Snapdragon 7 Gen 1 Accelerated Editionのベンチマークスコアが判明

Snapdragon 7 Gen 1 Accelerated Editionのベンチマークスコアが判明

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HONOR 90が初搭載した最大2.52GHzで動作するSnapdragon 7 Gen 1ことSnapdragon 7 Gen 1 Accelerated Edition (中国語: 増強版)のベンチマークスコアが判明したので、いくつかのSoCと比較します。

 

比較対象にSnapdragon 778G 5Gを含めるか迷いましたが、Snapdragon 782Gが近い数値を表現するので今回は含めていません。両SoCで顕著な違いはありませんので、参考程度にしてこの記事を読んでいただけるとうれしいです。

 

Snapdragon 7 Gen 1 Accelerated Editionの主なスペックは、製造プロセスはSamsung 4nm 4LPX、CPUはKryoで最大2.52GHzで動作するCortex-A710を1基、最大2.36GHzのCortex-A710を3基、最大1.80GHzのCortex-A510を4基の1+3+4構成、GPUは最大443MHzのAdreno 644、RAM規格はLPDDR5、内蔵ストレージ規格はUFS 3.1、5G通信に対応しSub-6GHz帯とmmWave (ミリ波)をサポート、この他の通信としてWi-Fi 6E、Bluetooth 5.2をサポートします。

 

HTC U23シリーズ、motorola razr 40が搭載したSnapdragon 7 Gen 1との違いはプライムコアとして動作する1基のCortex-A710で、最大2.52GHzで動作するか最大2.40GHzで動作するかだけです。GPUはまったく同じで、その他の構成も同じなので実質的な差はCPUの0.12GHzとなります。

 

GPUはAdreno 644を採用し、最大443MHzで動作します。おそらく誰も興味ない細かい話をすると、Adreno 644は当初Adreno 662になる予定でした。Adreno 660はSnapdragon 888 5Gが搭載したGPUなので、開発が判明した当初はかなり期待されましたが、現実は儚く悲しいものとなりました。

 

製造プロセスはサムスン電子の4nmプロセスに基づく4LPXで、このプロセスノードは高負荷な要求があると過度な発熱と性能低下を招いたため評判の悪いSnapdragon 8 Gen 1も製造しました。ただ、Snapdragon 7 Gen 1 Accelerated Editionを製造した4LPXと、残念ながら評判の悪いSnapdragon 8 Gen 1を製造した4LPXはまったく同じものではなく、歩留まりの問題が解消され、発揮したい性能を100%ではないかもしれませんが、近い数値を発揮できる状態に仕上がっている4LPXと推測しています。

 

ちなみに、Xiaomi Civi 2 (Xiaomi 13 Lite)やOPPO Reno7 Proが採用したSnapdragon 7 Gen 1は歩留まりが悪かったときに製造されたもの、HTC U23シリーズやmotorola razr 40が採用したSnapdragon 7 Gen 1は歩留まりが改善された後のものと私は認識しており、製造に前期と後期がある製品だと考えています。

 

そのため、Snapdragon 7 Gen 1は前期と後期 (いずれも個人的な推測)で発揮する性能に結構な差があります。そのあたりもいつかまとめられたらいいと考えています。

 

 

AnTuTu Benchmark v10 OBにおけるSnapdragon 7 Gen 1 Accelerated Editionの性能は、CPU性能は236,287点、GPU性能は170,255点、MEM性能は171,657点、UX性能は146,370点で、総合性能は726,859点となりました。

 

通常のSnapdragon 7 Gen 1の性能を100%として比較すると、CPU性能は約95.6%、GPU性能は約99.5%となりました。どちらの性能も通常版よりも低い性能が算出されており、特にCPU性能は最大2.52GHzと最大2.40GHzで明確な差があるのにもかかわらず、誤差では済まされない差があります。ただ、Honorの製品の多くはSoCの性能を最大限発揮していない傾向にあるため、このSoCを他の企業が採用するともう少しいい性能を発揮するかもしれません。

 

Snapdragon 782Gと比較すると、CPU性能とGPU性能ともに優位に立っており、「Gen X」世代の面目は保つことに成功しています。また、Snapdragon 7 Gen 1を搭載した製品のRAMはLPDDR4Xですが、Snapdragon 782GはLPDDR5なので、Snapdragon 7 Gen 1は本当の性能を発揮していない状態で性能を上回っています。

 

