台湾のMediaTekは2023年5月10日に新製品発表会を開催し、超高性能なDimensity 9200+を発表しました。MediaTekの製品における「+」は通常版と比較して性能が向上したことを意味しており、基本的には製造プロセスや構成の変更はありません。
名称 | Dimensity 9200+ | Dimensity 9200 |
CPU | 1x Cortex-X3
3x Cortex-A715 4x Cortex-A510 Refreshed 8MB sL3 Cache |
1x Cortex-X3
3x Cortex-A715 4x Cortex-A510 Refreshed 8MB sL3 Cache |
動作周波数 | 3.35GHz+3.00GHz+2.00GHz | 3.05GHz+2.85GHz+1.80GHz |
GPU | Immortalis-G715 MC11
(HyperEngine 6.0) |
Immortalis-G715 MC11
(HyperEngine 6.0) |
動作周波数 | ? | 981MHz |
NPU/DSP | APU 680(5th Gen)
(Performance + Flexible) |
APU 680(5th Gen)
(Performance + Flexible) |
カメラ | Triple 18-bit Imagiq 890 HDR-ISP
3億2000万画素 or 1億800万画素(ZSL) |
Triple 18-bit Imagiq 890 HDR-ISP
3億2000万画素 or 1億800万画素(ZSL) |
リフレッシュレート | MiraVision 890
144Hz(WQHD+) 240Hz(FHD+) |
MiraVision 890
144Hz(WQHD+) 240Hz(FHD+) |
エンコード/デコード | Encode: 8K@24FPS H.265, H.264
Decode: 8K@30FPS H.265, H.264, VP-9, AV1 |
Encode: 8K@24FPS H.265, H.264
Decode: 8K@30FPS H.265, H.264, VP-9, AV1 |
RAM | LPDDR5X (8533Mbps)
6MB System Level Cache |
LPDDR5X (8533Mbps)
6MB System Level Cache |
ストレージ | UFS 4.0 + MCQ | UFS 4.0 + MCQ |
Wi-Fi | Wi-Fi 7 ready (11be) | Wi-Fi 7 ready (11be) |
Bluetooth | Bluetooth 5.3
Bluetooth LE Audio |
Bluetooth 5.3
Bluetooth LE Audio |
位置情報 | GPS, BeiDou, Glonass, Galileo, QZSS, NavIC | GPS, BeiDou, Glonass, Galileo, QZSS, NavIC |
通信 | 統合: 5G Modem
Sub-6GHz/mmWave |
統合: 5G Modem
Sub-6GHz/mmWave |
充電規格 | - | - |
製造プロセス | TSMC 4nm N4P | TSMC 4nm N4P |
型番 | MT6985T | MT6985 |
Dimensity 9200+の主なスペックは、製造プロセスはTSMC 4nm N4P、CPUは最大3.35GHzのCortex-X3を1基、最大3.00GHzのCortex-A715を3基、最大2.00GHzのCortex-A510 Refreshedを4基の1+3+4構成、GPUはImmortalis-G715 MC11、RAM規格はLPDDR5X、内蔵ストレージ規格はUFS 4.0、モバイルデータ通信は5Gに対応しSub-6GHz帯とmmWaveをサポート、この他の通信としてWi-Fi 7 ready、Bluetooth 5.3をサポートします。
Dimensity 9200+はDimensity 9200の「+」版で、主なアップグレードとして、性能、電力効率、ゲーム体験を挙げました。一般的に性能を向上させると電力効率が犠牲になることが多いですが、MediaTekの「+」版は電力効率を犠牲にすることなく性能を向上させることに成功しているようです。
CPUはCortex-X3、Cortex-A715、Cortex-A510 Refreshedを継続して採用していますが、クロック数が3.05GHzから3.35GHz、2.85GHzから3.00GHz、1.80GHzから2.00GHzに上昇しているため、確実に成功が向上することがわかります。
そういった結果として、MediaTekはCortex-X3とCortex-A715の性能コアは10%の性能向上、Cortex-A510 Refreshedの効率コアは11%の性能向上に成功したと発表しました。性能側が動作するよりも効率側が動作すると電池の持ちが良くなる傾向があるため、11%の性能向上は素直に喜ぶべきでしょう。
ちなみに、CPUに採用しているCortex-X3とCortex-A715はAArch64のみサポート、Cortex-A510 RefreshedはAArch32をサポートしているため、中国で未だにまん延している32bit版のアプリを動作させた場合、効率側のCortex-A510 Refreshedのみが動作するので、期待する体験が得られない可能性があります。
今回の性能向上はGeekbench 6で実際に計測して数値化しており、シングルコア性能は10%、マルチコア性能は5%の性能向上に成功したと発表しました。これはCortex-X3が3.35GHzまで引き上げられたことが関係しており、瞬間的な処理を必要とする場合に優位性があります。
GPUはArm製GPU IPのImmortalis-G715 MC11を継続して採用していますが、クロック数を17%も引き上げたと発表しました。通常版のDimensity 9200が981MHzに設定されているので単純計算すると1147.7MHzになるので、確実に1GHzを超える数値が設定されています。数値が高くなればなるほど性能が上がるのは当然ですが、それに伴って電力効率が悪くなり発熱が起こりやすくなる傾向にありますので、Dimensity 9200+の懸念点のひとつとなります。
GPUのクロック数を17%も引き上げたことでGFXBenchのそれぞれの計測で、10%、7%、10%の性能向上に成功しました。17%も引き上げて10%の性能向上を鑑みると、やや効率の悪い性能向上と考えられなくもないです。また、Immortalis-G715は電力効率よりも高性能の発揮に力を入れているGPU IPなので、電池の持ちは悪くなっている可能性があります。
実際、GPUの電力効率の向上に関する発表では、2023年における競合製品と比較しただけで、通常版のDimensity 9200と比較を行わなかったため、悪くなっていると言い切ることは出来ませんが、良くなっているわけではないのは確かでしょう。
Dimensity 9200+の総合的な性能としてAnTuTu v9の計測結果を用いて、1,368,000点以上になると明らかにしました。競合するQualcommのSnapdragon 8 Gen 2は133万点が最高の総合性能となるため、今回の最新製品はAndroid陣営における最高性能となり、MediaTekが実質的に頂点に立ちます。
もちろん、この性能はLPDDR5X規格の大容量RAM、UFS 4.0規格の大容量内蔵ストレージ、優れた散熱機構を採用して発熱を抑えながら計測することで発揮されるものなので、常に136万点を発揮できるわけではないことには注意しましょう。
総合的なスペックは以上の画像でまとめられ、性能に影響する部分をまとめるとCPUは性能コアが10%の性能向上、効率コアが11%の性能向上、GPUは17%のクロック数の上昇となり、基本的にはクロック数を上昇させることで性能を向上させることに成功しました。
初搭載機はiQOO Neo8 Proと明らかにされており、2023年5月23日に発表される予定です。標準版のiQOO Neo8はQualcommのSnapdragon 8+ Gen 1を搭載する予定で、高性能なSoCを採用したシリーズになり、これらの製品が発表されると大きな注目を集めるでしょう。