「真5G時代」、5G通信対応SoCの名称が複雑に

「真5G時代」、5G通信対応SoCの名称が複雑に

Processor/Platform

「真5G時代」を迎えた2020年、様々な5G通信対応SoCが数多の企業から発表されています。ただこの5G通信に対応したSoCについて数多のメディアで間違いが見受けられ、しかも超大手と呼ばれるメディアも間違っているので多くの人が間違って覚え、その間違った知識で購入して失敗する自体が発生する懸念があります。

今回、その少し複雑になったSoCの名称を正しく覚えてもらうために簡単ではありますが解説をします。

 

Qualcommはハイエンド市場向け5G通信対応SoCとしてSnapdragon 855とSnapdragon 855 Plus、Snapdragon 865 5Gの3種類を発表しています。Snapdragon 855とSnapdragon 855 Plusは4G通信に対応したSnapdragon X24 LTE Modemを“統合”しており、SoC単体では5G通信には対応していません。しかしQualcommが外部モデムとして発表しているSnapdragon X50 5G Modemを採用することで5G通信に対応することが出来ます。代表的なSnapdragon 855/Snapdragon 855 Plusを搭載した5G通信対応機種として、特定市場向けのSamsung Galaxy S10 5G、Galaxy Note10 5G/Note 10+ 5Gがあります。

Snapdragon 865 5Gはモデムを“統合”していないため、単体では5G通信だけでなく4G通信にも対応しません。そのため、外部モデムとして発表しているSnapdragon X55 5G Modemを搭載することが事実上義務付けられており、Snapdragon 865 5Gを搭載したスマートフォンは全てSnapdragon X55 5G Modemを搭載しています。QualcommはSnapdragon X55 5G Modemの後継機としてSnapdragon X60 5G Modemを発表していますが2020年6月現在は搭載機がないため、全てSnapdragon X55 5G Modemを搭載していると認識しても良いです。

 

Qualcommはミドルハイ市場向けに5G通信に対応したSoCとして、Snapdragon 765 5G、Snapdragon 765G 5G、Snapdragon 768G 5Gの3種類を発表しています。こちらはSnapdragon X52 5G Modemを“統合”しており、SoC単体で5G通信に対応することが出来ます。Snapdragon 765 5GとSnapdragon 765G 5Gは数字の後ろにGが付くか否かでCPUとGPUの周波数が異なっており、Snapdragon 765 5GのCPUは2.3GHz+2.2GHz+1.8GHzとなっていますが、Snapdragon 765G 5Gは2.4GHz+2.2GHz+1.8GHzとなっています。GPUも同様でSnapdragon 765 5Gは540MHzですが、Snapdragon 765G 5Gは625MHzに設定されており、Gの有無で性能が異なります。Snapdragon 768G 5GはSnapdragon 765G 5Gを更に周波数を上昇させた製品となっており、CPUは2.8GHz+2.4GHz+1.8GHz、GPUは750MHzに設定されています。

Snapdragon 765 5Gを搭載した代表的なスマートフォンとしてOPPO Reno3 元気版、LG VELVETがあり、Snapdragon 765G 5GはOPPO Reno3 Pro 5G、realme X50 5G、Redmi K30 5Gがあり、Snapdragon 768G 5GはRedmi K30 5G Speedがあります。数多のメディアでLG VELVETがSnapdragon 765G 5Gを搭載していると記載されていますが、それは誤りでSnapdragon 765 5Gを搭載しています。

 

2020年6月現在、Qualcommが発表している5G通信対応SoCは以下の6種類となります。

 

Samsungは5G通信対応SoCとしてハイエンド市場にはExynos 9820、Exynos 9825、Exynos 990を発表しています。Exynos 9820とExynos 9825は4G通信対応モデム(Shannon 5000)を“統合”しているので単体で4G通信に対応していますが、5G通信に対応するには外部モデムとしてExynos Modem 5100(Shannon 5100)を搭載する必要があり、その様な構成を採用した代表的なスマートフォンとしてExynos 9820は一部市場向けのGalaxy S10 5G、Exynos 9825は一部市場向けのGalaxy Note10 5G/Note10+ 5Gがあります。

Exynos 990は通信モデムを統合していないためExynos Modem 5123(Shannon 5132)を搭載することで5G通信や4G通信に対応すること出来ます。代表的なスマートフォンとして一部市場向けのGalaxy S20、Galaxy S20+、Galaxy S20 Ultraがあります。

 

ミドルハイ市場向けにはExynos 980とExynos 880の2種類を発表しており、いずれのSoCも5G通信対応モデムを“統合”しているため、SoC単体で5G通信に対応しています。Exynos 980とExynos 880の関係は、Exynos 980の低周波数モデルがExynos 880となっており、CPUはExynos 980が2.2GHz+1.8GHzとなっていますがExynos 880は2.0GHz+1.8GHzとなっています。Exynos 980を搭載した代表的なスマートフォンとしてvivo X30、vivo X30 Pro、Galaxy A71 5G、Galaxy A51 5Gがあり、Exynos 880はvivo Y70sとなっています。

