Qualcommは2026年8月4日 (日本時間)、新SoCとしてSnapdragon 8 Elite Gen 5 V Seriesを発表しました。この発表によって「V Series」が新設され、「Gen X」で簡略化したはずの命名規則に複雑さが戻ってきました。
| 名称 | Snapdragon 8 Elite Gen 5 Leading Version | Snapdragon 8 Elite Gen 5 | Snapdragon 8 Elite Gen 5 V Series |
| CPU | 3rd Gen Oryon CPU
2x Prime 6x Performance (L2 Cache: 12MB / 12MB) |
3rd Gen Oryon CPU
2x Prime 6x Performance (L2 Cache: 12MB / 12MB) |
3rd Gen Oryon CPU
2x Prime 6x Performance (L2 Cache: 12MB / 12MB) |
| 識別子 | 81_2
81_2 |
81_2
81_2 |
81_2
81_2 |
| リビジョン | r3p1
r2p1 |
r3p1
r2p1 |
r3p1
r2p1 |
| 動作周波数 | 4.74GHz
3.63GHz |
4.61GHz
3.63GHz |
4.61GHz
3.63GHz |
| GPU | Adreno 840 (12CU)
(Adreno HPM: 18MB) |
Adreno 840 (12CU)
(Adreno HPM: 18MB) |
Adreno 840 (8CU)
(Adreno HPM: 12MB) |
| 動作周波数 | 1300MHz | 1200MHz | 1200MHz |
| NPU/DSP | Hexagon NPU
12x Scalar 8x Vector 1x Tensor |
Hexagon NPU
12x Scalar 8x Vector 1x Tensor |
Hexagon NPU
12x Scalar 8x Vector 1x Tensor |
| カメラ | Triple 20-bit Spectra AI-ISP
3億2000万画素 or 1億800万画素(ZSL) or 3x4800万画素(ZSL) (Engine for Visual Analytics 5.0) |
Triple 20-bit Spectra AI-ISP
3億2000万画素 or 1億800万画素(ZSL) or 3x4800万画素(ZSL) (Engine for Visual Analytics 5.0) |
Triple 20-bit Spectra AI-ISP
3億2000万画素 or 1億800万画素(ZSL) or 3x4800万画素(ZSL) (Engine for Visual Analytics 5.0) |
| リフレッシュレート | 120Hz (4K+)
240Hz (QHD+) |
120Hz (4K+)
240Hz (QHD+) |
120Hz (4K+)
240Hz (QHD+) |
| エンコード/デコード | Encode: 4K@120fps H.265, H.264, Google Ultra HDR
Decode: 8K@60fps H.265, H.264, VP9, VP8, AV1, APV (Enc/Dec: HDR10+, HDR10, HLG, Dolby Vision) Slow-mo: 1080p@480fps |
Encode: 4K@120fps H.265, H.264, Google Ultra HDR
Decode: 8K@60fps H.265, H.264, VP9, VP8, AV1, APV (Enc/Dec: HDR10+, HDR10, HLG, Dolby Vision) Slow-mo: 1080p@480fps |
Encode: 4K@120fps H.265, H.264, Google Ultra HDR
Decode: 8K@60fps H.265, H.264, VP9, VP8, AV1, APV (Enc/Dec: HDR10+, HDR10, HLG, Dolby Vision) Slow-mo: 1080p@480fps |
| RAM | 4x16-bit LPDDR5X (5300MHz)
(System Level Cache: 8MB) |
4x16-bit LPDDR5X (5300MHz)
(System Level Cache: 8MB) |
4x16-bit LPDDR5X (5300MHz)
(System Level Cache: 8MB) |
| ストレージ | UFS 4.1 | UFS 4.1 | UFS 4.1 |
| USB | USB 3.1 Gen 2 | USB 3.1 Gen 2 | USB 3.1 Gen 2 |
| Wi-Fi | Wi-Fi 7 (11be)
(5.8Gbps) |
Wi-Fi 7 (11be)
(5.8Gbps) |
Wi-Fi 7 (11be)
(5.8Gbps) |
| Bluetooth | Bluetooth 6.0 | Bluetooth 6.0 | Bluetooth 6.0 |
| 位置情報 | GPS, GLONASS, BeiDou, Galileo, QZSS, NavIC
(GNSS: L1 / L2C / L5) |
GPS, GLONASS, BeiDou, Galileo, QZSS, NavIC
(GNSS: L1 / L2C / L5) |
GPS, GLONASS, BeiDou, Galileo, QZSS, NavIC
(GNSS: L1 / L2C / L5) |
| 通信 | 統合: X85 5G Modem (Release-18)
Sub-6GHz / mmWave (DL: 12.5Gbps / UL: 3.7Gbps) |
統合: X85 5G Modem (Release-18)
Sub-6GHz / mmWave (DL: 12.5Gbps / UL: 3.7Gbps) |
統合: X85 5G Modem (Release-18)
