Qualcommは2023年11月17日に中国でメディア向けに新製品発表会を開催し、Snapdragon 7 Gen 3を発表しました。同社はこの新製品をSnapdragon 7 Gen 1と比較して優位点をアピールしました。
Redmi Note 12 Turbo (POCO F5)やrealme GT Neo5 SEが搭載したSnapdragon 7+ Gen 2はなかったことになっているわけではありませんが、今回の発表会では一度も触れることはありませんでした。
名称 | Snapdragon 7 Gen 3 | Snapdragon 7+ Gen 2 | Snapdragon 7 Gen 1 |
CPU | Kryo
1x Cortex-A715 3x Cortex-A715 4x Cortex-A510 Refreshed |
Kryo
1x Cortex-X2 3x Cortex-A710 4x Cortex-A510 (4MB L3 Cache) |
Kryo
1x Cortex-A710 3x Cortex-A710 4x Cortex-A510 |
動作周波数 | 2.63GHz + 2.40GHz + 1.80GHz | 2.91GHz + 2.49GHz + 1.80GHz | 2.40GHz + 2.36GHz + 1.80GHz
(2.52GHz + 2.36GHz + 1.80GHz) |
GPU | Adreno 720
(Snapdragon Elite Gaming) |
Adreno 725
(Snapdragon Elite Gaming) |
Adreno 644
(Snapdragon Elite Gaming) |
動作周波数 | ? | 580MHz | 443MHz |
NPU/DSP | Hexagon NPU | Hexagon DSP | Hexagon DSP |
カメラ | Triple 12-bit Spectra ISP
2億画素 or 6400万画素(ZSL) or 3200万画素+2100万画素(ZSL) or 3x2100万画素(ZSL) 3.0 Gigapixels per Second |
Triple 18-bit Spectra ISP
2億画素 or 1億800万画素(ZSL) or 6400万画素+3600万画素(ZSL) 3x3200万画素(ZSL) 3.0 Gigapixels per Second |
Triple 14-bit Spectra ISP
2億画素 or 8400万画素(ZSL) or 6400万画素+2000万画素(ZSL) or 3x2500万画素(ZSL) 2.5 Gigapixels per Second |
リフレッシュレート | 60Hz (4K)
120Hz (WQHD+) 168Hz (WFHD+) |
4K (60Hz)
120Hz (QHD+) |
120Hz (QHD+)
144Hz (FHD+) |
エンコード/デコード | Encode: 4K@60fps H.265, H.264
Decode: 4K@60fps H.265, H.264, VP9, VP8 HDR10+, HDR10, HLG, Dolby Vision Slow-mo: 1080p@120fps |
Encode: 4K@60fps H.265, H.264
Decode: 4K@60fps H.265, H.264, VP9, VP8 HDR10+, HDR10, HLG, Dolby Vision Slow-mo: 1080p@240fps |
Encode: 4K@30fps H.265, H.264
Decode: 4K@30fps H.265, H.264, VP9, VP8 HDR10+, HDR10, HLG, Dolby Vision(Encode Only) Slow-mo: 720p@480fps |
RAM | LPDDR5 (3200MHz)
LPDDR4X (2133MHz) |
LPDDR5 (3200MHz) | LPDDR5 (3200MHz) |
ストレージ | UFS 3.1 | UFS 3.1 | UFS 3.1 |
Wi-Fi | FastConnect 6700
Wi-Fi 6/6E (11ax) 2.9Gbps |
FastConnect 6900
Wi-Fi 6/6E (11ax) 3.6Gbps |
FastConnect 6700
Wi-Fi 6/6E (11ax) 2.9Gbps |
Bluetooth | Bluetooth 5.3
LE Audio |
Bluetooth 5.3
LE Audio |
Bluetooth 5.2
LE Audio |
位置情報 | GPS, GLONASS, BeiDou (北斗), QZSS, NavIC | GPS, GLONASS, BeiDou (北斗), QZSS, NavIC | GPS, GLONASS, BeiDou (北斗), QZSS, NavIC |
