Qualcommは2022年の旗艦製品向けにSnapdragon 8 Gen 1とSnapdragon 8+ Gen 1を提供していますが、今回、日本時間の2022年11月23日に、新たにSnapdragon 8+ Gen 1の低クロック版が登場しました。
ただ、この低クロック版には具体的な名称はなく、Snapdragon 8+ Gen 1として製品に搭載されているので、搭載製品のスペック表を注意深く見る必要が生まれました。
名称 | Snapdragon 8+ Gen 1 (New) | Snapdragon 8+ Gen 1 (Normal) | Snapdragon 8 Gen 1 |
CPU | Kryo
1x Cortex-X2 3x Cortex-A710 4x Cortex-A510 (6MB sL3 Cache) |
Kryo
1x Cortex-X2 3x Cortex-A710 4x Cortex-A510 (6MB sL3 Cache) |
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動作周波数 | 3.00GHz+2.50GHz+1.80GHz | 3.19GHz+2.75GHz+2.02GHz | 3.00GHz+2.50GHz+1.79GHz |
GPU | Adreno 730 | Adreno 730 | |
動作周波数 | 900MHz | 900MHz | 818MHz |
NPU/DSP | 7th Gen Hexagon | 7th Gen Hexagon | |
カメラ | Triple 14-bit Spectra ISP
2億画素 or 1億800万画素(ZSL) or 6400万画素+3600万画素(ZSL) or 3x3600万画素(ZSL) 3.2 Gigapixels per Second |
Triple 14-bit Spectra ISP
2億画素 or 1億800万画素(ZSL) or 6400万画素+3600万画素(ZSL) or 3x3600万画素(ZSL) 3.2 Gigapixels per Second |
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リフレッシュレート | 60Hz(4K)
144Hz(QHD+) |
60Hz(4K)
144Hz(QHD+) |
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エンコード/デコード | Encode: 8K@30FPS/4K@120FPS H.265, VP9
Decode: 8K@30FPS/4K@120FPS H.264, H.265, VP8, VP9 HDR10+, HDR10, HLG, Dolby Vision Slow-mo: 720p@960FPS |
Encode: 8K@30FPS/4K@120FPS H.265, VP9
Decode: 8K@30FPS/4K@120FPS H.264, H.265, VP8, VP9 HDR10+, HDR10, HLG, Dolby Vision Slow-mo: 720p@960FPS |
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RAM | LPDDR5(3200MHz) | LPDDR5(3200MHz) | |
ストレージ | UFS 3.1 | UFS 3.1 | |
Wi-Fi | Wi-Fi 6/Wi-Fi 6E (3.6Gbps) | Wi-Fi 6/Wi-Fi 6E (3.6Gbps) | |
Bluetooth | Bluetooth 5.3 | Bluetooth 5.3 | |
位置情報 | GPS, Glonass, BeiDou, Galileo, QZSS, NavIC | GPS, Glonass, BeiDou, Galileo, QZSS, NavIC | |
通信 | 統合: X65 5G Modem
Sub-6GHz/mmWave (10Gbps/3Gbps) |
統合: X65 5G Modem
Sub-6GHz/mmWave (10Gbps/3Gbps) |
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充電規格 | Quick Charge 5 | Quick Charge 5 | |
製造プロセス | TSMC 4nm N4 | Samsung 4nm 4LPX | |
型番 | ? | SM8475 | SM8450 |
低クロック版のSnapdragon 8+ Gen 1の主なスペックは、製造プロセスがTSMC 4nm N4、CPUがKryoで具体的には3.00GHzで動作するCortex-X2を1基、2.50GHzで動作するCortex-A710を3基、1.80GHzで動作するCortex-A510を4基の1+2+4構成、GPUはAdreno表記ですが実際はAdreno 730でクロック数は900MHz、RAM規格はLPDDR5、内蔵ストレージ規格はUFS 3.1、5G通信はSub-6GHz帯とmmWave対応、Wi-Fi規格はWi-Fi 6E対応、Bluetooth規格はBluetooth 5.3対応、急速充電はQuick Charge 5に対応しています。
CPUは通常のSnapdragon 8+ Gen 1と比較して、高性能なCortex-X2が3.00GHzへ、高性能なCortex-A710が2.50GHzへ、高効率なCortex-A510が1.80GHzへ下げられています。これによって性能が下がるのは確実ですが、低クロックに仕上がった分だけ通常のSnapdragon 8+ Gen 1より発熱が抑えられる可能性があります。
そして、Samsung 4nmで製造されたSnapdragon 8 Gen 1とCPUのクロック数が似ていますが、見分けるコツとしてCortex-A510のクロック数が異なっており、低クロック版のSnapdragon 8+ Gen 1は1.80GHz、Snapdragon 8 Gen 1は搭載1.79GHzで0.1GHzの差があるため、この部分で見抜いてほしいと思います。
GPUはAdreno 730を搭載し、クロック数は通常のSnapdragon 8+ Gen 1と同じ900MHzに設定されています。そのため、GPUの性能は余程の限りがない限り、通常版と低クロック版は同じ性能を発揮するでしょう。どちらかというと、CPUのクロック数が下がったことで発熱が起きにくく、スロットリングが発生しにくくなると思うので、通常版よりも安定して高い性能を発揮すると見ています。
その他の部分には変更点はなく、通常版と低クロック版の違いはCPUのクロック数のみとなります。そのため、発揮する性能はSnapdragon 8+ Gen 1とSnapdragon 8 Gen 1の間に収まるのですが、新しい命名規則によって適切な名称が見つからなかったのか、何故かSnapdragon 8+ Gen 1として市場に存在しています。
そのため、3.19GHz版と3.00GHz版のSnapdragon 8+ Gen 1が混在する状況となっており、搭載している製品がどちらを搭載しているのか見極めるためにスペック表をしっかりと見る必要が生まれました。うれしいことに多くの企業では最大クロック数を掲載するため、どちらを搭載しているのかはちゃんと見ればわかります。とは言っても、ややこしいことに変わりはありません。
記事を作成した11月25日現在、HONOR 80 Proが初搭載、OPPO Reno9 Pro+が次に採用しています。これらの製品は、最大クロック数が3.0GHz、もしくは2.995GHz(正式な数値)を記載しているため、スペック表を見逃さなければ低クロック版を搭載しているとわかります。ただ、そういった情報を気にするのはこの業界に興味がある我々だけで、多くの人は通常版のSnapdragon 8+ Gen 1を搭載していると思って購入するため、何かしらの名称をつけるべきだったのではないかと考えています。
ただ、こういった動きはQualcommだけでなく、携帯電話業界で天下を取ったと言っても過言ではないAppleは、同じ名称のSoCで仕様が異なる展開を行っているため、Qualcommだけを敵対視するのではなく、このような現状に不満がある場合は、そういった業界に「違う仕様の製品なら違う名称をつけろ」と声を上げる必要があるかもしれません。