Huawei完全子会社のHiSiliconが開発しているHuawei(+Honor)向けプロセッサー、Huawei Kirin 990 5G、Kirin 990(4G)、Kirin 980、Kirin 970をAnTuTu BenchmarkとGeekbenchを用いて比較を行います。Kirinプロセッサーは今現在外販されておらず、HuaweiとHonorが独占的に採用しています。
KirinプロセッサーはARM Cortex CPUとARM Mali GPUを採用しています。Kirin 990/990 5Gとそれ以前のKirinプロセッサーの違いはセミカスタムを施している点で、Kirin 990/990 5GのARM Cortex-A76は通常のARM Cortex-A76より性能が高くなるように調整されています(自社製品の運用に沿ったパフォーマンスを発揮できるように調整)。
Kirin 990 5GとKirin 990は発表時期から考えるとARM Cortex-A77を搭載することも出来ましたが、Huawei Consumer Business Group CEOの余承東(Richard Yu/リチャード・ユウ)氏は「A77がより高いピークパフォーマンスを発揮したとしても、7nm製造プロセス環境下においてはA77とA76の電力効率は実質的に同じであった」と話しており、安定度を高めるためにARM Cortex-A76を採用したようです。
GPUはKirin 980、Kirin 990、Kirin 990 5Gは同じARM Mali-G76を採用していますが、Kirin 980はMP10(10コア)で720MHz、Kirin 990/990 5GはMP16(16コア)で600MHzとなっています。
Kirin 990 5Gの大きな特徴は5Gモデムが統合されている点で、“フラッグシップモデル向け”としては初めて5Gモデムが統合された製品となっています。Kirin 980は外部5GモデムのBalong 5000と組み合わせることで5G通信が可能になります。
Huawei(+Honor)にはAndroid OSをベースとしたEMUIが搭載されており、パフォーマンスモードと省電力モードが存在しています。今回のベンチマークスコアはパフォーマンスモードです。
Kirin 990 5Gは約48.5万点、Kirin 990は約46万点、Kirin 980は約41万点、Kirin 970は約28万点で、成長幅はKirin 970からKirin 980が約45%、Kirin 980からKirin 990が12%、Kirin 980からKirin 990 5Gが約18%で、Kirin 970からKirin 980が1番成長しています。Kirin 970からKirin 980はCPUとGPUがバージョンアップされていることに加えて、製造プロセスも微細化されていますが、Kirin 980からKirin 990とKirin 990 5GはCPUとGPUに変化は少なく、製造プロセスもわずかな微細化か同じなので成長は望めていません。
KirinプロセッサーはCPU性能よりもGPU性能の低さが欠点として挙げられていましたが、このデータを見る限りどこに注力すればいいのか理解し、それを改善しているように感じます。更にHuaweiはゲームをする際に最適化が行われるGPU TurboをEMUIに搭載しており、長年の欠点だったゲームの快適性は大幅に改善されているでしょう。
CPU性能を計測するのに適しているGeekbenchの結果です。Kirin 990 5GとKirin 990はCPUの周波数が異なっており、少しだけ高くなっているKirin 990 5Gの方がスペック通りにスコアが高くなっています。
Kirin 970からKirin 990 5Gへの成長幅は、シングルコア性能が約119%、マルチコア性能が約115%です。操作感が2倍に向上しているかと聞かれたらそうではないのであくまでも指標となりますが、確実に性能向上が行われているので、もしKirin 970搭載機からKirin 990 5G搭載機へ乗り換えた場合、様々な点で操作性が向上していることに驚くでしょう。
アメリカ合衆国と中国の貿易戦争によってやや不利な状況へと進みざるを得ないHuaweiですが、限られた環境でKirinプロセッサーを進化させ続けていますので、HiSiliconの開発能力の高さには驚きを隠せません。Kirinプロセッサーの強みは自社Huawei(+Honor)のみが採用している点で、Huawei Mate 30 Pro 5GやHuawei P30 Proのカメラ性能が高い(DxOMark参照)のはKirinプロセッサーではないと発揮できないと考えており、単純なCPUやGPU性能だけではなく“スマートフォンを利用する”際に必要な様々な性能の高さがKirinプロセッサーの真骨頂です。
Huawei(+Honor)スマートフォンは替えがきかない独自性があるので、厳しい状況ではありますがまだまだ成長を続けるのではないかと考えています。