中国市場向けのvivo Y77が初搭載したMediaTekのDimensity 930のAnTuTu Benchmark v9とGeekbench 5の性能が判明したので、同じDimensity 900 Familyに属するDimensity 920、Dimensity 900と比較します。
Dimensity 930の主な仕様は、プロセス技術がTSMCの6nmに基づくN6、CPUは2.2GHzのCortex-A78を2基、2.0GHzのCortex-A55を6基、GPUはBXM-8-256で動作周波数は不明、RAM規格はLPDDR5で2750MHz、5G通信はSub-6GHzのみ対応し、最大通信速度は下りが2.77Gbps、上りが1.25Gbpsとなっています。
名称はDimensity 900、Dimensity 920の後継製品ですが、CPUは2.5GHzや2.4GHzから2.2GHzへ減少、GPUはMali-G68 MC4からBXM-8-256へ変更され、性能が落ちている可能性を考えています。GPUは馴染みのない名称ですが、Imagination Technologiesが開発したもので、同社のGPUとして著名なのはPowerVR GE8320、PowerVR GE8300があります。
Dimensity 930のAnTuTu Benchmark v9における性能は、CPU性能が100,293点、GPU性能が104,974点、MEM性能が82,199点、UX性能が92,542点で、総合性能は380,008点となりました。
Dimensity 920、Dimensity 900よりも低い性能が算出されており、CPU、GPUが特に低い性能を発揮しています。先ほども記載しましたが、名称は後継製品なのに、性能は下がっているといった不思議な現象が発生しており、この記事を見てDimensity 930の正しい性能を把握してほしいと思います。
CPU性能は100,293点で、Cortex-A78の動作周波数が2.5GHzや2.4GHzから2.2GHzへ減少したため、大きく性能が低下しました。ただ、Cortex-A78自体の性能は非常に優れているのでDimensity 930の性能はそれほど低くないと思いますが、同じFamilyの2製品と比較すると性能が大きく減少しているため、Dimensity 920の後継製品と認識して購入すると痛い目を見るかもしれません。
GPU性能は104,974点で、これ自体の性能は決して低いとは思いませんが、Dimensity 920が約14万点、Dimensity 900が約13万点を発揮しているので、こちらもCPUの性能と同様に後継製品と認識して購入すると残念な結果になると思います。
Dimensity 930のGeekbench 5における性能は、シングルコア性能が645点、マルチコア性能が1,921点となりました。Geekbench 5には基準点があり、Intel Core i3-8100のシングルコア性能が1,000点に設定されています。つまり、2,000点を算出すればIntel Core i3-8100の2倍の性能を有していると解釈できます。
シングルコア性能は645点で、Dimensity 920が808点、Dimensity 900が747点なので「劣った」性能を発揮しています。今回の比較を行っている3製品のCPUがCortex-A78で共通なので性能の下落がわかりやすいです。
マルチコア性能は1,921点で、Dimensity 920は2,284点、Dimensity 900は2,221点となっているため、こちらも「劣った」性能を発揮しています。
Dimensity 930はDimensity 920、Dimensity 900よりも低い性能が算出されましたが、プロセス技術はTSMCの6nmに基づくN6を採用し、CPUの動作周波数も低く設定されているため、2製品よりも高い省電力性を発揮すると思います。
そのため、性能を優先するのであればDimensity 920を、省電力性を優先する場合はDimensity 930を選択すると満足できるでしょう。ただ、何度も言いますが、Dimensity 930の名称には疑問符が浮かび、Dimensity 920よりも優れていると解釈する人が大半だと思うので、位置づけをDimensity 800 Familyに変更したりするべきだったのではないかと思います。