台湾のMediaTekは2022年11月8日に中国で新製品発表会を開催し、Dimensity 9000の後継製品のDimensity 9200を発表しました。競合他社と比較して発表する日にちが早いため、素晴らしい数の「初」が詰まっています。
従来製品のDimensity 9000は競合他社製品のSnapdragon 8 Gen 1と互角に戦い、ピーク時の性能では分が悪い時もありましたが、安定した性能の発揮では圧倒的な優位点がありました。今回のDimensity 9200に関してはどの程度の優位点があるのかわかりませんが、素晴らしい製品として市場を活性化するのは間違いないと考えています。
名称 | Dimensity 9200 | Dimensity 9000 |
CPU | 1x Cortex-X3
3x Cortex-A715 4x Cortex-A510 (2022) 8MB sL3 Cache |
1x Cortex-X2
3x Cortex-A710 4x Cortex-A510 (2021) 8MB sL3 Cache |
動作周波数 | 3.05GHz+2.85GHz+1.80GHz | 3.05GHz+2.85GHz+1.80GHz |
GPU | Immortalis-G715 MC11
HyperEngine 6.0 |
Mali-G710 MC10
HyperEngine 5.0 |
動作周波数 | 981MHz | 848MHz |
NPU/DSP | APU 690
30 TOPS |
APU 590 |
カメラ | Triple 18-bits Imagiq 890 ISP
3億2000万画素 or 1億800万画素(ZSL) |
Triple 18-bits Imagiq 790 ISP
3億2000万画素 or 3x3200万画素 9 Gigapixels per Second |
リフレッシュレート | MiraVision 890
60Hz(2x2.5K) 144Hz(WQHD+) 240Hz(FHD+) |
MiraVision 790
144Hz(WQHD+) 180Hz(FHD+) |
エンコード/デコード | Encode: 8K@24FPS H.264, H.265
Decode: 8K@30FPS H.264, H.265, VP-9, AV1 |
Encode: 8K@24FPS H.264, H.265
Decode: 8K@30FPS H.264, H.265, VP-9, AV1 |
RAM | LPDDR5X(4266.5MHz)
6MB System Level Cache |
LPDDR5X(3750MHz)
LPDDR5(3200MHz) 6MB System Level Cache |
ストレージ | UFS 4.0 | UFS 3.1 |
Wi-Fi | Wi-Fi 7 Ready | Wi-Fi 6/Wi-Fi 6E |
Bluetooth | Bluetooth 5.3 | Bluetooth 5.3 |
位置情報 | GPS, BeiDou, Glonass, Galileo, QZSS, NavIC | GPS, BeiDou, Glonass, Galileo, QZSS, NavIC |
通信 | 統合: MediaTek M80 5G
Sub-6GHz/mmWave (7.91Gbps/3.76Gbps) |
統合: MediaTek M80 5G
Sub-6GHz (7Gbps/2.5Gbps) |
充電規格 | ? | ? |
製造プロセス | TSMC 4nm N4P | TSMC 4nm N4 |
型番 | MT6985 | MT6983 |
Dimensity 9200はDimensity 9000の後継製品として発表され、多くの部分で進化しています。そのため、性能が確実に向上し、我々に良い体験を提供するのは間違いないでしょう。
Dimensity 9200の主な仕様は、製造プロセスがTSMC 4nm N4P、CPUが3.05GHzのCortex-X3を1基、2.85GHzのCortex-A715を3基、1.80GHzのCortex-A510 (2022)を4基の1+3+4構成、GPUはImmortalis-G715 MC11 @981MHz、RAM規格はLPDDR5X、内蔵ストレージ規格はUFS 4.0、5G通信はSub-6GHzとmmWaveに対応します。
製造プロセスは、MediaTekは「第2世代のTSMC 4nm」と発表しているだけで、N4なのかN4Pなのか発表会では明らかにしませんでした。しかし、発表会直後に公開した仕様表でN4Pと記載したため、N4ではなくN4Pと明らかになりました。
トランジスタ数は170億個で、競合他社製品のAppleはA16 Bionicが160億個と発表していますので、モバイルAPとしては最大の積載数だと思います。ちなみに、MediaTekは以前に「トランジスタ数で性能は計れない」と発表していますので、内部で何かが変わったのでしょう。