Redmi Note 12 Turbo (POCO F5)とrealme GT Neo5 SEが搭載したSnapdragon 7シリーズ内のSoCとしては異様な位置にいるSnapdragon 7+ Gen 2とは大きな差があり、グラフを見るだけで違いがわかると思うので詳細な比較は割愛します。超高性能なCortex-Xシリーズを採用することでこれだけの差が生まれるのは、やはりArmの開発したCortex-Xは高い性能を発揮することに長けていると見ることが出来ます。

 

 

Geekbench 6におけるSnapdragon 7 Gen 1 Accelerated Editionの性能は、シングルコア性能は1,120点、マルチコア性能は3,225点となりました。Geekbench 6はAnTuTu Benchmarkと異なって基準点が存在しており、2022年1月に発表されたPC向けのIntel Core i7-12700のシングルコア性能が2,500点に設定されています。そのため、このCPUを基準として倍の計測時間であれば1,250点、半分の計測時間であれば5,000点となりますので、基準点が設定されていることで自分が所有するデバイスのCPUがどの程度の性能なのかわかりやすくなっています。

 

シングルコア性能は1,120点で、最大2.40GHzで動作するSnapdragon 7 Gen 1よりも高い性能を発揮し、最大2.52GHzの優位性が証明されました。しかし、従来のSnapdragon 782Gと比較すると、最大2.71GHzのCortex-A78は最大2.52GHzのCortex-A710よりも優れた性能を発揮しており、Cortex-A710はそれほど優れたものではない可能性があると考えることも出来ます。

 

マルチコア性能は3,225点で、最大2.40GHzで動作するSnapdragon 7 Gen 1から約3.1%の成長に成功しました。3基のCortex-A710と4基のCortex-A510はまったく同じ数値を採用しているため、これだけの差を生み出したのは正直なところ不明です。1基のCortex-A710の数値が上がっただけで、これだけの差を生み出すことはほぼありません。

 

 

Snapdragon 7 Gen 1 Accelerated Edition (中国語: 増強版)の性能は最大2.40GHzで動作する通常版のSnapdragon 7 Gen 1から総合的に見ると大きな変更はありませんが、CPUの部分に注目すると数値としてはたったの0.12GHzの差ですがしっかりとした差が生まれています。

 

CPUはプライムコアが最大2.52GHzなのか最大2.40GHzなのかの違いしかありませんが、性能には前述の通りしっかりとした差があるので、HONOR 90はHTC U23シリーズなどの通常のSnapdragon 7 Gen 1よりも優位点があります。

 

GPUは最大443MHzのAdreno 644で共通なので、当然といえば当然ですが同じ性能を発揮しました。そのため、GPUに負荷をかけるPUBG Mobileや原神 (Genshin Impact)をプレイすることを考えている場合は、どちらのSnapdragon 7 Gen 1でも同じ体験が得られるでしょう。

 

総合的に見ると違いはCortex-A710のクロック数だけなので、HONOR 90の特徴が自分のほしい製品と合致しているのであれば選ぶ価値はありますが、特に当てはまらない場合はHTC U23シリーズやmotorola razr 40などの他の製品を購入したほうがいいでしょう。

 

HONOR 90は中国市場やヨーロッパ市場、イギリス市場で販売されており、中国国外で販売されているものはGMS (Google Mobile Services)が利用できるので、よほどの事がない限りはヨーロッパ市場やイギリス市場で販売されているモデルを購入しましょう。

 

価格は、ユーロ圏のフランス市場では12GB+512GBモデルが499.90ユーロ (約79,000円)、イギリス市場では8GB+256GBモデルが449.99ポンド (約83,500円)に設定されています (付加価値税などは不明)。OSはAndroid 13ベースのMagicOS 7.1を搭載しており、元親会社となるHuaweiのEMUIに触れたことのある方は馴染みやすいと思います。

 

ちなみに、「Accelerated Edition」はHonorが通常のSnapdragon 7 Gen 1と異なることをわかりやすくするために名前をつけているだけで、Qualcommの公式サイトでは最大2.52GHz版と最大2.40GHz版のSnapdragon 7 Gen 1が存在していることになっています。そのため、他の企業がこのSoCを採用した場合、開発元の公式サイトでは「Snapdragon 7 Gen 1」とだけ記載される可能性がありますので、このSnapdragon 7 Gen 1が最大2.52GHzで動作するのか最大2.40GHzで動作するのかしっかりと確認する必要があります。