中国では多くの大きな企業が自社開発チップの研究開発を停止もしくは終了している状況にありますが、急成長中のHonorが半導体設計が可能な完全子会社を設立したことが判明しました。
中国メディアの毎日経済新聞は2023年6月1日、Honor Device (栄耀終端)が100%出資の完全子会社である上海栄燿智慧科技開発有限公司を設立を確認したと報じました。同企業の事業範囲は電子製品の販売やソフトウェアの開発、人工知能の理論とアルゴリズムのソフトウェア開発、人工知能応用ソフトウェア開発、人工知能基礎ソフトウェアの開発など多岐にわたっていますが、その他の事業として集積回路の設計、集積回路チップの設計とサービスが含まれています。
このことについて同メディアがHonorに対して回答を求めたところ、5月31日の夜に「上海栄燿智慧科技開発有限公司は上海に所在するHonorの研究機関であり、中国にある同社の研究センターのひとつである」との回答があったと明らかにしました。この新たに設立した完全子会社は主に、通信や写真、その他のソフトウェアの開発を行うようです。
今回設立された子会社が半導体を設計する可能性は低いですが、Honor CEO (最高経営責任者)の趙明 (Zhao Ming)氏は、HONOR 90シリーズの発表会の後に開かれた記者会見で中国国内の携帯電話会社が自社開発チップをやめたことを問われると「Honorはニーズに応じてチップ戦略を策定する」と述べています。また、同氏は「Honorは製品の仕様に応じてISPチップやRFチップを自社開発するか調達するか選択する」と明らかにしており、自社開発チップに関しては否定的な立場にある企業ではありません。
ちなみに、Honorは2023年3月に開催した新製品発表会で自社開発チップとなるRF増強チップのHONOR C1を搭載したHONOR Magic5 Proを発表しており、Honorが現在の市場に出回っているチップでは製品の仕様を満たさないとして自社開発チップを開発した過去があります。
このHONOR C1は地下駐車場や地下室、ショッピングなどの通信の安定しない場所でも、安定して高速な通信を実現するためのチップです。これは興味深いことにセルラー通信だけでなくWi-Fi通信にも利点があり、後者の場合、通信速度が最大200%も増加すると発表されました。
Honorは急速にシェアを拡大している中国の企業ですが、残念ながら日本市場には参入しておらず、あまり馴染みのない企業となっています。過去にはHUAWEIのサブブランドとして日本市場に参入しましたが、アメリカ合衆国によるHUAWEIへの制裁が行われて以降の新体制となってからは中国市場とヨーロッパ市場を主な市場として捉えています。
近くヨーロッパ市場ではHONOR 90とHONOR 90 Proで構成されるHONOR 90シリーズの発表を予定しており、さらに攻勢を強めてシェアの拡大を狙っています。標準版となるHONOR 90は最大2.52GHzのSnapdragon 7 Gen 1を搭載した製品で、中国では最低容量の12GB+256GBモデルが2499元 (約49,800円)に設定されています。