中国のHuaweiは2026年9月7日に新製品発表会を開催し、新OSのHarmonyOS 7と新製品のHUAWEI Mate XT 2を発表しました。さらに同社はHUAWEI Mate XT 2に新SoCとなるKirin 9050 Proを搭載していることを明らかにし、いくつかの仕様を公開したのでまとめました。
| 名称 | Kirin 9050 Pro | Kirin 9030 Pro | Kirin 9020 |
| CPU | LinxiCore CPU
1x Prime 2x Performance 4x Efficiency 2x Little (9 Cores / 16 Threads) (L3 Cache: 8MB) |
LinxiCore CPU
1x Prime 4x Performance 4x Little (9 Cores / 14 Threads) (L3 Cache: 12MB) |
LinxiCore CPU
1x Prime 3x Performance 4x Little (8 Cores / 12 Threads) (L3 Cache: 10MB) |
| 識別子 | 72_3335
72_3400 72_3400 72_3365 |
72_3334
72_3399 72_3364 |
72_3333
72_3398 72_3363 |
| リビジョン | r2p0
r2p0 r2p0 r2p0 |
r2p0
r2p0 r2p0 |
r2p1
r2p1 r2p1 |
| 動作周波数 | 3.10GHz
2.70GHz 2.20GHz 1.75GHz |
2.75GHz
2.27GHz 1.72GHz |
2.50GHz
2.15GHz 1.60GHz |
| GPU | Maleoon 955 6CU | Maleoon 935 6CU | Maleoon 920 4CU |
| 動作周波数 | 1056MHz | 933MHz | 840MHz |
| NPU/DSP | Da Vinci NPU
4x Ascend Prime |
Da Vinci NPU
1x Ascend Lite 2x Ascend Tiny |
Da Vinci NPU
1x Ascend Lite 1x Ascend Tiny |
| カメラ | Kirin ISP 10.0 | Kirin ISP 9.0 | Kirin ISP 8.0 |
| リフレッシュレート | ? | ? | ? |
| エンコード/デコード | ? | ? | ? |
| RAM | 4x16-bit LPDDR5X (10667Mbps)
(System Level Cache: 12MB) |
4x16-bit LPDDR5X (9600Mbps)
(System Level Cache: 12MB) |
4x16-bit LPDDR5X (9600Mbps)
(System Level Cache: 8MB) |
| ストレージ | UFS 4.0 | UFS 4.0 | UFS 4.0 |
| USB | USB 3.1 Gen 1 | USB 3.1 Gen 1 | USB 3.1 Gen 1 |
| Wi-Fi | Wi-Fi 7 (11be) | Wi-Fi 7 (11be) | Wi-Fi 7 (11be) |
| Bluetooth | Bluetooth 6.0 | Bluetooth 6.0 | Bluetooth 5.2 |
| NearLink | NearLink E2.0 | NearLink E2.0 | NearLink E1.0 |
| 位置情報 | GPS, GLONASS, BeiDou, Galileo, QZSS, NavIC
(GNSS: L1 / L5) |
GPS, GLONASS, Galileo, QZSS, NavIC
(GNSS: L1 / L5) |
GPS, GLONASS, Galileo, QZSS, NavIC
(GNSS: L1 / L5) |
| 通信 | 統合: Balong 5A Modem | 統合: Balong 5A Modem | 統合 Balong 5A Modem |
| 充電規格 | HUAWEI SuperCharge | HUAWEI SuperCharge | HUAWEI SuperCharge |
| 製造プロセス | SMIC 7nm N+3 / 7nm N+2 | SMIC 7nm N+3 | SMIC 7nm N+2 |
| 型番 | Hi36E0-GPCV100-CN | Hi36D0-GFCV100-CN | Hi36C0-GFCV110-CN |
| 公式サイト | - | - | - |
