Huaweiが新SoC「Kirin 9000SL」を静かに市場に投入、nova 12 Ultraが初搭載

Huaweiが新SoC「Kirin 9000SL」を静かに市場に投入、nova 12 Ultraが初搭載

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中国のHuaweiは2023年12月26日に新製品発表会を開催し、HUAWEI nova 12シリーズを発表しました。その中で最上位モデルとなるHUAWEI nova 12 Ultraが新SoCとなるKirin 9000SLを搭載し、その仕様がいくつか判明したので簡単にですがまとめます。

 

ただ、注意点としてHuaweiはnova 12 Ultraが新SoCのKirin 9000SLを搭載したと公式に発表しておらず、われわれ消費者となり得る人たちがそのKirin 9000SLを搭載していることを確認した状態です。

 

名称 Kirin 9000S

(2.62GHz Ver)

Kirin 9000S

(2.49GHz Ver)

Kirin 9000SL
CPU (8 Cores / 12 Threads)

1x TaiShan v200 (2T)

3x Unknown Cores (2T)

4x Cortex-A510 Refreshed

(4MB L3 Cache)

(8 Cores / 12 Threads)

1x TaiShan v200 (2T)

3x Unknown Cores (2T)

4x Cortex-A510 Refreshed

(4MB L3 Cache)

(6 Cores / 9 Threads)

1x TaiShan v200 (2T)

2x Unknown Cores (2T)

3x Cortex-A510 Refreshed

(2MB L3 Cache)

動作周波数 2.62GHz

2.15GHz

1.53GHz

2.49GHz

2.15GHz

1.53GHz

2.35GHz

2.15GHz

1.53GHz

GPU Maleoon 910 4CU Maleoon 910 3CU Maleoon 910 3CU
動作周波数 750MHz 750MHz 750MHz
NPU/DSP Da Vinci Architecture 3.0 (?)

1x Ascend Lite

1x Ascend Tiny

2x Vector Cores

Da Vinci Architecture 3.0 (?) Da Vinci Architecture 3.0 (?)
カメラ Kirin ISP 7.0 (?) Kirin ISP 7.0 (?) Kirin ISP 7.0 (?)
リフレッシュレート ? ? ?
エンコード/デコード ? ? ?
RAM LPDDR5 (3200MHz)

4MB System Level Cache

LPDDR5 (3200MHz)

4MB System Level Cache

LPDDR5 (3200MHz)

4MB System Level Cache

ストレージ UFS 3.1 UFS 3.1 UFS 3.1
Wi-Fi Wi-Fi 6 (11ax) Wi-Fi 6 (11ax) Wi-Fi 6 (11ax)
Bluetooth Bluetooth 5.2 / BLE Bluetooth 5.2 / BLE Bluetooth 5.2 / BLE
位置情報 GPS, A-GPS, GLONASS, 北斗 (BeiDou), Galileo, QZSS, NavIC GPS, A-GPS, GLONASS, 北斗 (BeiDou), Galileo, QZSS, NavIC GPS, A-GPS, GLONASS, 北斗 (BeiDou), Galileo, QZSS, NavIC
通信 統合: Balong Modem 統合: Balong Modem 統合: Balong Modem
充電規格 ? ? ?
製造プロセス SMIC 7nm N+2 SMIC 7nm N+2 SMIC 7nm N+2
型番 Hi36A0-CN Hi36A0-CN Hi36A0-CN

Kirin 9000SLの主な仕様は、製造プロセスはSMICの7nmプロセスに基づくN+2を採用、CPUはBigコアとMiddleコアに自社開発したものを採用、GPUも同様に自社開発したものを採用しています。

 

Kirin 9000SLは2023年8月末に突如として発表されたHUAWEI Mate 60シリーズが搭載しているKirin 9000Sや、HUAWEI MatePad Pro 13.2"と11"が搭載しているKirin 9000Sとは異なってCPUのコア数に違いがあります。

 

大きな違いは、高性能コアの不明なコアが3基から2基に削減 (実質的には欠如)、高効率コアのCortex-A510 Refreshedが4基から3基に削減 (欠如)しています。そのため、Kirin 9000SLの末尾の「L」は低いを意味する「Low」を意味しているでしょう。

 

また、クロック周波数も調整されており、Kirin 9000SはMate 60シリーズが搭載しているものは最大2.62GHzに設定、MatePad Pro 13.2"と11"が搭載しているものは最大2.49GHzに設定され、今回発表されたKirin 9000SLはさらに低い2.35GHzに設定されています。

 

GPUは独自開発のMaleoon 910を採用していますが、2.62GHz版のKirin 9000Sはコンピュートユニット数4CUなのに対して、2.49GHz版のKirin 9000Sは3CU、今回のKirin 9000SLも2.49GHz版と同様に3CUに設定されています。

 

クロック周波数はすべて等しく最大750MHzに設定されていますので、Kirin 9000SLのGPU性能は2.49GHz版Kirin 9000Sと同じになるでしょう。1CU多い2.62GHz版のKirin 9000Sには確実に及びません。

 

NPUはこういった場合なにかが削減 (欠如もしくは無効化)されているはずですが、HuaweiがそもそもKirin 9000Sの存在を公にしていないため、どこまで削減されているのは現時点では不明です。ただ、過去の例から考えるとAscend Liteのみが動作しているのではないかと思います。

 

モバイルデータ通信は5Gに対応していると考えられますが、HuaweiはKirin 9000Sおよび今回のKirin 9000SLを搭載した製品では5Gに接続したと思われる場合に、アンテナピクトの通信規格が表示されなくなっているため、実際に5Gに対応しているのか不明です。

 

しかし、4Gや5Gなどの通信に詳しい専門家によるとKirin 9000Sを搭載したMate 60シリーズはスピードテストで4Gの理論値を突破していると報告しているため、Kirin 9000SとKirin 9000SLは5Gに対応していると考えるのがベストでしょう。この表記問題はアメリカのトランプ政権下から行われている制裁が関係していると思います。

 

製造プロセスは中国のSMICが製造しており、7nmプロセスに基づくN+2技術を採用していると考えています。SMICのN+2はアメリカの制裁によってEUV (極端紫外線)露光ではなくDUV (深紫外線)露光を採用しており、TSMCやサムスンファウンドリなどの競合他社かなり歩留まりが低いと考えられています。

 

実際、複数のKirin 9000Sといくつか削減されたKirin 9000SLが存在していることを考えると、決して歩留まりがいい状況ではないと思えます。ただ、昨今のSDGsを考えると規格不適合品を活用しているのは素晴らしいことだと言えるでしょう。

 

Kirin 9000SLを初搭載したHUAWEI nova 12 Ultraは2023年12月26日に発表され、2024年1月12日に販売を開始します。同日に発表されたHuawei nova 12とnova 12 Proは2024年1月5日に販売されることを考えると、販売までそこそこの日数があるように感じます。

 

価格は内蔵ストレージの容量が512GBモデルが4699元 (約93,500円)、1TBモデルが5499元 (約110,000円)に設定されており、性能を鑑みると強気のやや高い価格設定です。しかし、中国人のHuaweiに対する愛は日本人の想像を超えるので、この強気の設定でも問題ありません。

 

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