MediaTekは2021年11月19日、MediaTek Summitを開催し2022年向け旗艦製品となるMediaTek Dimensity 9000(MT6983)を発表しました。同製品はリーク時にDimensity 2000と予想されていましたが、最終的な名称はDimensity 9000となりました。
名称 | Dimensity 9000 | Dimensity 1200 | Dimensity 1000+ |
CPU | 1xX2+3xA710+4xA510 | 1xA78+3xA78+4xA55 | 4xA77+4xA55 |
周波数 | 3.05GHz+2.85GHz+1.8GHz | 3.0GHz+2.6GHz+2.0GHz | 2.6GHz+2.0GHz |
GPU | Mali-G710 MC10 | Mali-G77 MC9 | Mali-G77 MC9 |
周波数 | 886MHz | 836MHz | |
NPU/DSP | APU 5.0
(4P+2F) |
APU 3.0 | APU 3.0 |
カメラ | Triple 18-bit Imagic790 ISP
3億2000万画素 or 3x3200万画素 |
2億画素 or 3200万画素+1600万画素 | 8000万画素 or 3200万画素+1600万画素 |
リフレッシュレート | 144Hz(WQHD+)
180Hz(FHD+) |
168Hz(FHD+) | 144Hz(FHD+) |
エンコード/デコード | 4320p@30FPS HEVC encode
4320p@24FPS AV1 decode |
2160p@60FPS HEVC encode
2160p@60FPS AV1 decode |
2160p@60FPS HEVC encode
2160p@60FPS AV1 decode |
RAM | LPDDR5X @3750MHz
LPDDR5 @3200MHz |
LPDDR4X @2133MHz | LPDDR4X @2133MHz |
ストレージ | UFS 3.1 | UFS 3.1 | UFS 2.2 |
Wi-Fi | Wi-Fi 6E | Wi-Fi 6 | Wi-Fi 6 |
Bluetooth | Bluetooth 5.3 | Bluetooth 5.2 | Bluetooth 5.1 |
位置情報 | GPS/BeiDou/Glonass/Galilep/QZSS/NavIC | GPS/BeiDou/Glonass/Galileo/QZSS/NavIC | GPS/BeiDou/Glonass/Galileo/QZSS/NavIC |
通信 | 統合: M80
5G NR: Sub-6GHz (7Gbps/2.5Gbps) |
統合: M70
5G NR: Sub-6GHz (4.7Gbps/2.5Gbps) |
統合: M70
5G NR: Sub-6GHz (4.7Gbps/2.5Gbps) |
製造プロセス | TSMC N4 | TSMC N6 | TSMC N7 |
内部コード | MT6983 | MT6893 | MT6889Z |
MediaTek Dimensity 9000は全く新しい製品で、TSMC N4(4nm)プロセス技術、CPUはArmv9アーキテクチャーに基づいた1xCortex-X2 3.05GHz+3xCortex-A710 2.85GHz+4xCortex-A510 1.8GHzのオクタコア構成、GPUはMali-G710 MC10 @周波数不明、APU 5.0(4xPerformance+2xFlexible)、RAM規格はLPDDR5X(3750MHz)、内蔵ストレージ規格はUFS 3.1、5G通信はFR1定義のSub-6GHz帯に対応しています。
CPUは世界初のArmv9アーキテクチャーに基づいたCortex-X2、Cortex-A710、Cortex-A510を採用。それぞれの従来製品はCortex-X1、Cortex-A78、Cortex-A55ですが、Cortex-A55は2017年12月発表のSnapdragon 845から採用されている“古のCPU IP”となっていました。
GPUはMali-G710 MC10を採用。従来製品はMali-G78ですが、MediaTekはDimensity 1200とDimensity 1100でMali-G77を採用していたので、世代を飛び越えた採用となりました。また、Vulkan Ray Tracingに対応し「リアルな光の反射、屈折、陰影」の表現が従来製品と比較して優れます。
APUは第5世代のAPU 5.0を採用し、4つのPerformance Coreと2つのFlexible Coreで構成されています。MediaTekによるとAPU 3.0と比較して400%の性能向上と省電力性を実現しているようです。
ISPは第7世代のImagiq790を採用。18bit 3-Core/3-exp HDR-ISPで、3億2000万画素や、3200万画素+3200万画素+3200万画素のトリプルカメラ構成に標準で対応します。
ビデオにおいては8K(4320p)エンコードとデコードに対応。また、8K AV1デコードはDimensity 9000が世界初の対応です。
ディスプレイはリフレッシュレート144Hz(WQHD+)と180Hz(FHD+)、HDR10+ Adaptiveに対応します。HDR10+ Adaptiveは部屋の明るさによって輝度を自動的に最適化して、製作者の意図を視聴者に正しく届けることが出来るようになっている規格です。
5G通信はSub-6GHz帯のみに対応し、日本やアメリカ合衆国で商用化されているmmWave(ミリ波)は非対応。世界的に見るとmmWaveは局地的な利用で、多くの国や地域ではSub-6GHz帯のみが商用化されているため、非対応なのは残念ですがそれによって採用を見送るといった企業は少ないと考えており、まったく問題はないでしょう。
この他、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3、多種多様なGNSSに対応しています。Bluetooth 5.3は2021年7月に発表された新規格で、LE Audio時のConnection Parameter Updateの高速化が大きな更新です。
GNSSはBeiDouに関しては進化があり、Dimensity 1200ではB1l/B2Aでしたが、Dimensity 9000ではB1Cが追加されてB1I/B1C/B2Aに対応しました。これによってより高層ビルなどに囲まれた場所であっても正確な位置を検出できるようになります。
今回発表されたDimensity 9000はAnTuTu Benchmark v9において100万点超え(1,007,369点)を達成しました。具体的な構成は明らかにされていませんが、RAM 12GB(LPDDR5x)+内蔵ストレージ 256GB(UFS 3.1)を採用していると判明しています。
現在の最高点数は内蔵ストレージにUFS 3.1+SSDのRAID構成を採用したBlack Shark 4S Proが875,902点、非ゲーミング製品ではvivo iQOO 8 Proが844,078点なので、90万点を飛び越えて100万点に到達しました。
Dimensity 9000は様々な世界初が盛り込まれた旗艦SoCで、世界初のTSMC N4プロセス技術を採用し、Cortex-X2 CPUやCortex-G710 GPU、LPDDR5X(3750MHz) RAMなどがあります。
MediaTek Dimensity 9000を搭載した製品は2022年Q1(1月-3月)に発表予定と明らかにされており、採用企業はXiaomiやOPPO、vivo、Honorが予想されています。
MediaTekの製品は競合他社と比較して供給価格の安さが挙げられていますが、今回のDimensity 9000は業界最先端が集結しているため、今までと同じ様に安価な供給ができないと言われており、性能だけでなく価格面でもSnapdragon 8 Gen 1採用製品やExynos 2200採用製品と直接戦う製品になるでしょう。