新たに発表されたKirin 9050 Proの主な仕様は、製造プロセスがSMIC 7nm N+3と7nm N+2を組み合わせ、CPUはLinxiCoreを採用し最大3.10GHzで動作するPrimeと最大2.70GHzで動作するPerformanceと最大2.20GHzで動作するEfficiencyと最大1.75GHzで動作するLittleを1+2+4+2構成で採用、GPUは最大1056MHzで動作するMaleoon 955 6CU、RAM規格はLPDDR5X、内蔵ストレージ規格はUFS 4.0、モバイルデータ通信はHuaweiが提唱する5Aをサポートしています。
Kirin 9050 Proを搭載したHUAWEI Mate XT 2の総合的な性能は、Kirin 9020を搭載したHUAWEI Mate XTsと比較して42%も向上したと明らかにしました。この性能はKirin 9050 ProとKirin 9020を単純に比較したものではなく、搭載している独自OSのHarmonyOSの違いによる快適度や筐体の散熱機構による快適度の寄与なども含まれているので、この点には注意が必要です。
実際、今回の比較ではHUAWEI Mate XT 2はHarmonyOS 7.0を搭載しているのに対し、HUAWEI Mate XTsはHarmonyOS 5.1を搭載しています。両OSの間にはHarmonyOS 6が存在していますので、この比較によって算出された数値はその世代をスキップした状態であることは知っておく必要があります。
Huaweiによると、Kirin 9050 Proは独自開発したLinxiCore CPUを搭載しています。これまでKirin 9000S以降で採用された独自開発のCPUの名称はTaiShan (泰山)だと考えられていましたが、ついに正式名称が発表されLinxiCore (霊犀)と判明しました。実は「LinxiCore」はKirin 9000Sの時点で存在が判明していましたが、その時の流れでは自動車向けに採用しているCPUではないかと考えられていました。しかし、その考えは2026年9月に公式によって否定され、Kirin 9000SからLinxiCoreを採用しており、Kirin 9050 Proに至るまで開発を続けていることが明らかになりました。
Kirin 9050 ProのCPU性能については、HarmonyOSの違いによる差を考慮しないで単純にKirin 9020と比較してシングルコア性能は24%の向上、マルチコア性能は52%の向上に達成したと発表されました。素晴らしい性能向上を達成しているので文句はありませんが、HUAWEI Mate XTsがKirin 9020を搭載しているので仕方がないものの、Kirin 9030 Proと比較した数値が欲しかったのが本音ではあります。
Kirin 9050 Proが搭載しているLinxiCore CPUは1+2+4+2構成といった非常に珍しい構成を採用しており、Huaweiによると重い処理の際にはPrimeとPerformanceが進んで動作し、マルチタスク操作が必要なときはEfficiencyが動作、日常的な利用においてはLittleが動作するように設計されているようです。競合他社のQualcommやMediaTekは効率的な動作のみを担当するリトルコアを採用しない方向に進んでいますが、Huaweiはまだ必要と感じているのか採用を続けています。
ちなみに、HuaweiはPerfomanceとEfficiencyが別物のように見せていますが、識別子とリビジョンが全く同じなのでコアそのものは同じです。ただ、キャッシュの量が異なると対応できる動作が異なりますので、コアそのものは同じで違う役割を持たせていると認識するだけでいいです。
この新しいLinxiCore CPUを採用したことで、大容量のファイルを開く時間が50%高速になり、マルチタスク時のレスポンスが35%も向上しました。HUAWEI Mate XT 2はフォルダブル製品で画面上にたくさんのアプリを開いたり、大容量ファイルを扱ったりすると思うのでこの部分の向上は大きいです。
GPUはMaleoon 955を搭載しており、Kirin 9020と比較してレンダリング性能が142%も向上し、レイトレーシング性能は50MRPSに達すると発表しました。レンダリング性能に関してですが、特定のアプリで60分60FPSを達成したや30分120FPSを達成したといった発表はされていないので、実際どれほどすごいのかは不明です。ただ、Kirin 9030 Proの時点で原神や崩壊:スターレイルの高い設定で快適に動作している様子がうかがえるので、開発が難しいとされるGPUの開発に成功している事実は脅威の開発力と言えます。
