Redmi Note 12 Turboが初搭載したSnapdragon 7+ Gen 2とPixel 7シリーズが初搭載したGoogle Tensor G2の性能をベンチマークで算出された数値を用いて比較します。
今回の比較で用いる「性能」はピーク性能を意味しており、安定して継続的に高い性能を発揮する安定性は考慮していません。個人的な意見ですが、安定性に関しては搭載したデバイスを購入し使用する以外にわからないと思うので、今回の比較では考慮していません。
そして、性能の比較に採用したベンチマークのひとつのAnTuTu Benchmarkは開発元がiOS搭載デバイスとAndroid搭載デバイスの数値を比較することが出来ないと声明を発表しているため、今回の比較で使用した数値をiPhoneやiPadと比較するのはやめてください。ただ、Geekbenchに関してはクロスプラットフォームでの比較を認めているので、こちらの数値は比較することが出来ます。
Snapdragon 7+ Gen 2の主なスペックは、製造プロセスはTSMC 4nm N4、CPUはKryoで2.91GHzで動作するCortex-X2を1基、2.49GHzで動作するCortex-A710を3基、1.80GHzで動作するCortex-A510を4基の1+3+4構成、GPUは580MHzで動作するAdreno 725、RAM規格はLPDDR5に対応、内蔵ストレージ規格はUFS 3.1に対応、モバイルデータ通信は5Gに対応しSub-6GHz帯とmmWaveをサポート、この他にWi-FI 6EとBluetooth 5.3に対応します。
性能に直結する部分でのGoogle Tensor G2との主な違いは製造プロセス、CPU、GPUで、このようにすべてのスペックが異なる場合にはベンチマークで算出された数値を利用して比較すると、どちらが優れた製品なのかはっきりとわかります。
製造プロセスはSnapdragon 7+ Gen 2がTSMCの4nmプロセスに基づくN4、Google Tensor G2はサムスン電子の5nmプロセスに基づくSF5E(5LPE)で、より先端のプロセスで製造されているのは前者です。また、現時点ではサムスン電子の4nmと5nmプロセスは歩留まりが改善し、発揮する性能も見込まれるようになったと報告されていますが、当時は大きな差があったと判明しているので、仮に同じスペックであればTSMCで製造されたほうが優れる傾向にありました。
CPUはSnapdragon 7+ Gen 2がCortex-X2を1基、Cortex-A710を3基、Cortex-A510を4基の1+3+4構成で、Google Tensor G2はCortex-X1を2基、Cortex-A78を2基、Cortex-A55を4基の2+2+4構成を採用しており、前者はArmv9アーキテクチャ、後者はArmv8アーキテクチャに基づいたArmが設計したCPU IPを採用しています。そのため、前者のほうがより優れたCPUを採用していることになります。
GPUはSnapdragon 7+ Gen 2がAdreno 725、Google Tensor G2がMali-G710 MP7で、まったく異なるGPUを採用しています。前者は自社開発したもの、後者はArmが設計したものとなっていますので、カタログスペックだけでは比較することが出来ない状態です。
Snapdragon 7+ Gen 2のAnTuTu Benchmark v9における性能は、CPU性能が245,133点、GPU性能が359,353点、MEM性能が211,283点、UX性能が181,132点で、総合性能は996,901点となりました。
CPU性能はSnapdragon 7+ Gen 2の性能を100%とすると、Google Tensor G2の性能は約90%なので、後者のほうが性能が低いと判明しました。これはGoogle Tensor G2はCortex-X1を2基も採用していますが、Snapdragon 7+ Gen 2はより優れたCortex-X2を採用しており、さらに、その他の部分でCortex-A78ではなくCortex-A710を、Cortex-A55ではなくCortex-A510を採用していることで性能の差が生まれたと考えています。
GPU性能も同様にSnapdragon 7+ Gen 2の性能を100%とすると、Google Tensor G2の性能は約88%となり、こちらも後者のほうが性能が低くなりました。Mali-G710は大変優れたGPUではありますが、Google Tensor G2の積載数は7と少ないので、優れた性能を発揮できなかったのではないかと考えています。仮にMP10であればSnapdragon 7+ Gen 2と同等、もしくは上回る性能を発揮していた可能性があります。
Geekbench 6におけるSnapdragon 7+ Gen 2の性能は、シングルコア性能が1,663点、マルチコア性能が4,486点となりました。このベンチマークには基準点があり、2022年1月に発表されたIntel Core i7-12700の性能が2,500点に設定されています。このCPUを基準として倍の計測時間であれば1,250点、半分の計測時間であれば5,000点となり、基準点が設定されていることで自分の製品のCPUがどの程度の性能なのかわかりやすくなっています。
AnTuTu v9と同様にSnapdragon 7+ Gen 2の性能を100%とすると、Google Tensor G2のシングルコア性能は約88%、マルチコア性能は約85%となりました。どちらも性能もSnapdragon 7+ Gen 2の9割ほどで、Google Tensor G2はQualcommの最新のミドルハイ向けSoCに劣る結果となりました。
シングルコア性能は2.91GHzのCortex-X2と2.85GHzのCortex-X1の性能を比較しており、クロック数が上昇し1世代向上していることを考えると、あまり大きな差が発生しなかったなと感じます。そのため、現時点では普通に利用している場合はどちらも問題なく動作し、4年後くらいには差を感じる可能性があるかな、という印象です。
マルチコア性能はすべてのCPUの性能を総合的に計測するので、Google Tensor G2からすべてのCPUが1世代向上したSnapdragon 7+ Gen 2が優れるのは当然です。それを考慮して発揮された性能を見ていくと、Google Tensor G2は十分な性能を発揮していると考えることができ、特にCortex-X1を2基も採用する異例の構成が活きていると思います。
Snapdragon 7+ Gen 2とGoogle Tensor G2の性能をふたつのベンチマークで比較したところ、前者の性能が優れる結果となりました。Snapdragon 7+ Gen 2はQualcommのミドルハイ向けSoCで、Google Tensor G2はGoogleのフラッグシップ向けSoCとして開発されたものなので、ミドルハイ向けSoCがフラッグシップ向けSoCを上回る状態となっています。
Googleは同社のミドルレンジ製品のPixel 7aにGoogle Tensor G2を採用する予定ですが、性能だけを考慮するとSnapdragon 7+ Gen 2を搭載した製品を購入したほうが満足できると思います。しかし、Googleの製品の強みは最新のAndroidがすぐに提供されること、長期的なアップデートが約束されていること、優れたカメラ体験が提供されることなどのさまざまな優位点があるので、性能はSnapdragon 7+ Gen 2に劣りましたが、そのほかのソフトウェアの部分で優れているので自分が何を求めるのかで購入する製品を選ぶ必要があります。
そのため、性能を優先するのであればSnapdragon 7+ Gen 2を搭載した製品、ソフトウェアなどで優位性を見いだせるのであればGoogleの製品を購入すると満足できるのではないかと思います。もちろん、Snapdragon 7+ Gen 2を搭載した製品もソフトウェアに力を入れていると思いますが、この部分に関してはGoogleのほうが優位点があると個人的な意見となりますが私は考えていますので、搭載した製品のサマリーページとにらめっこしてあなた自身が満足できる製品を購入して欲しいと思います。