XiaomiのRedmi Note 12 4Gが初搭載したSnapdragon 685 4Gのベンチマークスコアが判明したので、Snapdragon 695 5GとSnapdragon 690 5G、Snapdragon 680 4Gと比較します。
今回の比較で用いる「性能」はピーク性能を意味しており、安定して継続的に高い性能を発揮する安定性は考慮していません。個人的な意見ですが、安定性に関しては搭載したデバイスを購入し使用する以外にわからないと思うので、今回の比較では考慮していません。
そして、性能の比較に採用するベンチマークのひとつのAnTuTu Benchmarkは開発元がiOS搭載デバイスの数値とAndroid搭載デバイスの数値を比較することが出来ないと声明を発表しているため、今回の比較で使用した数値をiPhoneやiPadと比較するのはやめてください。ただ、Geekbenchに関してはクロスプラットフォームでの比較を認めているので、こちらの数値は比較することが出来ます。
Snapdragon 685 4Gの主なスペックは、製造プロセスはTSMC 6nm N6、CPUはKryoで2.80GHzで動作するCortex-A73を4基と1.90GHzで動作するCortex-A53を4基の4+4構成、GPUはAdreno 610、RAM規格はLPDDR4X、内蔵ストレージ規格はUFS 2.2、モバイルデータ通信は4Gに対応、この他にWi-Fi 5とBluetooth 5.2をサポートします。
Snapdragon 685 4Gは当初(Rev.A)、CPUの最大クロック数が2.60GHzと記載されていましたが、最新の情報(Rev.B)では2.80GHzに修正され、初搭載機のRedmi Note 12 4Gが搭載しているものと同じ数値になっています。Revを用いて修正されているため、2.60GHzで動作するSnapdragon 685 4Gは存在しません。
Snapdragon 685 4Gの性能は、Qualcommの発表によるとSnapdragon 680 4Gと比較してCPU性能は15%、GPU性能は10%も向上したとされています。性能が向上した要因は、基本的なスペックを変更させずにオーバークロックしただけなので、体験が飛躍的に向上することはないと考えています。
CPUはCortex-A73とCortex-A53を組み合わせていますが、高性能側のCortex-A73は2016年5月に発表された古いCPU IPなので、いくら性能が良くなったとしても最先端の5Gに対応したSoCと同等レベルの性能を発揮することは出来ないと思います。
GPUはAdreno 610を搭載しており、Snapdragon 680 4Gと同じものです。ベースモデルのクロック数が1114.8MHzで、性能が10%向上したと発表されているため、数値を確定するのは現状では難しいですが、1200MHz程度で動作するのではないかと考えています。
製造プロセスは台湾のTSMCの6nmプロセスに基づくN6で、先端プロセスを採用したミドルレンジ製品となっています。ちなみに、Qualcommの最高傑作とも評されるSnapdragon 865 5GはTSMCの7nmプロセスに基づいて製造されていますので、Snapdragon 685 5Gはさらに先のプロセスで製造されていることがわかります。
Snapdragon 685 4GのAnTuTu Benchmark v9の性能は、CPU性能は92,835点、GPU性能が53,383点、MEM性能が85,435点、UX性能が87,621点で総合性能は319,274点となりました。
Snapdragon 680 4Gと比較すると、CPU性能は約12%、GPU性能は約6%の向上に成功しており、Qualcommが発表した数値とは一致しませんが、確実に成長はしています。
CPU性能はカタログスペックからではCortex-A73のクロック数が上昇しただけに見えますが、Snapdragon 685 4GはCortex-A73を4基も採用しており、これはCPUの半数が高性能なコアで構成されているため、大きく成長することに寄与したと思います。
Geekbench 6での性能は、シングルコア性能が472点、マルチコア性能が1,530点となりました。このベンチマークには基準点があり、2022年1月に発表されたInte Core i7-12700の発揮する性能が2,500点に設定されています。このCPUを基準として、倍の計測時間がかかれば1,250点、半分の計測時間であれば5,000点となり、基準点が設定されていることで自分の製品のCPUがどの程度の性能なのかわかりやすくなっています。
Snapdragon 680 4Gと比較すると、シングルコア性能は約13%、マルチコア性能は約6%の向上に成功しました。シングルコア性能に関してはCortex-A73のクロック数が2.40GHzから2.80GHzに上昇したので、その分だけ性能向上することに成功しました。マルチコア性能に伸びがあまり見られない理由として、高効率側のCortex-A53のクロック数が上昇していないことが考えられます。
Snapdragon 685 4GはSnapdragon 680 4Gのオーバークロック版となるので、Qualcommの発表通りにCPUとGPUの性能が向上し、後継製品と見ても問題ないと思います。ベンチマークスコアが上昇しているのはこの比較からわかるので、Redmi Note 11 4GからRedmi Note 12 4GへSoCの性能だけを考慮してデバイスを更新しても問題はないでしょう。
ただ、Snapdragon 685 4Gの性能はSnapdragon 680 4Gから見て高くなっているだけで、現在のスマートフォン・タブレット市場を見ると、実はこの性能はそれほど高いものではありません。そのため、今自分が所有しているデバイスの性能と比較して購入を選択するべきなので、「性能が上がった」だけを見てSnapdragon 8 Gen 1を搭載したデバイスから乗り換えるのはいい選択とはいえません。
現在は初搭載機のRedmi Note 12 4Gのみが搭載していますが、ベースモデルのSnapdragon 680 4Gを採用した経験のある企業としてOPPOやHUAWEI、Motorola、vivoなどがあるので、これらの企業は採用する可能性があると考えています。
日本市場でのSnapdragon 685 4Gを搭載したデバイスの販売に関しては現時点では不明ですが、MotorolaからSnapdragon 680 4Gを搭載したmoto g32が販売されているため、moto g33が開発されるのであれば販売される可能性はあるでしょう。