Qualcommは2020年6月17日に中国の北京市で開催した新製品発表会で5G通信に対応したQualcomm Snapdragon 690 5G Mobile Platformを発表しました。Snapdragon 690 5GはSnapdragon 6 Seriesに属する製品で、代表的な製品としてOPPO Reno3 Aが搭載しているSnapdragon 665、Google Pixel 3aが搭載しているSnapdragon 670があります。
Snapdragon 690 5GはSnapdragon 6 Seriesにおいて初めて5G通信に対応した製品となったため、Qualcommの製品群ではSnapdragon 8 Series、Snapdragon 7 Series、Snapdragon 6 Sereisが5G通信に対応しており、エントリーモデル向けのSnapdragon 4 Series、Qualcom 2 Seriesは4G通信に対応しています。
名称 | Snapdragon 690 5G | Snapdragon 675 | Snapdragon 665 |
CPU | Kryo 560
(2xA77 + 6xA55) |
Kryo 460
(2xA76 + 6xA55) |
Kryo 260
(4xA73 + 4xA53) |
周波数 | 2.0GHz + 1.7GHz | 2.0GHz + 1.7GHz | 2.0GHz + 1.8GHz |
GPU | Adreno 619L | Adreno 612 | Adreno 610 |
周波数 | ? | 845MHz | 950MHz |
NPU | Hexagon 692 | Hexagon 685 | Hexagon 686 |
ISP | Spectra 355L
1億9200万画素 or 3200万画素(ZSL) or 2×1600万画素(ZSL) |
Spectra 250L
1億9200万画素 or 2500万画素(ZSL) or 2×1600万画素(ZSL) |
Spectra 165
4800万画素 or 2500万画素(ZSL) or 2x1600万画素(ZSL) |
リフレッシュレート | 120Hz(FHD+)
60Hz(QHD) |
FHD+(60Hz) | FHD+(60Hz) |
RAM | LPDDR4X(1866MHz/8GB) | LPDDR4X(1866MHz/8GB) | LPDDR4X(1866MHz/8GB) |
ストレージ | UFS 2.1
eMMC 5.1 |
UFS 2.1
eMMC 5.1 |
UFS 2.1
eMMC 5.1 |
Wi-Fi | FastConnect 6200
Wi-Fi 6 |
Wi-Fi 5 | Wi-Fi 5 |
Bluetooth | Bluetooth 5.1 | Bluetooth 5.0 | Bluetooth 5.0 |
通信 | Snapdragon X51 5G
LTE Cat.24/22(1200Mbps/210Mbps) 5G NR Sub-6GHz(2.5Gbps/660Mbps) |
Snapdragon X12 LTE
LTE Cat.12/13(600Mbps/150Mbps) |
Snapdragon X12 LTE
LTE Cat.12/13(600Mbps/150Mbps) |
位置情報 | GPS
Glonass BeiDou Galileo QZSS NavIC SBAS |
GPS
Glonass BeiDou Galileo QZSS SBAS |
GPS
Glonass BeiDou Galileo QZSS SBAS |
急速充電 | Quick Charge 4+ | Quick Charge 4+ | Quick Charge 3.0 |
製造プロセス | 8nm FinFET | 11nm FinFET | 11nm FinFET |
内部コード | SM6350 | SM6150 | SM6125 |
Snapdragon 690 5GはSamsung製8nm FinFET製造プロセスを採用し、CPUはKryo 560(2xA77+6xA55)のオクタコア構成、GPUはAdreno 619Lを搭載しています。Qualcommによると、Snapdragon 675と比較してCPU性能は20%、GPU性能は60%向上しているようです。GPUはAdreno 619Lと聞き慣れないものを採用していますが、Snapdragon 7 Seriesに属するSnapdragon 730/Snapdragon 730GがAdreno 618を、Snapdragon 765 5G/765G 5G/768G 5GがAdreno 620を採用しているため、ちょうど間ぐらいの性能と考えるのが良いと思います。更に、Qualcommの製品における“L”はスペックを落としていることを意味していますので、通常のAdreno 619(今の所搭載機は無し)から性能を落としたものということになります。
ISPはSpectra 355Lを採用しており、最大1億9200万画素のシングルカメラに対応しています。Snapdragon 765 5G/765G 5G/768G 5Gは“L”の無いSpectra 355を搭載し、主な違いとしてZSL(ゼロシャッターラグ)環境においてSpectra 355Lではシングルカメラとデュアルカメラは3200万画素と2×1600万画素に対応していますが、Spectra 355は3600万画素と2×2200万画素に対応していますのでいくつか性能が下げられており、Snapdragon 6 SeriesとSnapdragon 7 Seriesの差別化が図られています。
通信面においてはSnapdragon 690 5GはSnapdragon X51 5Gを統合し、Snapdragon 6 Series初の5G通信対応製品となっていますが対応している5G通信はSub-6GHz帯となっており、Snapdragon 8 SeriesやSnapdragon 7 SeriesはSub-6GHz帯に加えてmmWave(ミリ波)にも対応しているため、通信面においても差別化が図られています。しかし、今現在の世界において主流なのはSub-6GHz帯を利用した通信となっていますので、mmWaveに非対応であることは欠点にはなりえないと考えています。
Dual-SIM環境においてはスペックシートにはGlobal 5G multi-SIMと記載されているので5G+5G対応と考えてしまうかもしれませんが、Qualcommの発表によると5G+4GのDSDSとなっています。
位置情報システムではインドが開発したNavIC 航法衛星システム(NavIC/ナブアイシー)に対応しており、インド市場を見据えた設計になっています。この他、リフレッシュレートはFHD+環境では120Hzの高リフレッシュレートに対応しており、昨今のトレンドを見逃すことのない製品となっています。
RAM規格に関してはLPDDR4Xに対応しているというのは明らかになっていますが、速度がProduct Briefでは1866MHz、スペックシートには2133MHzと記載されているので表記ゆれが発生しています。Snapdragon 7 SeriesのSnapdragon 765 5G/765G 5G/768G 5Gは2133MHzとなっていますので、Snapdragon 690 5Gは1866MHzではないかと考えています。
Snapdragon 690 5Gを利用する企業としてNOKIAスマートフォンを開発しているHMD Global、Motorola、TCL、LG、SHARP、Wingtech(OEM/ODM)が挙げられています。日本市場にとって深く関わりのあるMotorolaとSHARPが名を連ねているため、Snapdragon 690 5G搭載機は日本市場で販売される可能性が高いです。