中国のUNISOC (紫光展鋭)は2023年12月28日、ひっそりと新製品となるT765を発表しました。同社はSoCの名称の末尾に「5」を付与した経験が私の記憶の限りではないと思いますので、初めての試みとなりそうです。
名称 | T770 | T765 | T760 |
CPU | 1x Cortex-A76
3x Cortex-A76 4x Cortex-A55 |
2x Cortex-A76
6x Cortex-A55 |
4x Cortex-A76
4x Cortex-A55 |
動作周波数 | 2.55GHz
2.21GHz 2.00GHz |
2.30GHz
2.13GHz |
2.21GHz
2.00GHz |
GPU | Mali-G57 MC4 | Mali-G57 MC2 | Mali-G57 MC4 |
動作周波数 | 750MHz | 850MHz | 600MHz |
NPU/DSP | 4.8 TOPs | ? | 3.2 TOPs |
カメラ | 1億800万画素 or 3200万画素(ZSL) or 2x2000万画素(ZSL) | 1億800万画素 or 3200万画素(ZSL) or 2x2000万画素(ZSL) | 6400万画素 or 3200万画素(ZSL) or 2000万画素+1600万画素(ZSL) |
リフレッシュレート | 60Hz (QHD+)
120Hz (FHD+) |
120Hz (FHD+) | 60Hz (QHD+)
120Hz (FHD+) |
エンコード/デコード | Encode: 4K@60fps
Decode: 4K@60fps |
Encode: 4K@30fps
Decode: 4K@30fps |
Encode: 4K@30fps
Decode: 4K@30fps |
RAM | LPDDR4X (2133MHz) | LPDDR4X (2133MHz) | LPDDR4X (2133MHz) |
ストレージ | UFS 3.1
eMMC 5.1 |
UFS 3.1
UFS 2.2 eMMC 5.1 |
UFS 3.1
eMMC 5.1 |
Wi-Fi | Wi-Fi 5 (11ac) | Wi-Fi 5 (11ac) | Wi-Fi 5 (11ac) |
Bluetooth | Bluetooth 5.0 | Bluetooth 5.0 | Bluetooth 5.0 |
位置情報 | GPS, GLONASS, BeiDou, Galileo | GPS, GLONASS, BeiDou, Galileo | GPS, GLONASS, BeiDou, Galileo |
通信 | 統合: 5G Modem
Sub-6GHz (DL: 3.25Gbps/UL: 1.25Gbps) |
統合: 5G Modem
Sub-6GHz (DL: 3.25Gbps/UL: 1.25Gbps) |
統合: 5G Modem
Sub-6GHz (DL: 3.25Gbps/UL: 1.25Gbps) |
充電規格 | - | - | - |
製造プロセス | TSMC 6nm N6 | TSMC 6nm N6 | TSMC 6nm N6 |
型番 | UMS9620 | UMS9621 | UMS9620 |
UNISOCのT765の主な仕様は、製造プロセスはTSMCの6nmプロセスに基づくN6、CPUはCortex-A76を高性能コアとして採用、GPUはMali-G57 MC2を採用、モバイルデータ通信は5Gに対応しています。
製造プロセスはTSMCの6nmプロセスで、先端プロセスを採用しています。この製品は後述するCPUやGPUの性能を鑑みるとミドルレンジ向けのSoCとなりますが、そういった製品でも優れた技術を採用するのは素晴らしいです。
CPUは最大2.30GHzで動作するCortex-A76と最大2.13GHzで動作するCortex-A55を2+6構成で採用しています。高性能コアとして採用したCortex-A76は今から5年前の2018年6月に発表された古いものなので、今となっては性能に難があります。
UNISOCはどういった理由があるのか不明ですが、CPUには最上位製品のT820もこの製品と同じCortex-A76を採用しており、次世代のさらに優れたCortex-A77やCortex-A78を採用した製品はありません。
気になる点として、CPUの構成がT770は1+3+4構成、T760は4+4構成を採用しているのに、T765は2+6構成で高性能コアが少なくなっているところです。そのため、シングルコア性能に限って言えば2.55GHzと2.30GHz、2.21GHzなの間に位置しますが、マルチコア性能はCortex-A55のコア数が多いT765が最も低い性能となるでしょう。
GPUはMali-G57 MC2で、最大850MHzで動作します。名称が「5」少ないT760は最大600MHzで動作するMali-G57 MC4を採用していますが、Arm製のGPU IPはコア数がすべてを決めるので確実にT760が優れるでしょう。
カメラは最大で1億800万画素の撮影に対応し、フラッグシップ級のサムスン電子のISOCELL CISの性能を余すことなく発揮できると思います。ただ、カメラは最終的に採用した企業のチューニングによって完成度が決まるため、すべては採用する企業の努力が物を言います。
UNISOCはひっそりとT765を発表したため、どの時期に初搭載製品が出るのか、どの企業が初採用するのか明らかになっていません。ただ、UNISOCの製品を採用する企業はHisenseやZTEなどの企業で、日本にはあまり馴染みがないかもしれません。
今回の「765」の名称を聞いてQualcommのSnapdragon 765 5Gもしくは765G 5Gを思い浮かべた方がいると思いますが、実はこれらの製品はCortex-A76とCortex-A55を1+1+6構成で採用していたため、ほぼ同じ仕様となっています。
もちろん細かい仕様は異なりますが、奇遇にもT765とQualcommの765が似た仕様を採用しているのは面白い現象です。Snapdragon 765 5Gと765G 5GはQualcommの歴史において優れた製品だったと記憶している人が多く、また、それを裏付けるようにLG VELVETやPixel 5などの複数の製品採用されました。
今回のT765もQualcommのSnapdragon 765のように多くの企業が採用するようになって欲しいと願っています。