2023年10月時点のKirin 9000sのベンチマークスコアが判明

2023年10月時点のKirin 9000sのベンチマークスコアが判明

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2023年8月末に突如発表・販売されたHUAWEI Mate 60 Proが初搭載したKirin 9000sの性能が明らかになったので、Kirin 9000やKirin 990 5Gなどと比較します。

 

Kirin 9000sはHuaweiが9月25日に開催した新製品発表会でも言及されなかった製品なので、正式に発表された製品ではありません。そのため、いくつかの製品がKirin 9000sを搭載していることが判明しているだけで、残念なことに現時点ではKirin 9000sがいったい何なのかもわかっていません。

 

この記事は2023年10月時点での性能です。今後、HuaweiやAnTuTuによって性能が向上する可能性があるため、「現時点ではこの性能だ」と理解してこの記事を読んでいただけると幸いです。

 

Kirin 9000sの仕様は、製造プロセスはSMIC 7nm N+2、CPUは最大2.62GHzで動作するTaiShan v200を1基、最大2.15GHzの不明なコアを3基、最大1.53GHzのCortex-A510 Refreshedを4基の1+3+4構成、GPUは最大750MHzのMaleoon 910 4CU、RAM規格はLPDDR5、内蔵ストレージ規格はUFS 3.1、モバイルデータ通信は5Gに対応し少なくともSub-6GHz帯をサポート、Wi-Fi 6やBluetooth 5.2にサポートします。

 

CPUはArmライセンスに基づいて自社開発したTaiShan (泰山) v200を1基、そしてもうひとつArmライセンスに基づいて自社開発した不明なコアを3基も採用したかなり異例の製品となっています。

 

いくつかのメディアでTaiShan v200と不明なコアを同じものとして扱われていますが、識別子が異なるので実は異なるものだと判明しています。この3基の不明なコアがTaiShanであることは間違いないですが、Huaweiが正式に発表しないので不明なままとなっています。

 

この自社開発CPUの大きな特徴はワンコアツースレッドを実現している点で、コア数としては1+3+4構成 (計: 8)ですがスレッド数は2+6+4構成 (計: 12)となります。そのため、Huaweiは制裁の間に技術開発を積みQualcommやMediaTekなどの競合他社を追い抜き、ひいてはAppleを上回ることに成功しました。

 

 

AnTuTu Benchmark v10 OBにおけるKirin 9000sの性能は、CPU性能は286,364点、GPU性能は0点、MEM性能は248,443点、UX性能は192,106点で、総合性能は726,913点となりました。

 

CPU性能はKirin 9000を上回り、約15.7%の向上に成功しました。TaiShan v200が最大2.62GHzで動作しCortex-A77が最大3.13GHzで動作するのでKirin 9000が優位に見えますが、Huaweiが自社開発したTaiShan v200の性能の高さがこの比較によってうかがえます。

 

GPU性能は0点で、これは計測に失敗して結果0点になったのではなく、GPUのMaleooon 910がAnTuTu v10に対応していないことが要因となって0点となっています。そのため、現時点ではこの自社開発GPUの性能は不明です。

 

ちなみに、GPU性能が0点で総合性能が726,000点を達成しているため、仮にKirin 9000よりも低い300,000点であったとしても総合的には上回ります。しかし、もしMali-G78より性能が下回る場合は自社開発GPUのMaleoon 910を搭載する意義はないため、このMaleoon 910の本来の性能はMali-G78よりも高いのではないかと推測します。

 

 

CPU性能の計測に長けているGeekbench 6におけるKirin 9000sの性能は、シングルコア性能が1,334点、マルチコア性能は4,189点となりました。

 

シングルコア性能はKirin 9000から約0.8%の向上に成功しました。残念なことに数値ではほぼ差がない状態ですが、最大3.13GHzと最大2.62GHzで動作することを考えると、Kirin 9000sはかなり効率が良いのではないかと考えています。

 

マルチコア性能はKirin 9000から約2.7%の向上に成功しました。これはTaiShan v200と不明なコアがワンコアツースレッドを採用していることで実質的に2+6+4構成になり、Kirin 9000よりも高い性能を発揮できました。

 

 

HuaweiがKirin 9000sの存在を頑なに明かさないのは不明ですが、度重なる制裁に負けず新しい製品を開発しHUAWEI Mate 60 Proに搭載したことは素直に称賛すべきでしょう。しかし、この製品の存在をもって「アメリカ合衆国の制裁が失敗した」と考えるのは時期尚早です。

 

CPUに関してはサーバー向けのものをモバイルデバイス向けに最適化しただけです。その最適化しただけでも素晴らしいですがまったく新しいCPUを生み出したわけではないため、まだまだ他の企業が優位に立っていることは間違いありません。

 

そしてGPUは自社開発したMaleoon 910を搭載していますが、発表当初は中国市場向けのアプリでさえ快適に動作しませんでした。現在はアプリの開発元がMaleoon 910に対応するために最適化を行ったのでいくつかのアプリは快適に動きますが、原神 (Genshin Impact)などの高負荷な要件を要求されると性能が低下するとの情報もあります。

 

Kirin 9000sを搭載した製品は現時点では中国市場のみで販売されていますが、国際市場向けの型番の存在が確認されています。そのため、中国に好意的な国や地域ではこのKirin 9000sを搭載した製品が販売される可能性があり、HiSiliconのシェアが徐々に増えるかもしれません。