HONOR 80が初搭載したSnapdragon 782GのAnTuTu Benchmark v9とGeekbench 5の性能が判明したので、Snapdragon 7 Gen 1、Snapdragon 780G 5Gなどと比較します。
今回の比較で言及する「性能」はピーク時の性能を意味しており、安定して高い性能を継続的に発揮する安定性については考慮していませんので注意してください。ちなみに、私見ですが、安定性を知りたい場合は搭載した製品を購入する以外にないと思っています。
また、AnTuTu Benchmarkにおいては、開発を行っているAnTuTuがiOS搭載機とAndroid搭載機で発揮された性能を比較するのは不適当だと声明を発表しており、例えば、iOS搭載製品が100万点、Android搭載製品が200万点であったとしても優劣をつけることは出来ません。Geekbenchに関しては公式がクロスプラットフォームでの比較を認めていますので、発揮された性能を比較しても問題ありません。
Snapdragon 782Gの主なスペックは、製造プロセスはTSMC 6nm N6、CPUはKryoで詳細に記すと2.71GHzで動作するCortex-A78を1基、2.40GHzで動作するCortex-A78を3基、1.80GHzで動作するCortex-A55を4基の1+3+4構成、GPUはAdreno 642Lでクロック数は不明です。
Snapdragon 782Gは名称からSnapdragon 780G 5Gの後継製品と思う方もいるかも知れませんが、実際にはSnapdragon 778G 5Gの高クロック版のSnapdragon 778G+ 5Gの高クロック版です。そのため、この記事を読む前に勘違いしていた人は正しく認識してほしいですし、あなたの周りに勘違いしている人がいたら修正してあげるようにしてください。
CPUは1基のCortex-A78が2.40GHzから2.71GHzに上昇し、Qualcommは5%の性能向上に成功したと発表しています。その他の部分に変更点はないので、主に瞬間的な処理を行う際に違いが出るでしょう。
GPUは継続してAdreno 642Lを採用していますが、現時点ではクロック数は不明です。Qualcommは10%の高速化を実現したと発表しているので、単純計算すると668.8MHzとなります。この数値はKernel Sourceが公開されると判明する見込みですが、Honorは公開に消極的なので、数値が判明するのは望み薄です。
Snapdragon 782GのAnTuTu Benchmark v9の性能は、CPU性能が166,893点、GPU性能が188,624点、MEM性能が107,010点、UX性能が133,013点で、総合的な性能は595,540点となりました。
Snapdragon 778G+ 5Gと比較すると、CPU性能は約1.1%の成長、GPU性能は約11%の成長に成功しました。CPUの成長がそれほどない理由としては、AnTuTuがマルチコア性能に比重をおいている点が考えられます。そのため、期待するほどの成長が現れませんでした。
GPU性能はクロック数の上昇とともに性能も向上しており、上手に開発が行われている印象を受けます。ちなみに、この性能は2017年12月に発表されたSnapdragon 845に肉薄し、主な搭載製品としてAQUOS R2、Xperia XZ2、OnePlus 6があります。
Snapdragon 7 Gen 1の性能をすべて上回っており、古い命名規則を持つ製品が新しい命名規則を持つ製品よりも優れている結果となりました。そのため、Snapdragon 7 Gen 1は失敗作と評して問題ないでしょう。
CPU性能を専門的に計測するGeekbench 5の性能は、シングルコア性能が840点、マルチコア性能が2,847点となりました。Geekbench 5には基準点が設けられており、2018年に発表されたIntel Core i3-8100が発揮するシングルコア性能が1,000点に設定されています。そのため、2,000点を発揮すればCore i3-8100の倍の性能を有していると認識してください。
Snapdragon 778G+ 5Gと比較すると、シングルコア性能は約3.3%の成長、マルチコア性能は約-4.0%の成長となりました。マルチコア性能で成長が見られない要因として考えられるのは、サンプル数が非常に少ないことと、MagicOS 7.0がフルパワーで性能を発揮しないように抑制していることが考えられます。そのため、他の企業が採用することを願っています。
Snapdragon 7 Gen 1と比較すると、2.40GHzのCortex-A710よりも2.71GHzのCortex-A78が優れていることがわかります。ただ、マルチコア性能に関してはCortex-A55よりもCortex-A510の方が優れていることがわかり、Cortex-A710の完成度はそれほど高くない可能性が出てきました。
Snapdragon 782Gは非常によく出来たSoCで、新しい命名規則を採用したSnapdragon 7 Gen 1よりも優れた製品に仕上がっています。そのため、Snapdragon 7 Gen 1の方が新しいのでSnapdragon 782Gが劣っていると認識すると残念な結果を生むかもしれません。
ただ、写真や動画の撮影に影響するISPの性能はSnapdragon 7 Gen 1の方が優れているので、そうした使い方を考えている場合はSnapdragon 782Gではないほうがいいと思います。とは言え、最終的には採用する企業側の調整が大きいので、購入者が公開した作例集を見て購入する製品を決めたほうがいいでしょう。
気になる点としては、Snapdragon 782Gの名称で、TwitterなどのSNSでは日本人だけでなく中国人や英語圏の人たちもSnapdragon 780G 5Gの後継製品と思っている人がそれなりにいます。この製品は「+」版の「+」版なので、Qualcommがこういった製品の命名規則を用意していなかった結果、違った製品の後継製品と誤認させることになったので、やや問題かなと思っています。
搭載した製品の日本市場への参入に関しては、私はすべてを知る人間ではないので確定したことは言えませんが、あまり期待しないほうが良いのではないかと思います。今の日本市場のミドルレンジ製品の多くはSnapdragon 695 5Gを搭載しており、後継製品としてSnapdragon 6 Gen 1があるので、こちらを搭載した製品が多く発表されると思っているからです。
そのため、日本の国外ではSnapdragon 782Gと呼ばれる製品が存在していて、Snapdragon 7 Gen 1よりも高い性能を発揮していると認識するだけでいいでしょう。そして、命名規則を用意していなかった結果、ややこしい製品名になってしまったことも認識しておく必要があるでしょう。