CPUはCortex-X3を初採用、Cortex-A715を初採用、Cortex-A510(Refreshed版)を初採用とすべて初採用となりました。2021年に発表したCortex-A510は32bitのサポートを切り捨てて64bitのみをサポートしましたが、2022年に発表したCortex-A510(Refreshed版)は32bitのサポートが復帰しているため、Dimensity 9200は64bit-Onlyの製品ではなく、汎用性のある製品となります。
動作周波数は3.05GHz、2.85GHz、1.80GHzに設定されており、この数値は昨年発表した製品のDimensity 9000と同じなので、同社にとって安定する数値がこれなのかもしれません。
気になる性能はGeekbench 5.0基準で、シングルコア性能が12%、マルチコア性能が10%も向上しています。つまり、動作周波数が同じで性能が向上していることを表しています。そして、電力効率が従来製品と比較して25%も向上したと発表しており、更に安定した性能の継続的な発揮が可能になるでしょう。
GPUはImmortalis-G715を初採用。同時に発表されたMali-G715の上位の製品で、ソフトウェアベースだけでなく、ハードウェアベースのレイトレーシングをサポートします。これにより、対応したゲームなどでより優れた映像体験が提供され、より現実世界に近い見た目でゲームを楽しむことが出来ます。
GPUの性能はGFXBenchのManhattan 3.0を基準に、従来製品と比較して性能は32%も向上したのに加えて、電力効率は41%も向上しており、従来製品と圧倒的な差が発生しています。これにより、ハードな要求をするゲームでも快適に遊べるとしています。
APUは第6世代のAPU 690を採用し、性能は30 TOPSで、電力効率は45%も向上しています。APUは写真や動画撮影などで効果を発揮し、従来製品と比較して10倍に拡大した際のノイズを減らす能力はOFF時と比べて20%も向上していると発表しています。
RAM規格はLPDDR5Xで8533Mbpsを初めてサポートし、従来製品と比較して帯域幅は13%も向上しました。CPUやGPUの性能が向上する部分ですので、RAM規格の進化は素直に喜ばしいです。
内蔵ストレージの規格はUFS 4.0を初めてサポート。そして、Multi-Circular Queue(MCQ)と呼ばれる技術を用いて、4K撮影の容量が20GBの動画を転送する場合、UFS 3.1と比較して28%も転送時間が減るとされています。今はいかに引っかかりを生む時間を減らすかに追われている時代ですので、新たな規格と新たな技術を用いてそういった時間が減るのは素晴らしいです。
SoCの性能を総合的に計測するAnTuTu Benchmark v9における性能は126万点で、従来製品では100万点が調子の良いときに出す数値だったので、大幅な進化に成功しました。
ゲーム利用時の動作の最適化を行うHyperEngineは新たな世代となる6.0を採用しました。同技術は画質向上エンジン、リソース管理エンジン、ネットワーキングエンジン、高速応答エンジンから成り、5G通信やWi-Fi接続を最適化しながら、バッテリーの持ちを向上し、FPSの向上と維持を実現し、さらに、APUを利用して画像拡張を実現します。
そして、王者栄耀と共同で開発したMediaTek Adaptive Game Technology(MAGT)を利用すると、OFF時と比べて電力効率が18%も向上、温度は4℃も下げられるとしています。この技術を利用すると、王者栄耀を120FPSでプレイした際、1時間も満足のいくプレイができるとしています。
通信面はWLANに関してはWi-Fi 7 Readyに対応、モバイルデータ通信は5G Sub-6GHzとmmWaveに対応します。従来製品はWi-Fi 6E対応、Sub-6GHzのみの対応でしたので、スマートフォンやタブレットなどの搭載製品をより快適に使えるようにする通信面も進化が見られます。
この他、Bluetooth 5.3にも対応したり、LE Audioもサポートします。
ISPは18-BitのImagiq 890を搭載し、RGBにWhiteを追加したRGBWのセンサーに率先してサポートします。これにより、RGBWで撮影するセンサーを搭載する際にRGBだけに対応している製品と比較してチューニングがしやすくなる利点があります。
ディスプレイはMiraVision 890を搭載し、AIを利用してより美しい画質にしたり、すべてのシーンでHDR表示に対応したり、1-120Hzの可変リフレッシュレートに対応したり、SoC側の技術でブルーライトカットを実現したりします。
今回の発表会はvivo、OPPO、Xiaomi、Transsionの役員が登壇し、ASUSとHonorがビデオメッセージを送りました。この企業が採用するのはほぼ確定しました。
初搭載機は今月の末で、vivoが初採用、OPPOが率先採用と発表しています。昨年に発表した従来製品は11月に発表されましたが、初搭載製品が発売されたのは翌年の3月で、発表から発売までのギャップで存在を忘れられた時期があったため、今回は製品の発表から初搭載製品の発表がすぐに行われます。