Galaxy A14 5Gが初搭載したサムスン電子のExynos 1330のベンチマークスコアが判明したので、同じくサムスン電子のExynos 1280、他の市場向けのGalaxy A14 5Gが搭載したDimensity 700と比較します。
今回の比較で用いる「性能」はピーク性能を意味しており、安定して継続的に高い性能を発揮する安定性は考慮していません。個人的な意見ですが、安定性に関しては搭載したデバイスを購入し使用する以外にわからないと思うので、今回の比較では考慮していません。
そして、性能の比較に採用したベンチマークのひとつのAnTuTu Benchmarkは開発元がiOS搭載デバイスとAndroid搭載デバイスの数値を比較することが出来ないと声明を発表しているため、今回の比較で使用した数値をiPhoneやiPadと比較するのはやめてください。ただ、Geekbenchに関してはクロスプラットフォームでの比較を認めているので、こちらの数値は比較することが出来ます。
Exynos 1330の主なスペックは、製造プロセスはSamsung 5nm SF5E、CPUは2.40GHzで動作するCortex-A78を2基、2.00GHzで動作するCortex-A55を6基の2+6構成、GPUは949MHzで動作するMali-G68 MP2、RAM規格はLPDDR5、内蔵ストレージ規格はUFS 3.1、モバイルデータ通信は5Gに対応しSub-6GHz帯をサポート、この他、Wi-Fi 5、Bluetooth 5.3に対応します。
Exynos 1330とExynos 1280の関係は、後継世代の製品ではありますが、直属の後継製品ではありません。Exynos 1280の後継製品はExynos 1380で、こちらはGalaxy A54 5GやGalaxy A34 5Gなどが搭載しています。
Dimensity 700と比較すると、CPUがCortex-A78とCortex-A76、GPUがMali-G68とMali-G57なのかの違いがあり、同じ「Galaxy A14 5G」の名前ですが市場によって搭載しているSoCのスペックが大きく異なっていることがわかります。
Exynos 1330のAnTuTu Benchmark v9における性能は、CPU性能が132,280点、GPU性能が83,823点、MEM性能が78,586点、UX性能が116,501点で、総合性能は411,190点となりました。
Exynos 1330を搭載したGalaxy A14 5GのRAMはLPDDR4X規格を採用しているので、今回の数値はまだまだ性能が上昇する余地があります。しかし、今後、LPDDR5規格のRAMを搭載する製品が出るとは思えないので、実質的に最高点と見ても問題ないでしょう。
Exynos 1280と比較すると、CPU性能は約7%の成長に成功しましたが、GPU性能は約40%も劣る結果になりました。この原因として考えられるのはGPUの積載数で、Exynos 1330はMali-G68を2基、Exynos 1280はMali-G68を4基も採用しており、Arm Mali GPUはクロック数よりも積載数で大きく性能が変更するため、こういった結果につながったのだろうと思います。
Dimensity 700と比較すると、CPU性能は約36%、GPU性能は約2%上回り、CPUの性能に圧倒的な差が発生しました。GPUの性能は大きな違いはありませんが、CPUはやはり2世代先のCortex-A78を採用していることも相まって大きな違いが発生しました。
Geekbench 6での性能は、シングルコア性能が982点、マルチコア性能が2,060点となりました。このベンチマークには基準点があり、2022年1月に発表されたIntel Core i7-12700の性能が2,500点に設定されています。このCPUを基準として倍の計測時間であれば1,250点、半分の計測時間であれば5,000点となり、基準点が設定されていることで自分の製品のCPUがどの程度の性能なのかわかりやすくなっています。
Exynos 1280と比較すると、シングルコア性能は約2%上昇しましたが、マルチコア性能は約0.5%下回る結果となりました。どちらも同じ2.40GHzのCortex-A78を採用していますが、ややシングルコア性能が優れた結果として、製造プロセスの安定化が考えられます。しかし、この数値は誤差に収まるので、ほぼ同じと見てもいいと思います。
Dimensity 700と比較すると、シングルコア性能は約39%、マルチコア性能は約11%上回る結果となりました。シングルコア性能は2.40GHzのCortex-A78と2.20GHzのCortex-A76を比較しているので、前者のほうが優れました。しかし、マルチコア性能に大きな差が生まれなかった理由として、両製品が共通して2.00GHzのCortex-A55を6基も採用しているからではないかと考えています。
Exynos 1330の性能は、CPU性能は高く設定されているが、GPU性能は低く設定されている状態で、ミドルレンジ帯の製品向けSoCとして考えるとよく出来ていると思います。サムスン電子はこういった性能を持つSoCを製造することが出来ず、昨年の製品はMediaTekのDimensityに頼り切った展開を行っていましたが、今回は自社でこのようなSoCを製造したので、製品の幅が広がることは間違いないと思います。
Dimensity 700と比較するとExynos 1330はまったくの別物の性能を有しており、ベンチマークで発揮された性能だけを見るとDimensity 700を搭載したGalaxy A14 5Gは残念ながらハズレのモデルになってしまうと思います。サムスン電子が意図的にハズレを作っているとは思えませんが、自社のSoCが上回るようにしたのはなにか作戦があるように感じます。
日本市場でのExynos 1330を搭載した製品の展開は現時点では不明ですが、確実に販売されないとは言い切れない状況にあり、今後の情報に期待しています。というのも、Exynos 1380を搭載したGalaxy A54 5Gが日本で展開されているためで、どこかのキャリアが採用する可能性やキャリアフリー市場で販売される可能性はゼロではありません。