通信 | 統合: Snapdragon X63 5G Modem
Sub-6GHz/mmWave (DL: 5.0Gbps) |
統合: Snapdragon X62 5G Modem
Sub-6GHz/mmWave (DL: 4.4Gbps) |
統合: Snapdragon X62 5G Modem
Sub-6GHz/mmWave (DL: 4.4Gbps) |
充電規格 | Quick Charge 5 | Quick Charge 5 | Quick Charge 4+ |
製造プロセス | TSMC 4nm N4 | TSMC 4nm N4 | Samsung 4nm 4LPX |
型番 | SM7550-AB | SM7475-AB | SM7450-0-AB/SM7450-1-AB |
Snapdragon 7 Gen 3の主な仕様は、製造プロセスはTSMC 4nm N4、CPUはKryoで詳細には最大2.63GHzで動作するCortex-A715を1基、最大2.40GHzのCortex-A715を3基、最大1.80GHzのCortex-A510 Refreshedを4基の1+3+4構成、GPUは最大クロック周波数不明のAdreno 720、RAM規格はLPDDR5、内蔵ストレージ規格はUFS 3.1、モバイルデータ通信は5G NRに対応しSub-6GHzとmmWave (ミリ波)をサポート、その他の通信としてWi-Fi 6EとBluetooth 5.3をサポートします。
製造プロセスはTSMCの4nmプロセスに基づくN4です。Snapdragon 7 Gen 1はサムスンファウンドリの4nmプロセスに基づく4LPXだったため、「4nmプロセス」で共通ですが製造する場所が変わりました。
昨今では、最先端プロセスにおいてはサムスンファウンドリよりもTSMCが優れているとされており、ある時を境にQualcommは高性能な製品をTSMCで製造する傾向になりました。今回もSnapdragon 7 Gen 3は高性能な製品なのでTSMCで製造されています。
CPUは高性能なコアとしてCortex-A715を4基、高効率なコアとしてCortex-A510 Refreshedを4基採用しています。高性能側は最大2.64GHzで動作するものが1基と、最大2.40GHzで動作するものが3基となっているため、実際には1+3+4構成となります。
どちらも1世代前のCPU IPとなるCortex-A710とCortex-A510を採用したSnapdragon 7 Gen 1と比較して、CPU性能は15%の向上に成功しました。Cortex-A715がCortex-A710と比較して性能が5%しか向上していないため、あまり大きな進化とはなっていません。
GPUはAdreno 720を採用し、7世代のAdrenoに進化しました。6世代AdrenoのAdreno 644を採用したSnapdragon 7 Gen 1と比較して性能は50%の向上に成功しました。高負荷な要求を行う原神や崩壊:スターレイルを快適に遊べるようになるでしょう。
GFX Bench v5のAztec Ruins 1080p Vulkan環境においてはSnapdragon 7 Gen 1と比較して安定度が向上し、30回連続で計測した際の性能差は52%だったとしています。スマートフォンは端末の性質上本体が小さいのでSoC本体の安定度の高さが非常に重要になります。
ISPの性能が微妙に下がっており、サポートする最大画素数は2億画素で共通ですが、ゼロシャッターラグ環境においてSnapdragon 7 Gen 1は8400万画素をサポートする一方で、今回の製品は6400万画素に下がっています。さらに、得られる情報量も14bitから12bitに下がっています。
しかし、処理できるピクセル数は1秒あたり2.5ギガピクセルから1秒あたり3.0ギガピクセルに上昇しています。Snapdragon 7 Gen 3は従来品からISP性能が向上したのか低下したのかよくわからない状態ですが、少なくとも大幅に向上はしていないと言えます。
今回発表されたSnapdragon 7 Gen 3はHonorが初搭載すると明らかにされました。初搭載製品はHONOR 100で、2023年11月23日に武漢で開催される新製品発表会で発表されます。
そして、QualcommはプレスリリースでHONORの他にvivoが搭載するとしており、この企業はSnapdragon 7 Gen 1を採用していないのでどのような製品が採用するのか現時点では予想が付きません。
vivoは歴史的に見て失敗作を採用しない傾向にあるため、Snapdragon 7 Gen 3は素晴らしいものであると考えられます。もちろん、本当の優れているのは同シリーズにおいて異様な製品とも言えるSnapdragon 7+ Gen 2なのは揺るぎないものです。