アメリカ合衆国のQualcommは現地時間2023年6月27日、新製品としてSnapdragon 4 Gen 2を発表しました。Snapdragon 4シリーズに属するSoCで、位置としてはエントリーからミドルレンジとなっています。
名称 | Snapdragon 4 Gen 2 | Snapdragon 4 Gen 1 | Snapdragon 480 5G |
CPU | Kryo
2x Cortex-A78 6x Cortex-A55 |
Kryo
2x Cortex-A78 6x Cortex-A55 |
Kryo 460
2x Cortex-A76 6x Cortex-A55 |
動作周波数 | 2.21GHz + 1.96GHz | 2.02GHz + 1.80GHz | 2.04GHz + 1.80GHz |
GPU | Adreno 613 | Adreno 619 | Adreno 619 |
動作周波数 | ? | 650MHz | 650MHz |
NPU/DSP | - | Hexagon | Hexagon 686 |
カメラ | Dual 12-bit Spectra ISP
1億800万画素 or 3200万画素(ZSL) or 2x1600万画素(ZSL) |
Triple 12-bit Spectra ISP
1億800万画素 or 3200万画素(ZSL) or 2500万画素+1300万画素(ZSL) or 3x1300万画素(ZSL) |
Triple 12-bit Spectra 345 ISP
6400万画素 or 2500万画素+1300万画素(ZSL) or 3x1300万画素(ZSL) |
リフレッシュレート | 120Hz(FHD+)
120Hz(HD+) |
120Hz(FHD+)
120Hz(HD+) |
120Hz(FHD+)
120Hz(HD) |
エンコード/デコード | Encode: 1080p@60fps H.265, H.264
Decode: 1080p@60fps H.265, VP9 Slow-mo: 720p@120fps |
Encode: 1080p@60fps H.265, H.264
Decode: 1080p@60fps H.265, H.264, VP9 Slow-mo: 720p@120fps |
Encode: 1080p@60fps H.265, H.264
Decode: 1080p@60fps H.265, H.264, VP9, VP8 Slow-mo: 720p@120fps |
RAM | LPDDR5(3200MHz)
LPDDR4X(2133MHz) |
LPDDR4X(2133MHz) | LPDDR4X(2133MHz) |
ストレージ | UFS 3.1 | UFS 2.2
eMMC 5.1 |
UFS 2.2
eMMC 5.1 |
Wi-Fi | Wi-Fi 5 (11ac) | Wi-Fi 5 (11ac) | Wi-Fi 6 ready (11ac Wave 2) |
Bluetooth | Bluetooth 5.1 | Bluetooth 5.2 | Bluetooth 5.1 |
位置情報 | GPS, Galileo, GLONASS, BeiDou (北斗), QZSS, NavIC | GPS, Galileo, GLONASS, BeiDou (北斗), QZSS, NavIC | GPS, Galileo, GLONASS, BeiDou (北斗), QZSS, NavIC |
通信 | 統合: Snapdragon X61 5G Modem
5G: Sub-6GHz (DL: 2.5Gbps/UL: 900Mbps) |
統合: Snapdragon X51 5G Modem
5G : Sub-6GHz (DL: 2.5Gbps/UL: 900Mbps) 4G: LTE (DL: 800Mbps/UL: 210Mbps) |
統合: Snapdragon X51 5G Modem
5G: Sub-6GHz/mmWave (DL: 2.5Gbps/UL: 660Mbps) 4G: LTE (DL: 800Mbps/UL: 210Mbps) |
充電規格 | Quick Charge 4+ | Quick Charge 4+ | Quick Charge 4+ |
製造プロセス | Samsung 4nm 4LPX | TSMC 6nm N6 | Samsung 8nm 8LPP |
型番 | SM4450 | SM4375 | SM4350 |
Snapdragon 4 Gen 2の主なスペックは、製造プロセスがSamsung 4nm 4LPX、CPUが最大2.21GHzのCortex-A78を2基と最大1.96GHzのCortex-A55を6基の2+6構成、GPUはAdreno 613、RAM規格はLPDDR5、内蔵ストレージ規格はUFS 3.1、5G通信に対応しSub-6GHz帯をサポート、この他の通信はWi-Fi 5、Bluetooth 5.1をサポートします。
