スマートフォンの購入を検討するのに1つの指標として使用されるAnTuTuベンチマークですが、どの程度当てにしていますでしょうか。中国の多くの企業は新製品発表会でAnTuTuベンチマークスコアを公開することが多いですが、その公開されるスコアが異常に高くて疑問に思ったことはないでしょうか。
最近ではこの発表会で公開されるスコアや企業が関わっている形で発表されたスコアを実験室性能(ラボスコア)と揶揄されており、企業が全ての好条件のもと計測したスコアで当てにならないという意味を持っています。今回、この実験室性能がどの程度当てにならないのかを簡単に説明します。
まず実験室性能ですが、これは不名誉ながらMade by Japanを掲げたFREETELが発表したFREETEL KIWAMI 2の製品ページに書かれていることが非常にわかりやすいので紹介します。
FREETEL KIWAMI 2はMediaTek Helio X20を搭載しているスマートフォンで、FREETELによるとAnTuTuベンチマークのスコアは97,058点であったと記載されています。しかしよく見ると“※”が付与されており下にその意味が書かれています。そこにはなんと「※Antutu Benchmark 6.2.6使用。KIWAMI 2の不要なソフトはすべて無効化し、
本体を冷却しながら計測した際の最高値(2016年12月自社調べ)」と書かれています。
スマートフォンは様々なアプリをインストールしますし、冷却しながら使用するものではありません。そういうありえない状態で算出されたスコアには意味がないと言えるでしょう。
ちなみにDream Seedに記載されている「FREETELのフラッグシップ KIWAMI(極) 2の中身をレビュー ベンチマークのスコアは高いけど、デレステの画質は粗い」という記事では88,566点で、約9,000点の差があります。
冒頭で話しました通り中国では新製品発表会で当該機種のスコアを発表する傾向にあります。Xiaomiが有名でしょうか。
XiaomiはQualcomm Snapdragon 855を搭載しているXiaomi Mi 9の発表会にてスコアを公開し、その点数は387,851点です。AnTuTuベンチマークを開発・提供しているAnTuTuは1000件以上の計測から平均点を算出しそのデータを公開しており、2019年6月に掲示されたXiaomi Mi 9のスコアは370,884点です。17,000点の差は誤差の範囲には収まらないでしょう。
この他vivoによるゲーミングデバイスvivo iQOOは発表会で406,958点、nubiaのゲーミングスマートフォンnubia Red Magic 3は総経理を担当する人物が発表前に437,524点、LenovoのフラッグシップスマートフォンLenovo Z5 Pro GTは発表会で368,480点、XiaomiのサブブランドRedmiのフラッグシップスマートフォンRedmi K20 Proは発表会で388,803点だったと公開しています。
このスコアを2019年6月現在のAnTuTuのデータと照らし合わせたのが上のグラフです。
他社より優れていないといけない思いが暴走した形と言えます。Snapdragon 855を搭載しているのに29万点しか算出されないのであれば異常なので、そういう事を知るためにはAnTuTuベンチマークの存在は確かに大事です。今現在のSnapdragon 855の平均点は367,000点程度なのでこのあたりのスコアが出ていれば充分です。
企業が関わっている形で発表されたスコアは実験室性能(ラボスコア)であるとしっかりと肝に銘じ、このスコアで製品の善し悪しを判断しないようにしましょう。