 

2020年6月現在、Samsungが発表している5G通信対応SoCは以下の5種類となります。

 

Huawei完全子会社のHiSiliconは5G通信対応SoCとしてハイエンド市場向けにHuawei Kirin 980、Kirin 990、Kirin 990 5Gを発表しています。Kirin 980とKirin 990は統合されているモデムは5G通信には非対応で4G通信に対応しているため、外部モデムとしてBalong 5000を搭載することで5G通信に対応することが出来ます。Balong 5000を搭載したKirin 980を採用した代表的なスマートフォンとしてHuawei Mate 20 X(5G)、Huawei Mate Xがあり、Kirin 990+Balong 5000はHuawei nova 6 5G、Honor V30、Honor Play4 Proがあります。

Kirin 990 5GはKirin 990とは異なって5G通信対応モデムが統合された製品となっているため、SoC単体で5G通信に対応しています。Kirin 990とKirin 990 5Gの異なる点は5G通信対応可否だけではなく製造プロセスやCPUの周波数が異なっており、Kirin 990は7nm FinFET製造プロセスを採用しCPUは2.86GHz+2.09GHz+1.86GHzに設定され、Kirin 990 5Gは7nm+ EUV FinFET製造プロセスを採用しCPUは2.86GHz+2.36GHz+1.95GHzに設定されています。Kirin 990はBalong 5000を採用することで5G通信に対応し、Kirin 990 5Gは単体で5G通信に対応するため、混同しているメディアがいくつか存在しています。SoCに注力しているメディアでは便宜上Kirin 990 4G、Kirin 990 5Gと記載することもあります。

 

ミドルハイ市場向けにはKirin 820、Kirin 985を発表しており、いずれのSoCも5G通信対応モデムを“統合”しているため、SoC単体で5G通信に対応しています。Kirin 820を搭載した代表的なスマートフォンとしてHonor 30S、Huawei nova 7 SE 5G、Kirin 985はHonor 30、Honor Pad V6、Huawei nova 7 Pro 5Gがあります。

 

2020年6月現在、HiSiliconが発表している5G通信対応SoCは以下の5種類となります。

 

MediaTekはハイエンド市場向けにMediaTek Dimensity 1000、Dimensity 1000+の2種類を発表しています。Dimensity 1000とDimensity 1000+は5G通信対応モデム(Helio M70)を“統合”しているため、SoC単体で5G通信に対応することが出来ます。Dimensity 1000+はDimensity 1000の機能増強版となっており、CPUやGPUの性能は変化していません。

2020年6月現在Dimensity 1000を搭載した代表的なスマートフォンとしてAstro Slide 5G Transformer(未販売)、Dimensity 1000+はvivo Z1(販売済み)があります。

 

ミドルハイ市場向けにはDimensity 1000L、Dimensity 800、Dimensity 820の3種類を発表しており、いずれのSoCも5G通信対応モデムを“統合”しているため、SoC単体で5G通信に対応することが出来ます。Dimensity 1000LはDimensity 1000からCPUが低周波数になっており、具体的には2.6GHz+2.0GHzから2.2GHz+2.0GHzへ変更されています。更にGPUはコア数が減少し低周波数になっており、Mali-G77 MC9 @836MHzからMali-G77 MC7 @695へ変更されています。Dimensity 820はDimensity 800からCPUの周波数が上昇し、2.0GHz+2.0GHzから2.6GHz+2.0GHzへ変更されています。GPUはコア数が増えて周波数も増加しており、Mali-G57 MC4 @748MHzからMali-G57 MC4 @900MHzへ変更されています。

Dimensity 800を搭載した代表的なスマートフォンとしてOPPO A92s、Huawei Enjoy Z、ZTE Axon 11 SE 5Gがあり、Dimensity 820はRedmi 10X 5G、Redmi 10X Pro 5Gがあります。

 

2020年6月現在、MediaTekが発表している5G通信対応SoCは以下の5種類となります。

 

Unisocはミドル市場向けに5G通信対応SoCを発表しており、Unisoc T7510とT7520があります。T7510はプロセッサーとして発表しているUnisoc T710、5G通信対応モデムとして発表しているUnisoc V510を組み合わせた製品となっています。T7510を搭載した代表的なスマートフォンとしてHisense F50 5Gがあります。

T7520は2020年2月に発表された6nm EUV製造プロセスを初採用した製品ですが、商用機は2020年Q3(7月-9月)以降であることが明らかになっていますので、今の所搭載したスマートフォンはありません。ちなみにT7520は5G通信対応モデムを“統合”しています。

 

2020年6月現在、Unisocが発表している5G通信対応SoCは以下の2種類となります。

 

 

Qualcomm : Samsung : HiSilicon : MediaTek : Unisoc