日本市場でSnapdragon 8 Gen 2 for Galaxyを搭載したGalaxy S23シリーズの販売する予定と判明したので、Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxyの性能を通常版のSnapdragon 8 Gen 2と、Galaxy Z Fold4とZ Flip4が搭載したSnapdragon 8+ Gen 1、Galaxy S22シリーズが搭載したSnapdragon 8 Gen 1、Exynos 2200と比較します。
今回の比較で用いた「性能」はピーク性能を意味しており、安定して高い性能を発揮する安定性については数値に表れないので注意してください。個人的な見解ですが、安定性に関しては搭載したデバイスを購入し使用する以外にわからないと思うので、今回の比較では考慮していません。申し訳ございません。
また、AnTuTu BenchmarkにおいてはAndroidとiOSで比較するのは不適当だと開発元が声明を発表しているため、今回の比較で出てきた数値を利用してどちらかが優れていると認識するのはやめてほしいです。ただ、Geekbenchでは比較を認めているので、こちらでは比較を行っても問題ありません。
Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxyの主な仕様は、製造プロセスはTSMC 4nm N4、CPUは最大3.36GHzで動作するCortex-X3を1基、2.80GHzで動作するCortex-A715とCortex-A710をそれぞれ2基、2.02GHzで動作するCortex-A510 Refreshedを3基の1+2+2+3構成、GPUは最大791MHzで動作するAdreno 740、RAM規格はLPDDR5X、内蔵ストレージ規格はUFS 4.0、モバイルデータ通信は5Gに対応しSub-6GHz帯とmmWaveをサポート、この他にWi-Fi 7、Bluetooth 5.3をサポートしています。
通常のSnapdragon 8 Gen 2との変更点は、CPUのCortex-X3が最大3.19GHzから最大3.36GHzで動作、GPUもAdreno 740が680MHzから719MHzで動作するようになっています。この他にISPの部分で差がありますが、今回の性能に直結しないので省略します。
製造場所は台湾のTSMCで、このSoCが発表されるまではSamsung Foundryで製造されるといった噂もありましたが、通常のSnapdragon 8 Gen 2と同じ製造場所のため、基本的にはオーバークロック版となります。
Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxyを搭載したGalaxy S23 UltraのAnTuTu Benchmark v9の性能は、CPU性能が281,064点、GPU性能が577,611点、MEM性能が256,788点、UX性能が175,805点で、総合性能は1,291,268点となりました。
通常のSnapdragon 8 Gen 2と比較すると、CPU性能はやや劣位、GPU性能はやや劣位となり、これはGalaxy S23 Ultraが悪いというよりはサムスン電子の調整が関わっています。というのも、サムスン電子の製品はフルパワーで動作しないように調整されていることが多く、所有者によるレビューを見るとマルチコアの性能を計測するときにCortex-X3の動作が大人しくなっていると報告されているので、通常のSnapdragon 8 Gen 2とあまり差が出なかったと考えています。
いくつかの地域向けのGalaxy S22シリーズが搭載したSnapdragon 8 Gen 1と比較すると、CPU性能は約18%、GPU性能は約29%の性能向上に成功しました。世代が進化しているので性能が上がるのは当然ですが、製造場所を変更して優れた技術と安定性を提供するTSMCが製造するようになり、やや厳しい要求でも製造が可能になったため、今回のような性能向上に成功したと考えています。
国際市場向けのGalaxy S22シリーズが搭載したExynos 2200と比較すると、CPU性能は約21%、GPU性能は約40%の性能向上に成功しました。Exynos 2200を搭載したのは主にヨーロッパ市場向けで、これだけの性能向上幅だと1世代先の製品ですが購入する意味は大いにあるでしょう。むしろ今すぐ乗り換えた方がいいと断言できるレベルです。
Geekbench 6には基準点があり、シングルコア性能は2022年1月に発表されたIntel Core i7-12700が発揮される性能が2,500点に設定されています。これを基準点として倍の計測時間であれば1,250点、半分の計測時間であれば5,000点となり、基準点が設定されていることで自分の製品のCPUがどの程度の性能なのかわかりやすくなっています。
Geekbench 6におけるSnapdragon 8 Gen 2 for Galaxyの性能は、シングルコア性能が2,109点、マルチコア性能が5,609点となりました。2,500点に届いていないので基準点として設定されているIntel Core i7-12700と同等の性能ではありませんが、近い性能を有していることはわかります。
通常のSnapdragon 8 Gen 2と比較すると、シングルコア性能は約5%、マルチコア性能は約-1%の性能向上となりました。シングルコア性能が優れた要因はCortex-X3が最大3.19GHzから最大3.36GHzで動作するようになったこと、マルチコア性能で差が生まれなかったのはCPUの変更点がCortex-X3のみであることと前述したようにフルパワーで性能を発揮しないように調整していることが関係しています。
Snapdragon 8 Gen 1と比較すると、シングルコア性能は約25%、マルチコア性能は約39%の性能向上、Exynos 2200と比較すると、前者の性能は約31%、後者の性能は約44%の成長で、触っていると動作に違いに気づけるレベルの明らかな差が発生しています。AnTuTu v9でも記載しましたが、Galaxy S22シリーズから乗り換える意味は大いにあると思います。
Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxyは通常のSnapdragon 8 Gen 2とは違いが実感できるほどではありませんが、Galaxy S22シリーズが搭載したSnapdragon 8 Gen 1とExynos 2200とは大きな違いがあり、Galaxy S22シリーズから見てGalaxy S23シリーズはたったの1世代先の製品ですがまったくの別物に仕上がっています。
そのため、Galaxy S22 Ultraを売ってGalaxy S23 Ultraを購入するといった行動も不思議ではなく、お金に余裕があるのであれば乗り換えたほうがいいとオススメするレベルです。ただ、Galaxy S22 Ultraも優れた製品ではありますので、Galaxy S23 Ultraを購入する意味が見いだせなかったら乗り換える必要はありません。
Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxyは現時点ではGalaxy S23とGalaxy S23+、Galaxy S23 Ultraが搭載していますが、下半期に発表予定のGalaxy Z Fold5とGalaxy Z Flip5も搭載するとの噂がありますので、「for Galaxy」の名の通りにサムスン電子の製品のみが搭載するでしょう。そのため、携帯電話市場において珍しいSoCであることは間違いありませんので、携帯電話についてなにか研究しているのであれば存在を強く覚えておく必要があるでしょう。