台湾のTSMCは2023年4月26日に、アメリカ合衆国カリフォルニア州で開催された2023年北米テクノロジーシンポジウム(2023 North America Technology Symposium)で3nmプロセスの新たなファミリーと、2nmプロセスの進捗を発表しました。
現在のTSMCの3nmプロセスはN3 (N3B)とN3Eがありますが、新たなファミリーとしてN3PとN3X、N3AEを発表しました。N3Pは2024年下半期に量産を開始する予定で、2023年に量産予定のN3Eと比較して同じリークで5%の性能向上、同じ性能で5%から10%の電力削減、1.04倍の密度を実現すると明らかにしました。
高性能コンピューティング向けのN3Xは2025年に量産を開始する予定で、N3Pを同じ密度を備えながら1.2Vの駆動電圧でN3Pと比較して5%の性能向上を実現します。噂段階ではAppleが開発するM3の上位版のM3 ProやM3 Ultraが採用するとの情報があり、MacBook ProやMac Studioなどが搭載してた製品として発表される可能性があります。
車載SoC向けのN3AE (Auto Early)はN3Eベースで、2023年中に車載プロセス設計キット (PDK)を提供し、顧客が3nmプロセスで設計できるようにすると明らかにしました。量産に関する情報は明らかにしていませんが、2025年にはN3Aに進化するようにするとしています。
GAA (Gate-All-Around)構造を採用する2nmプロセスは2025年の生産に向けて開発を進めていると明らかにし、歩留まりと性能の発揮の面で双方とも順調に開発が進んでいるとしています。性能に関しては、N3Eと比較して同じ電力で最大15%の性能向上、同じ性能で最大30%の電力削減、1.15倍の密度を実現すると明らかにしました。
競合他社のサムスン電子は3nmプロセスでGAA構造を採用していますが、TSMCの3nmプロセスは従来のFinFET構造を採用しており、「構造」だけで考えるとサムスン電子が進んでいる現状です。ただ、2nmプロセスになると同じGAA構造を採用することになりますので、早ければ2025年に真の直接対決が行われる予定です。
この他、2021年6月に発表した6nmプロセスのRF SoC向けのN6RFを更に微細化し、4nmプロセスのN4RFを発表しました。N4RFは主にWi-Fi 7 RF SoC向けに採用される予定で、N6RFと比較して同じ性能で1.77倍のロジック密度、45%も少ないロジック電力を実現できるとしています。