v10 OBにおけるSnapdragon 8 Gen 2 Leading Versionの性能は、CPU性能が422,450点、GPU性能が640,812点、MEM性能が322,417点、UX性能が303,685点で総合性能は1,689,364点となりました。

 

通常版のSnapdragon 8 Gen 2と比較すると、CPU性能は約2.3%、GPU性能は約5.0%の成長に成功しました。CPUは1基のCortex-X3が最大3.19GHzから最大3.36GHzに上昇しただけで、この他のCortex-A715やCortex-A710などは数値が同じなので大きな成長は出来ませんでした。

 

GPU性能は最大680MHzから最大719MHzに約5.7%上昇しているので、残念ながら上昇幅分の成長はできていませんが確かに成長していると言えます。しかし、この程度の成長であればGPUに高負荷な要求をする原神 (Genshin Impact)や崩壊:スターレイル (Honkai: Star Rail)などのゲームでは差は感じないと思います。

 

そして、特別版のSnapdragon 8 Gen 2 for Galaxyと比較すると、CPU性能は約2.5%、GPU性能は約1.7%の差が発生しました。この数値を「誤差の範囲」と見る人もいるかも知れませんが、Snapdragon 8 Gen 2 for GalaxyのCPU性能が通常版のSnapdragon 8 Gen 2と同じ数値であることが理解できれば、決して「誤差の範囲」と見ることは出来ないと思います。

 

何故このような差が発生したのかはサムスン電子による調整が理由で、同社の製品の多くは最大のパフォーマンスを発揮できないような調整が行われており、例えばマルチコア性能を計測する場合にすべてのコアが最大クロック数にならないようになっています。この調整によって安定した性能を発揮できると見ることも出来ますが、最大の性能を発揮しそれによって算出された数値を見て優劣を決めるベンチマークにおいては決してふさわしい調整とは言いにくいため、サムスン電子は調整方法をもう少し工夫する必要があると言えます。

 

Geekbench 6におけるSnapdragon 8 Gen 2 Leading Versionの性能は、シングルコア性能が2,151点、マルチコア性能が5,822点となりました。Geekbench 6はAnTuTu Benchmarkとは異なって基準点が用意されており、2022年1月に発表されたPC向けのIntel Core i7-12700のシングルコア性能が2,500点に設定されています。そのため、このCPUを基準として倍の計測時間であれば1,250点、半分の計測時間であれば5,000点となりますので、基準点が設定されていることで自分が所有するデバイスのCPUがどの程度の性能なのかがわかりやすくなっています。

 

通常版のSnapdragon 8 Gen 2と比較すると、シングルコア性能は約2.8%、マルチコア性能は約0.5%の成長に成功しました。シングルコア性能は高性能側のCortex-X3の性能を計測しており、最大3.19GHzから最大3.36GHzに上昇したので、それに合わせて性能も向上しました。

 

マルチコア性能はCortex-X3からCortex-A510 Refreshedまでのすべてのコアの性能を計測するため、高性能側のCortex-X3のみの数値が変更されているがゆえに大きな差は発生しませんでした。Cortex-A715やCortex-A710の数値が変更されていれば、さらに大きな差が発生していたでしょう。

 

特別版のSnapdragon 8 Gen 2 for Galaxyと比較すると、シングルコア性能は約0.1%、マルチコア性能は約1.7%の差が発生しました。シングルコア性能はCortex-X3が最大3.36GHzで共通しているので近い性能が発揮されましたが、マルチコア性能は通常版のSnapdragon 8 Gen 2よりも低い数値が発揮され、残念ながら優位点がない状況に陥っています。

 

こうなった理由はAnTuTuの項目でも解説しましたが、サムスン電子の多くの製品はすべてのコアが最大クロック数にならないようになっているため、Cortex-X3の数値以外は同じ数値に設定されているので基本的に最大の性能を発揮する競合他社のほうが高く算出されてしまいます。

 

Snapdragon 8 Gen 2 Leading Versionは中国市場では「領先版」との名称が付与されていますが、国際市場では特に決まった名称がなく、HONOR Magic V2シリーズではLeatest Version of Snapdragon 8 Gen 2 (直訳: 最新のSnapdragon 8 Gen 2)で異なった名称が付与されています。

 

そして、Qualcommの公式サイトを見ると、最大3.36GHz版と最大3.19GHz版のSnapdragon 8 Gen 2が存在していることになり、クロック数に関する詳しい仕様は搭載した製品の公式サイトを見てほしいといったニュアンスの記述があります。

 

この「Leading Version」は過去の命名規則の場合では「+」版として発表され、Snapdragon 8+ Gen 2となるはずですが、新しい命名規則のもとでは「複数の」Snapdragon 8 Gen 2があるようになっていおり、たしかにわかりやすい例では最大3.19GHzのSnapdragon 8+ Gen 1と最大3.00GHzのSnapdragon 8+ Gen 1が存在するようになっています。

 

そして、勘のいい方はお気づきかもしれませんが、この「Leading Version」はサムスン電子に独占的に供給されていた特別版のSnapdragon 8 Gen for Galaxyの独占期間が終了し、他の企業が採用できるようになった製品です。

 

ただ、発揮する性能は理論上は同じかもしれませんが機能には明確な違いがあり、サムスン電子のGalaxy S23シリーズはSnapdragon 8 Gen 2で初採用したCognitive ISPを初めて活用した製品に仕上がっています。これは写真や動画を撮影する際にオブジェクトをひとつひとつ認識して上手に合成する機能 (セマンティック・セグメンテーション)で、新しいISPを活用することで優れた写真や動画を撮影することが出来ます。

 

つまり、このCognitive ISPはあのXiaomiやvivo、OPPOでもSnapdragon 8 Gen 2を搭載した製品では活用していません。カメラにこだわった製品としてXiaomi 13 Ultraやvivo X90 Pro+、OPPO Find X6 Proなどがありますが、Qualcommの技術を最大限活用しているのはサムスン電子だけとなります。

 

そのため、Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxyを搭載したGalaxy S23シリーズやZ Fold5、Z Flip5などはその点では優位に立っているので、Leading Versionの登場によって特別版の魅力が完全に失われたわけではありません。

 

Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxyの本当の性能が知りたい、少しでもSnapdragon 8 Gen 2より優れた性能がほしいという方にSnapdragon 8 Gen 2 Leading Versionはこれ以上ない製品となるでしょう。ただ、今回の比較でわかったと思いますが、CPUやGPUの性能は微妙に上昇したという状態なので、ほしい製品の機能や価格とにらめっこして、正しくSnapdragon 8 Gen 2と仲良くしてほしいと思います。