中国のUnisoc(紫光展鋭)がQualcomm Snapdragon 855のAI性能に匹敵する「ud710」を開発中であることがAI Benchmarkによって明らかになりました。UnisocはSpreadtrumとRDAの合併により生まれた企業で、Unisocのプロセッサーは日本市場向けに販売されている機種に搭載された例はなく、主に新興国向け機種に搭載されています。
AI BenchmarkによるとFloat AI性能ではHiSilicon Kirin 970やSnapdragon 855を上回っており、かなり優れたSoCだと分析しています。
この他、画像分類や顔認識、画像補正、超解像技術で使用される一般的な6つのAIにおける平均推論時間を見ると、多くの性能でSnapdragon 855と比較して15%から50%の優位性がありますが、写真のボケの表現や超解像技術で使用されるSRCNN 9-5-5ではSnapdragon 855が優勢で、カメラでの表現には大きな差がありそうです。そして、ud710の基本的な性能はKirin 980と似ているようですが、計算の制度はそれと比べて低く合計スコアには差が生まれています。
AI Benchmarkは“ud710_3h10_native”の名称で計測されているので初期のプロトタイプではないかと疑っています。先日UnisocはクラスターアーキテクチャのARM DynamIQを業界で初採用したTiger T310(虎賁 T310)を発表しており、今回存在が明らかになったud710はTiger T710(虎賁 T710)として発表される可能性があります。
更にAI Benchmarkが発見した“ud710_3h10_native”をGeekbenchで検索してみるといくつかヒットし、好成績をおさめていることがわかります。コア数はオクタコア構成で、Processor InformationのIdentifier項目内にはpart 3338と記載されていますので、ARM Cortex-A75を使用しています。
フラッグシップモデルレベルの性能ではありませんが、ミドルレンジモデルの中では最上級レベルで性能が高いです。そして、表にはしていませんがCortex-A75を採用しているMediaTek Helio P90と性能が似ていますので、ud710はA75+A55を採用しているでしょう。性能に関してはHelio P90は2+6のオクタコア構成でシングルコア性能は約2,000点、マルチコア性能は約6,800点なので、マルチコア性能では上回るud710は4+4のオクタコア構成の可能性があります。
“ud710_3h10_native”はすでに何度も計測されているので近い将来に発表されると考えています。Unisoc製プロセッサーはエントリーモデルが多く存在すら知らない人も多いですが、今回明らかになった製品がもし発表されることになればミドルレンジ市場は今まで以上に熱くなるでしょう。