vivo iQOO Neo7 SEが初搭載したMediaTekのDimensity 8200のAnTuTu Benchmark v9とGeekbench 5の性能が判明したので、同じシリーズの製品のDimensity 8100、Dimensity 8000と比較します。
今回の比較で取り上げる性能はピーク時の性能を意味しており、安定して高い性能を継続的に発揮する安定性に関しては考慮していません。安定性について知りたい場合は、個人的な意見ですが搭載した製品を購入する他にないと考えています。
また、AnTuTu Benchmarkにおいては、開発を行っているAnTuTuがiOS搭載機とAndroid搭載機で発揮された性能を比較するのは不適当だと声明を発表しており、例えば、iOS搭載製品が100万点、Android搭載製品が200万点であったとしても優劣をつけることは出来ません。Geekbenchに関しては公式がクロスプラットフォームでの比較を認めていますので、発揮された性能を比較しても問題ありません。
Dimensity 8200の主なスペックは、製造プロセスがTSMC 4nm N4、CPUが3.10GHzで動作するCortex-A78を1基、3.00GHzで動作するCortex-A78を3基、2.00GHzで動作するCortex-A55を4基の1+3+4構成、GPUはMali-G610 MC6でクロック数は950MHzに設定されています。
CPUはCortex-A78を4基、Cortex-A55を4基を維持していますが、Cortex-A78は実質的に1+3構成になり、3.10GHzを1基、3.00GHzを3基となりました。簡単に言えばCortex-A78のクロック数が上昇したため、確実に性能が向上します。ただ、高効率なCortex-A55は据え置きなので、大幅に向上するというのはない可能性があります。
GPUはMali-G610 MC6を継続的に採用していますが、クロック数が950MHzに上昇しました。製造プロセスが微細化しクロック数も上昇しているので、こちらもCPUの性能と同様に確実に性能が向上します。
製造プロセスはSnapdragon 8 Gen 2が採用しているTSMC 4nm N4で、準旗艦向けが旗艦向けと同じプロセスノードを採用しています。CPUやGPUの構成が異なるので同じ性能を発揮することはないですが、準旗艦であっても進化を求めて微細化を推し進める発想は素晴らしいと思います。
Dimensity 8200のAnTuTu Benchmark v9における性能は、CPU性能が209,361点、GPU性能が337,345点、MEM性能が172,790点、UX性能が164,767点で、総合的な性能は884,263点となりました。vivoは90万点を発揮できると発表していましたが、これはやや特殊な環境で計測したラボスコアなので、実際の性能は本記事で取り上げた88万点程度となります。
CPU性能は209,361点で、Dimensity 8100との差は約4,000点となり、約2%ほどの成長で大きな性能向上は見られませんでした。要因として考えられるのは、高効率なCortex-A55のクロック数が据え置きなため、すべてのコアで何かしらの上昇がないと差がつきにくい可能性があります。
GPU性能は337,345点で、Dimensity 8100からの成長は約6%となりました。同じGPUを採用していながらクロック数を上昇させただけ、ということを鑑みると妥当な成長幅だと考えています。Dimensity 8200は高い性能に加えてVulkan APIを利用したレイトレーシングに対応しており、これは簡単に言うと光と影の表現がきれいになるので、より素晴らしいゲーム体験が提供されるでしょう。
Geekbench 5における性能は、シングルコア性能が1,051点、マルチコア性能は4,050点となりました。このベンチマークには基準点があり、2018年に発表されたIntel Core i3-8100が発揮するシングルコア性能が1,000点に設定されています。そのため、Dimensity 8200のシングルコア性能はCore i3-8100よりも高い性能を発揮していると言えます。
シングルコア性能は1,051点で、Dimensity 8100から約10%の成長に成功しました。これはCortex-A78のクロック数が2.85GHzから3.10GHzへ上昇したことが第一の理由で、第二の理由は製造プロセスの微細化によって電力効率が良くなったことが考えられます。ちなみに、Snapdragon 888 5Gは1,216点、Exynos 2100は1,075点なので、サムスン電子が2021年に発表した旗艦製品に匹敵する性能を持っています。
マルチコア性能は4,050点で、Dimensity 8100から約6%の成長に成功しました。シングルコア性能と同等の性能向上に成功しなかった要因として、高効率なCortex-A55が2.00GHzで据え置きなのが考えられます。こちらが少しでも上昇していればもう少し成長していたでしょう。ただ、この性能はSnapdragon 8 Gen 1の3,763点よりも高いので、昨年の旗艦製品を上回る性能を発揮しています。
Dimensity 8200はDimensity 8100の高クロック版になりますが、製造プロセスがTSMC 5nm N5からTSMC 4nm N4へ変更され、CPUやGPUだけでないカメラやディスプレイの部分の性能も向上しているので、後継製品と呼んでも差し支えないでしょう。
今のところ、vivo iQOO Neo7 SEが初搭載し、それしか搭載製品がありませんが、多くのメーカーが採用し搭載した機種を発表していくと思うので、「どの部分の優劣をつけるか」という戦いになるでしょう。その優劣はOSであったり、ディスプレイであったり、カメラであったり、急速充電であったり、価格であったりしますので、気になっているメーカーから発表された場合は製品のスペックをしっかりと見る必要があります。
そして、Dimensity 8200を搭載した製品の日本市場への参入の可能性は限りなく低いですが、中国市場では旗艦製品と同じく準旗艦製品で熾烈な戦いが行われていると認識する必要があるでしょう。日本では「旗艦かそれ以外か」という特殊な市場なのでこういった製品の情報がなかなか入ってこないですが、外の世界では覇権を握る戦いがあります。
搭載製品の価格は3000元(約59,000円)未満が多くなると考えており、初搭載機のvivo iQOO Neo7 SEの標準モデル(8+128GB)は2099元(約41,000円)に設定されています。この価格は中途半端なミドルレンジ製品よりも安く仕上がっているため、よほどの理由がなければ多くの人はこちらを選ぶでしょう。