Qualcommは2022年の旗艦製品向けにSnapdragon 8 Gen 1、Snapdragon 8+ Gen 1を展開していますが、つい先日GeekbenchにSnapdragon 8 Gen 1のようなものが登場したので、持っている知識を利用して考察します。
Snapdragon 8 Gen 1は2021年12月に発表された製品で、主なスペックは、製造プロセスがSamsung 4nm 4LPX、CPUは3.00GHzで動作するCortex-X2を1基、2.50GHzで動作するCortex-A710を3基、1.79GHzで動作するCortex-A510を4基の1+3+4構成、GPUは818MHzで動作するAdreno 730を採用しています。
Xiaomi 12 ProやOnePlus 10 Proが採用しましたが、過度な発熱による安定した性能の発揮に難があり、「命名規則を変更した最初の製品なのに失敗作」と評価するメディアもあります。実際、競合他社のMediaTekのDimensity 9000と比較して、ピーク時の性能はSnapdragon 8 Gen 1が上回りますが、安定した性能の継続的な発揮に関してはDimensity 9000が優れていました。
その失敗作を挽回するために生まれたとされるSnapdragon 8+ Gen 1の主なスペックは、製造プロセスがTSMC 4nm N4、CPUが3.19GHzで動作するCortex-X2を1基、2.75GHzで動作するCortex-A710を3基、2.02GHzで動作するCortex-A510を4基の1+3+4構成、GPUは900MHzで動作するAdreno 730を採用しています。
CPUとGPUの動作周波数が上昇したことも変更点のひとつですが、特に注目するべき点は製造する場所がSamsung FoundryからTSMCへ変更された点です。これによって過度な発熱が起きにくく、安定した性能の継続的な発揮が可能になり、「通常版」と「+版」でまったく仕様が異なる製品が生まれました。
Snapdragon 8+ Gen 1はXiaomi 12S Ultraやvivo X Fold+が採用し、近年稀見るQualcommの製品の中で成功作と評価するメディアもあり、実際に搭載した製品を所有するユーザーからの評判はすこぶる良いです。
そして、今回発見したSnapdragon 8 Gen 1っぽい製品は数日前にGeekbenchに登場し、計測に使用された製品はOPPO Reno9 Pro+と予想されています。Geekbenchに記された仕様を見ると、3.00GHzで動作するCortex-X2を1基、2.50GHzで動作するCortex-A710を3基、1.80GHzで動作するCortex-A510を4基の1+3+4構成、GPUは動作周波数が不明ですがAdreno 730を搭載しています。
reameizu.com | 8+ Gen 1 | 8 Gen 1 | 8 Gen 1 (?) |
Cortex-X2 | 3.19GHz | 3.00GHz | 3.00GHz |
Cortex-A710 | 2.75GHz | 2.50GHz | 2.50GHz |
Cortex-A510 | 2.02GHz | 1.79GHz | 1.80GHz |
これを捉えたメディアの多くはSnapdragon 8 Gen 1を搭載すると記載していますが、何がおかしいのかわかりやすくするために上に表を作成しました。この表を見ると何が違うのかわかると思いますが、Cortex-A510の動作周波数が異なっています。
Custom Kernelを利用して動作周波数を操作した可能性は否めませんが、開発者コードを利用して詳しく見るとそのような可能性は低く、正規品の可能性が高いので、Qualcommが新しい製品を開発しているのは確かだと思っています。そして、その動作周波数はMHz表記にすると1804MHzで、この数値はQualcommの製品で多用されているものです。
こういった情報を得ましたが確実性がないので情報通の情報を待っていたところ、中国の情報通の数碼閑聊站氏が「Snapdragon 8+ Gen 1の低クロック版がもうすぐ発表されます。Cortex-X2の動作周波数が3.0GHzに下がり、プロトタイプ製品での計測では3.0GHz+2.5GHz+1.8GHzになっています。」と投稿したため、Geekbenchで発見したSnapdragon 8 Gen 1っぽいものが、Snapdragon 8+ Gen 1の低クロック版と明らかになりました。
そして、同氏は「初搭載製品はHONOR 80 Proで、OPPOも採用する予定です。」と明かしており、OPPO Reno9 Pro+が低クロック版のSnapdragon 8+ Gen 1を搭載する可能性がこの発言によって高まりました。
Geekbenchでの性能は、シングルコア性能が1,262点、マルチコア性能が3,915点で、ちょうどふたつの製品の間に位置する性能を発揮しています。そのため、初搭載機のHONOR 80 Pro、搭載が確実視されたOPPO Reno9 Pro+の性能に関しては大きな期待を寄せてもいいと思います。