Snapdragon 855、Exynos 9820、Kirin 980、A12 Bionicを比較

Snapdragon 855、Exynos 9820、Kirin 980、A12 Bionicを比較

2019年3月13日
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Qualcomm Snapdragon 855 Mobile PlatformSamsung Exynos 9 Series 9820搭載機が販売開始し、既に販売が行われているHiSilicon Kirin 980とApple A12 Bionicとの比較が可能になりました。

今回の比較はAnTuTuベンチマークとGeekbenchを用いており、よりSoCの細かな性能にまで言及はしていません。他にもGFXGenchや3DMarkがありますが今回の比較に用いる2つのベンチマークに比べて一般的ではないので使用していません。AnTuTuベンチマークは2019年2月時点のデータ、Geekbenchは公式サイトに掲載されているスコアを利用します。

 

スペック表はこのようになります。これらのSoCは以前主流だった4+4のオクタコア構成ではなく、より高負荷な処理に向いているプライムコアと高性能コアと省電力コアの3つの構成を採用したSoCが主流になっています。この様な構成はミドルレンジモデル向けにも採用されており、Snapdragon 710MediaTek Helio P90が2+6のオクタコア構成を採用しています。

GPUはExynos 9820とKirin 980が同じマイクロプロセッサを採用していますがコア数が12コアと10コアで異なり、クロック数は前者が702MHzで後者が720MHzとなっています。Snapdragon 855はこの中ではクロック数が非常に低い585MHzに設定されており、一般的にクロック数が低いと発熱の心配が低くなります。今の所Xiaomi Mi 9やLenovo Z5 Pro GTが既に販売されていますが発熱に関する問題報告は目立っておらず、発熱はかなり抑えられていると考えています。

製造プロセスはSnapdragon 855、Kirin 980、A12 Bionicは台湾TSMC製7nm FinFETが採用されていますが、Exynos 9820はSamsung製8nm FinFET LPPが採用されています。製造プロセスの点においてはSamsungは一歩遅れている現状です。

 

CPU性能とGPU性能とUX性能とMEM性能を合算した総合性能はSnapdragon 855が371,849点、Exynos 9820が332,850点、Kirin 980が306,984点、A12 Bionicが356,466点という結果になり、Snapdragon 855が様々な性能を考えると1番優れている事になります。

ちなみに一世代前のSnapdragon 845は29万点、Exynos 9810は25万点、Kirin 970が21万点、A11 Bionicが25万点なので伸び幅はSnapdragon 855が8万点、Exynos 9820は8万点、Kirin 980は9万点、A12 Bionicは10万点となり、どのSoCも大きく成長することに成功しています。

 

CPU性能はA12 Bionicが132,187点で1番優れている結果となりました。Snapdragon 855は13万点を超えることは非常に稀なので、CPU性能ではA12 Bionicが1番優れている事になります。

そして、Exynos 9820は自社開発のExynos M4を搭載しているのでCPU性能に期待がかかりますがKirin 980よりも低いことがわかりました。これはA76コアを採用していないことに加えて、おそらくSamsungの調整によって全てのコアがフル稼働しないようになっているためだと考えており、カスタムカーネルを用いてその制限を撤廃するとKirin 980レベルになるとは思いますがそれでもSnapdragon 855には到底追いつかないと思います。

 

GPU性能はSnapdragon 855が156,154点で1番優れている結果となりました。主にゲームをする時に必要な性能で、これは高ければ高いほどPUBGやフォートナイト等の高負荷なゲームの快適度が上がります。従来機のExynos 9810は思うようなGPU性能を発揮することが出来ずSnapdragon 845搭載機にゲーマーを取られてしまいましたが、Exynos 9820はSnapdragon 855に肉薄しており、大きな性能差はありません。Android採用期におけるゲーム機はSnapdragon 845が搭載されていることが前提となっていましたが、2019年はこの状況が変わりそうです。

Kirin 980はこの中ではスコアが低く、実はSnapdragon 845(約12万点)にも負けている現状です。ただHuaweiやHonorに搭載されているEMUIにはGPUの動きを最適化するGPU Turboがありますのでそこまで悲観的になる必要はないでしょう。とは言え「より快適」なゲーム体験を感じたいのではあればSnapdragon 855やExynos 9820、A12 Bionic搭載機を買うほうがいいでしょう。

 

CPU性能を総合的に計測するGeekbenchではシングルコア性能、マルチコア性能ともにA12 Bionicが優れている結果となりました。A12 Bionic登場時はどのSoCも全く歯が立っていませんでしたが、シングルコア性能Exynos 9820が肉薄しマルチコア性能はSnapdragon 855が肉薄しています。

ちなみにAppleはタブレット向けSoCとしてA12X Bionicを発表しており、こちらの性能はシングルコア性能が5,062点でマルチコア性能が18,201点となっており、異次元の性能を誇っています。タブレット向けということで排熱器官の搭載が容易になるので少し無茶な開発が出来ます。ハードウェア・ソフトウェア共に自社で開発しているからこそ行えるので、QualcommやSamsungやHiSiliconはこの様な開発はできないでしょう。

 

各社上手な開発が行えています。「ゲームをする」ということに重点を置くのであればKirin 980搭載機を購入するのはおすすめできませんが、通常利用を想定しているのであればどれを買っても満足できるでしょう。

なので自分が好きな企業や好きなUI、カスタマイズ性を求めて好きなものを購入することが出来る良い時代です。更にAndroid OSに限ればAndroid 9 Pieを搭載している場合Project Trebleに必ず対応しているので、GSI ROMを使ってカスタムROMを導入することが出来、ROM焼き愛好家の人にとっても嬉しい時代と言えます。

 

 

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