Snapdragon 4 Gen 2は名称を見てわかる通り、Snapdragon 4 Gen 1の正統な後継SoCとなります。ちなみに、Snapdragon 4 Gen 1は採用企業が少なく、Xiaomi (Redmi)やvivo (iQOO)、China Telecom (中国電信)しかありません。
製造プロセスはSamsung 4nm 4LPXで、一部のメディアではもう少し優れたSF4E (旧4LPE)やSF4 (旧4LPP)と予想されていますが、韓国の情報通によってQualcommが4nm 4LPXよりも先の製造プロセスを採用したことは否定されているため、過度な発熱や性能の低下などの数々の問題を引き起こしたSnapdragon 8 Gen 1と同じ4LPXで製造されたことが確定しています。
CPUは新しいKryoで、中身はCortex-A78を2基、Cortex-A55を6基の2+6構成を採用しています。Qualcommはそれぞれ2.2GHzと2GHzと表記していますが、実際には2.21GHzと1.96GHzで、後者はやや無理がある表現ではないかと考えています。Snapdragon 4 Gen 1からクロック数が向上したので、Qualcommは最大10%の性能向上に成功したと発表しています。
GPUは新しいAdrenoですが、中身はAdreno 613と判明しています。Snapdragon 480 5GとSnapdragon 4 Gen 1がAdreno 619を採用しているので数字が低くなっており、Qualcommの命名規則では基本的に数字が大きい方が性能が優れるので、Snapdragon 4 Gen 2のGPUは従来製品と比較して性能が下がる可能性があります。実際、大手メディアのAndroid AuthorityはQualcommに取材を行ったところ、昨年の製品 (Snapdragon 4 Gen 1)と比較してわずかに劣っていることを認めたと記事に書いています。
DSPのHexagonは搭載されていません。このDSPはCPU計算の負荷を軽減したり、機械学習や画像処理を行いますが、Snapdragon 4 Gen 2はこのHexagonが搭載されていませんので、そういった事象ではCPUがその役割を担うことになります。
注目ポイントはカメラで、ISPの性能が下がりました。Snapdragon 4 Gen 1はTriple 12-bitでしたが、後継SoCのSnapdragon 4 Gen 2はDual 12-bitに変更され、前者は3つのカメラを同時に並行処理できますが、後者は2つのカメラを同時に並行処理するようになります。ただ、前者の性能はSnapdragon 4シリーズの位置を考えるとオーバーなものであったため、シリーズの位置を正しく再定義したように考えることもできます。
RAM規格はSnapdragon 4シリーズとして始めてLPDDR5規格をサポートしました。しかし、このSoCはエントリーからミドルレンジの製品が採用・搭載するので、LPDDR5規格のRAMを搭載した製品が出る可能性は現時点ではかなり低いです。
内蔵ストレージ規格も同様にハイエンド級のUFS 3.1規格をサポートしていますが、この価格帯の製品に搭載する利点がありませんので、実際にはUFS 2.2規格の内蔵ストレージを搭載した製品が発表されると考えています。
通信面はSnapdragon X61 5G Modemを搭載し、Sub-6GHz帯をサポートしています。2021年に発表された日本市場でも目にするSnapdragon 480 5GはmmWave (ミリ波)もサポートしていましたが、Snapdragon 4 Gen 1からサポートしないようになりました。サポートしていることでの利点はありますが、mmWaveを商用化した国と地域が少なく、利用できるエリアも非常に狭いので、Snapdragon 4シリーズの位置を考えるとあまり悲観的になる必要はないと思います。
Snapdragon 4 Gen 2は、QualcommによるとRedmiとvivoが採用すると明らかにしており、搭載した製品の登場は2023年下半期(7月-12月)としています。ちなみに、Qualcommは採用する企業はRedmiとvivo「など」と表現しており、その他の企業もSnapdragon 4 Gen 2を採用したいと考えていることが伺えます。
Snapdragon 4 Gen 1はRedmi Note 12 5G、iQOO Z5 Lite 5G、Maimang 20 5Gと採用した製品が非常に少なかったですが、Snapdragon 4 Gen 2はもう少し採用した製品が増える可能性があります。
日本市場でのSnapdragon 4 Gen 2を搭載した製品の発表・販売ですが、現在はエントリーからミドルレンジの製品はMediaTekのSoCを搭載する例が増えているので、円安の傾向が続く場合は難しいのではないかと考えています。