Sub-6GHz / mmWave (DL: 12.5Gbps / UL: 3.7Gbps) |
| 充電規格 | Quick Charge 5 | Quick Charge 5 | Quick Charge 5 |
| 製造プロセス | TSMC 3nm N3P | TSMC 3nm N3P | TSMC 3nm N3P |
| 型番 | SM8850-1-AD | SM8850-AC | SM8850-1-AB |
| 公式サイト | Qualcomm | Qualcomm | Qualcomm |
新たに発表されたSnapdragon 8 Elite Gen 5 V Seriesの主な仕様は、製造プロセスがTSMC 3nm N3P、CPUが第3世代のOryonを採用し最大4.61GHzで動作するPrimeと最大3.63GHzで動作するPerformanceを2+6構成で採用、GPUが最大1200MHzで動作するAdreno 840 (8CU)、RAM規格はLPDDR5X、内蔵ストレージ規格はUFS 4.1、モバイルデータ通信は5Gをサポートします。
「V Series」と通常版の違いはGPUで、最大1200MHzで動作する点は同じですが、コンピュートユニット数が12CUから8CUに減少しました。これは通常版のAdreno 840が3スライスで構成されているのに対して、V SeriesのAdreno 840が2スライスで構成されているためです。1スライスあたり4CU搭載されていますが、2スライスに削減されたので8CUに減少しました。
さらに、3スライスから2スライスに削減されたことでGMEMことAdreno HPMが18MBから12MBに減少しました。Snapdragon 8 Elite Gen 5のダイショットを見ると、1スライスあたり6MBのGMEMが配置されており、V Seriesは2スライスなので18MBから6MB欠けて12MBになっています。CPUであればキャッシュは全てのコアに接するように配置されるので欠けることはあまりないですが、GPUはそうではない配置をしているので減少しました。
Snapdragon 8 Elite Gen 5 V Seriesの誕生によって「Snapdragon 8 Elite Gen 5」は5種類存在することになりました。どのような種類が存在するのかは後述しますが、これほどまでに種類が増えたのは近年では珍しいです。過去にはSnapdragon 400やSnapdragon S2などがあるものの、「Gen X」時代になってからはPC向けは種類を増やして様々なニーズに対応する戦略を採用しましたが、モバイルデバイス向けでは種類を増やすことは控えていました。
種類を増やす戦略をモバイルデバイス向けにも広げたのは、プロセスノードの微細化が進むことに比例してコスト面に厳しさが生まれたこと、昨今の異常なAI需要の高まりによるメモリ不足と価格高騰が関係しているのではないかと考えています。前者のコスト面ですが、現在のTSMCの3nmプロセスはウェハ1枚あたり20,000ドル (約315万円)とされており、非常に高価です。この高いコストを回収するには、規格適合品だけでなく不適合品 (歩留まりが100%になることは理論上ありえない)も販売する必要があるのでしょう。
後者のメモリ不足・価格高騰については、Appleが2026年6月25日にMacやiPadの値上げをしたことでメモリ問題を実感したかと思いますが、この問題によって様々な企業が製品展開を考え直していると報道されています。特にミドルレンジやエントリーでの見直しが盛んに行われており、このランクは薄利多売が基本ですが、メモリが不足していては薄利多売も出来ないので自然と1台あたりの儲けが期待できるフラッグシップに力を入れるようになります。そういった企業のニーズに応えるために、規格不適合品を利用し種類を増やす戦略を採用したのでしょう。
| Snapdragon 8 Elite Gen 5の種類一覧 (2026年8月5日) | |
| Snapdragon 8 Elite Gen 5 Leading Version | SM8850-1-AD |
| Snapdragon 8 Elite Gen 5 for Galaxy | SM8850-1-AD |
| Snapdragon 8 Elite Gen 5 | SM8850-AC |
| Snapdragon 8 Elite Gen 5 (7 Cores) | SM8850-5-AC |
| Snapdragon 8 Elite Gen 5 V Series | SM8850-1-AB |
現時点 (2026年8月5日)のSnapdragon 8 Elite Gen 5の種類一覧が上になります。Leading Versionとfor Galaxyは実質的に同じなので、厳密に表現すると5種類ではなく4種類ですが別名なので違うものとカウントしています。実はこれで終わりではなく、現在は5種類ですが、6コアのヘキサコア版を準備しているとの情報がありますので6種類に増える可能性があります。
新たに発表されたSnapdragon 8 Elite Gen 5 V Seriesを初搭載するのはREDMI K100 Proと発表されています。同製品を展開するXiaomiによると、Snapdragon 8 Elite Gen 5 V SeriesのAnTuTu v11における性能は約409.5万点としています。現在の通常版の性能が451万点 (iQOO 15 Ultra)が最高点として発表されているので、それを基準とすると約91%の性能を発揮することになります。
REDMI K100 Proには上位版があり、REDMI K100 Pro Maxが準備されています。この上位版には通常版のSnapdragon 8 Elite Gen 5が搭載されることが明らかになっているため、元は同じSoCだけど異なるものを搭載するといった面白い展開を行います。
このREDMI K100 Proシリーズは国際市場ではPOCO F9シリーズとして展開される予定で、日本市場でも販売されるようです。そのため、新しく発表された「Snapdragon 8 Elite Gen 5 V Series」が日本市場でも展開されるので、POCO F9シリーズに期待している方はこの記事を見て概要を理解しておくと安心です。