Huaweiによると50MRPSのレイトレーシング性能は、よりリアルでより没入できる体験を生み出すようです。ただ、このMRPSの指標は非常にマイナーで、過去にNVIDIAがQuadro RTX 8000のレイトレーシング性能で10GRPSの数値を発表したことがあるものの、それ以降はほとんど聞きません。また、現在におけるモバイルデバイス向けSoCのレイトレーシング性能は3DMarkを利用して算出するのにそれをしないことを考慮すると、まだまだ競合他社のSoCとは差があるのかもしれません。
新発表のKirin 9050 Proは新しいDa VinciアーキテクチャのNPUを搭載しており、業界で初めてオンデバイス環境でMoE型マルチモーダルLLMの実装に成功しています。その新しいNPUによって、総パラメータ数30億・アクティブ時20億パラメータの「Pangu 30B-A2B」をオンデバイスで実行できるようです。
Kirin 9050 ProはBalong Modemを統合しており、Kirin 9020から衛星を利用した通信が成功する確率が42%も向上したようです。衛星通信は宇宙にある人工衛星を通信に利用するので地上の基地局と比較して距離が非常に遠く、通信に失敗することが多々あります。そのため、この成功率を高めるのは重要です。
さらにKirin 9050 Proは衛星通信の成功率を高める他に、データ通信や音声通話などが出来る天通 (Tiantong)とショートメッセージサービスが利用できる北斗 (BeiDou)への接続スピードが40%も向上しました。衛星への接続の成功率を高め、接続にかかる時間も短くするのは利便性の向上に繋がります。
そして、モデムの進化によってHuaweiが提唱する5Aもより快適になり、高速鉄道に乗っている間にビデオ通話をした際のカクつきがHUAWEI Mate XTsと比較して25%も軽減され、ある企業の17 Pro Maxと比較して42%も軽減されました。Xの企業名であればXiaomiですが、Aの企業名なのでiPhone 17 Pro Maxと比較しているでしょう。
HUAWEI Mate XT 2の散熱機構はHUAWEI Mate XTsよりも効率を高めて、ゲームプレイ時の温度が2.5℃下がると発表されました。最近のアプリ・ゲームは非常に高負荷なものが増えており、それに伴って発熱が起きやすくなっているのでこの部分の改善は嬉しい人も多いのではないでしょうか。
そして、セキュリティに関してはKirin 9050 Pro自体にMSP (Mobile Security Processor)を搭載した上、HUAWEI Mate XT 2そのものにeSE (embedded Secure Element)を搭載することで防御を高めています。
この発表会で印象的だったのは、Kirin 9050 Proを発表した常務取締役のリチャード・ユー (Richard Yu / 余承東)氏が英語で「Kirin 9050 Pro, Super Faster, Super Intelligent, Super Cool, The most powerful Kirin chip ever!」と発表したことでしょうか。中国で発表会を開催しているのにわざわざ英語で発表する意味はないので、この発言は「外」から見ている人に対してアピールしています。
Huaweiはトランプ政権・バイデン政権のアメリカ合衆国の制裁によってTSMCでの製造が不可能になり、事業を続けるために競合他社のQualcommのSnapdragonを供給した時期もありました。そんな苦難な時期もありましたが、SMICの協力を経て第一線級とは言えないもののかなり高性能なKirinを製造することが可能になり、失ったシェアを取り戻し復権が始まっています。これから「外」に向けてどんな動きをするのかわかりませんが、技術的な問題は解決して前に進んでいくだけのフェーズなので競合他社は戦々恐々でしょう。
HUAWEI Mate XT 2 ULTIMATE DESIGNは9月12日より中国で販売を開始し、価格は16GB+256GBモデルが19999元 (約474,0000円)、16GB+512GBモデルが21999元 (約521,000円)、16GB+1TBモデルが23999元 (約568,5000円)、プライバシーディスプレイの防窺版は16GB+1TBモデルが24999元 (約592,000円)に設定されています。
また、スタイラスペンが付属する手写筆套装の防窺版は9月23日より販売を開始し、価格は29999元 (約711,000円)に設定されています。




















