Armは2025年9月10日、新しいCPU IPとGPU IPを含んだLumex CSS Platformを発表しました。昨年発表されたCSS for Clientの後継で、CPUには期待されているものが採用、GPUはさらなる性能向上が達成されました。
聞き慣れない「Lumex」はモバイル向けのブランドを指している言葉で、Armの気が変わらない限りは来年も同じく「Lumex」を用います。気になるのは世代や年代を表す数字がない点で、来年に発表されるものが「Lumex 2」になるのか「Lumex 26」になるのか不明で、規則性が設定されていないことに不安を覚えます。
新たに発表されたCPU IPは新しい命名規則が付与され、最上位からC1-Ultra、C1-Premium、C1-Pro、C1-Nanoという名称になりました。それぞれがどれの後継IPなのかについては後述するとして、この命名規則の登場によりArmは2004年から続けた「Cortex」に終わりを告げ、ひとつの時代が終わりました。
同時に発表された新GPU IPも新しい命名規則が付与され、CPUと同様に最上位からMali G1-Ultra、Mali G1-Premium、Mali G1-Proという名称になりました。これまで最上位のGPU IPには「Mali」から独立して「Immortalis」が付与されていましたが、結果として「Mali」に統合されました。
新しい命名規則では「CPUの頭文字と世代」、「GPUの頭文字と世代」になっていることがわかるため、この規則性によって来年に発表されるものは「C2」と「G2」になるだろうと予想ができます。これはわかりやすく、素晴らしい命名規則を発見したと思います。
新たに発表されたC1 CPUの大きな特徴はすべてSME2 (Scalable Matrix Extension 2)と呼ばれるものを採用した点で、これによってAI性能が大幅に進化します。SME2を採用したことで昨年のものと比較して5倍の性能向上、効率が3倍向上したと発表しています。
撮影した写真から不要なものを消すといった画像編集にはAIが活躍しており、編集の際にはどうしても時間がかかりますが、このSME2の採用によってその時間の大幅な短縮が期待できます。より便利で身近な機能になるでしょう。
このC1 CPUは主要なベンチマークにおいて平均30%も性能が向上、ゲームやビデオストリーミングは平均15%の高速化、ビデオ再生やソーシャルメディア、ウェブブラウジングなどの日常的な利用では平均12%の消費電力削減に成功したとしています。
最上位のC1-UltraはCortex-X925の後継で、Geekbench 6.3におけるシングルスレッドのピーク性能が25%も向上しました。主な要因としてIPC (サイクルあたりの命令実行数)の向上を挙げており、Armは2桁に達したとしています。
そして、C1-Ultraの下に位置するC1-Premiumはまったく新しいサブフラッグシップCPUで、新たに設定されました。このCPUの特徴はC1-Ultraよりも35%小型化され、SPECint2017において同等の性能を維持するとしています。面積効率のいいCPUと紹介しています。
C1-ProはCortex-A725の後継で、同じクロック周波数において持続的な性能が16%向上、日常的な利用では最大12%の電力効率を達成しました。ミドルハイ向けのSoCに採用されるのではないかと考えています。
C1-NanoはCortex-A520の後継で、電力効率が26%も向上、面積が2%縮小しています。Armはウェアラブル向けSoCにも適しているとしており、C1-Nanoは過去のものと大きく異なってSME2に対応していることから採用を前向きに考える企業がいるのではないかと思います。
Mali G1 GPUの最上位のMali G1-UltraはImmortalis-G925の後継で、「Immortalis」が終了し最上位でも「Mali」が付与されます。そんなMali G1-Ultraは昨年のものと比較してレイトレーシング性能が最大2倍の向上、主要なベンチマーク全体で20%の性能向上、AIとML (機械学習)ネットワークの推論速度が20%も向上しました。
Armはさらに下のGPUとしてMali G1-PremiumとMali G1-Proを発表しています。注意点としてGPUに「Nano」はありません、「Pro」が一番下です。
Mali G1-PremiumとMali G1-Proは選択制ですが、Mali G1 GPUはすべてレイトレーシングに対応しているのが特徴です。採用する企業が選択すればミドルレンジ向けSoCであってもレイトレーシングに対応するといったことも可能です。現実的には厳しいと考えていますが、選択肢があるのはいいのではないでしょうか。
積載数はMali G1-Ultraが10から24、Mali G1-Premiumが6から9、Mali G1-Proが1から5に設定されています。「G1」の後ろの言葉で製品の位置がわかり、「Premium」であればミドルハイからミドルレンジ、「Pro」であればミドルローからエントリーと見ただけでおおよその性能が把握できます。
| 名称の変遷 | |||
| 名称 | Lumex CSS Platform | CSS for Client | TCS23 |
| CPU フラッグシップ | C1-Ultra | Cortex-X925 | Cortex-X4 |
| CPU サブフラッグシップ | C1-Premium | - | - |
| CPU 高性能 | C1-Pro | Cortex-A725 | Cortex-A720 |
| CPU 高効率 | C1-Nano | Cortex-A520 | Cortex-A520 |
| GPU 最上位 | Mali G1-Ultra | Immortalis-G925 | Immortalis-G720 |
| GPU 中位 | Mali G1-Premium | Mali-G725 | Mali-G720 |
| GPU 最下位 | Mali G1-Pro | Mali-G625 | Mali-G620 |
過去3年の名称の変遷をまとめました。今年の製品は「C1」と「G1」で共通化されてわかりやすくなりましたが、最上位CPUを見ると、Cortex-X4の後継がCortex-X925、さらに次の後継がC1-Ultraになっていて瞬時に理解できません。こういったことを防ぐために「C1」以降は最低でも「C9」までは続けてもらいたいです。
GPUは「Immortalis」が終了し「Mali」のみになりました。ただ、新しい「Mali」はこれまでのものと異なって「-」が直後にありませんので、流れで「Mali-G1-Premium」と記載しないように気をつけてください。ほんの少しですが間違った表記をしている人を見かけました。
新しい命名規則に慣れるのは少し時間がかかるかもしれませんが、今回の規則に関してはわかりやすさが先行しています。そのため、ぜひとも早くに覚えていただいて、これから発表される新しいSoCに備えましょう。








