フラッグシップモデル向けSoCとして開発・提供されているMediaTek製Helio X30とHuaweiに独占提供しているHiSilicon製Kirin 970、Qualcomm製Snapdragon 835をAnTuTuベンチマークのデータベースを用いて比較します。
比較に用いるスマートフォンは2017年10月時点での総合ランキングで26位のMeizu PRO 7-H(Helio X30)、6位のHuawei Mate 10(Kirin970)、3位のOnePlus 5(Snapdragon 835)です。
AnTuTuベンチマークはスマートフォンの性能を数値化したものであり、体感を数値化したものではないことを考慮して読んでいただければ幸いです。
基本性能
製造プロセスどちらも省電力・高性能化が期待できる10nmで、コア数はHelio X30が10コア、Kirin 970とSnapdragon 835は8コアとなっています。
GPUはHelio X30にはMediaTekが長らく愛用してきたARM製のMaliではなくImagination Technologies製のPowerVRに変更されています。
大きな違いはLTEカテゴリで、アップリンクは全てCat.13となっていますが、ダウンリンクはKirin 970がCat.18で通信速度は最大1.2Gbps、Snapdragon 835がCat.16で最大1Gbpsとなっています。
発表時期はHelio X30が2016年9月、Kirin 970が2017年10月、Snapdragon 835は2016年11月で、初搭載機が発表されたのはそれぞれ2017年7月、2017年10月、2017年4月です。
総合スコア
Helio X30が143,104点、Kirin 970が176,484点、Snapdragon 835が181,288点となり、Snapdragon 835が優位に経ちました。
AndroidではQualcommが覇権を握っている状態です。
前モデルではHelio X25が9万点、Kirin 960が13万点、Snapdragon 821が15万点となっていますので、全てのSoCで確実に進化し、数値での進化はHelio X30とKirin 970が大きいです。
シングルコア性能
Helio X30がSnapdragon 835を若干上回るという結果になりました。
Helio X30のA73が2.6GHzでの高クロックなので、他のSoCよりも良いスコアが出ています。
Kirin 970もHelio X30と同じA73を搭載していますが、こちらは2.4GHzですので数値が低くなっています。
マルチコア性能
マルチコア性能ではKirin 970がSnapdragon 835と4点差で首位に。
一方でシングルコアではトップだったHelio X30は最下位という結果になり、クラスター3のA35の1.9GHzで低クロックになっているのが大きく関係しています。
GPU性能
3D性能ではやはりQualcommが強く、Snapdragon 835が他のSoCと大きく差をつけて1位になっています。
前モデルとなるKirin 960は46,000点なのでKirin 970は約1.5倍の成長をし、高負荷のかかるゲームをしても問題はないでしょう。
Helio X30は4万点でKirin 970とSnapdragon 835と比較すると非常に低いですが、前モデルのHelio X25が16,000点という事を考えると2倍以上の進化をしています。
しかしながらMediaTekはSnapdragon 835の前モデルとなるSnapdragon 821の58,000点よりも低いので、これがフラッグシップモデル向けSoCとしてリリースされているのに違和感を覚えます。
Geekbenchでの比較
AnTuTuベンチマークでは総合性能の算出に秀でていますが、GeekbenchではCPUの性能差がわかりやすいので今回はGeekbenchでの比較も行います。
Geekbench公式は平均スコアを算出していませんので、ReaMEIZUの主観で数値が良いものをピックアップしています。
AnTuTuベンチマークのシングルコアではHelio X30がトップに立ちましたが、GeekbenchではSnapdragon 835がトップ、マルチコア性能ではAnTuTuと同じくSnapdragon 835がトップとなりました。
Snapdragon 835はAnTuTuベンチマークでもGeekbenchでもトップを飾ったことになります。
総括
どのSoCも前モデルと比較をするとしっかりと進化していることが判明しました。
記事執筆時の2017年12月8日現在、MediaTekはHelio Xシリーズの開発を中止、Qaulcommは2018年度のプラットフォームのSnapdragon 845を発表済みとなっおり、目まぐるしく世界は変わっています。
- MediaTekがHelio Xシリーズの開発を中止して、Helio Pシリーズに注力するとの情報
- QualcommがSnapdragon 845を正式発表。Snapdragon 835よりも30%程度の性能上昇が出来ているとのこと
スマートフォンは「ゲームをするのも1つの使い方」という認識は古く、ゲームのために買い換える人は少なくありません。
ゲームを快適にプレイ出来るかどうかを決めるチップはGPUなので3社ともGPUの性能向上に力を入れていて、今回の比較で最も秀でたのSnapdragon 835が一番快適にプレイが可能で、次点のKirin 970は旧世代のSnapdragon 821の60,000点を上回る成績を出していますので、こちらも問題なくゲームを快適にプレイすることは可能です。
一方でHelio X30ではこの2つのSoCと比べると高負荷のかかる場面でカクつきが出る可能性がありますので、「ゲームをする」目的であればHelio X30は候補に上がらないでしょう。
急激な進化はないだろうと予見されていましたが、全くそのようなことはなく成長が続いています。
全体を通してSnapdragon 835よりも30%の性能向上に成功したSnapdragon 845の性能も気になりますし、SAMSUNG製Exynos 9 Series(9810)の性能にも期待がかかります。
MediaTekはフラッグシップモデル向けのSoCの競争から脱落しましたが、Apple、Qualcomm、SAMSUNG、HiSiliconの競争はまだまだ続いていきますので、最新の情報を追っていきたいですね。
参考